お役目ご苦労様です

　この年になっても人としての成長を実感できる、そんな出来事があった。

　お客様の会社から帰る途中、携帯が鳴った。

　「田です」

　「○○です。お世話になります」

　その瞬間、白バイが横に並んで追い越していく。

　どこかのバカが捕まったに違いない。

　すると、私の車の右斜め前で手を振るではないか。

　ファンの人？　

　この時になってやっと捕まったのが自分だと判った。

　「すいません。白バイに捕まったのであとでかけなおします」

　以前は、国家権力に対して無用な抵抗を試みていた。

　青切符(交通反則告知書)をまるめて投げつけたこともあった。

　「警察手帳を見せてみろや」と凄んだこともあった。

　免許証を渡さずに、警官の顔の前に押し付けたこともあった。

　左手の人差し指で捺印するとき、わざと１０回もペタペタ押してやったことも・・・

　前回などは、捕まってポリ公に悪態をついていた最中に、偶然、妻と娘が車で通りかかった。

　２人とも私と視線を合わすなり「私らは無関係です」と言いたげに通り過ぎるのだった。

　しかし、今回はここからが違う。

　「職業は？」

　「自営です」

　「具体的には何をなさっていますか？」

　「税理士です」

　「税理士さんって、具体的にはどんなことをするんですか。私、そういう方面はさっぱりわかりません」

　「いつでも困ったときは来なさい。お役目ご苦労様です」

　と言って、名刺を差し出すのだった。

　それはともかく、私の免許はゴールドで今年で更新なのだが、この５年間で６回捕まったことになる。

　しかし私は、それと引き換えに多くのことを学び、人格者としての道を確実に歩んでいるという気がする。




　６０００円あったら飲みに行けたのに。クソッタレ！！