WALKER’S 

歩く男の日日

27日目 ビジネス旅館三鈴(高松市)~民宿八十窪(さぬき市)

2015-08-13 | 15年四国の旅

 三鈴さんには06年から4年連続、そして昨年、今年で6回目の投宿でした。6回以上泊まったのは土佐の喜久屋旅館、須崎の柳屋旅館、松山の長珍屋、そして今日泊まる八十窪、の4軒だけです。ここまでくると四国に来れば泊まるのが当たり前、田舎の実家に帰ってくるという感じに近いかもしれません。37回目、おにぎりのお接待をいただいて6時30分に出発です。玄関まで見送ってもらって「来年もお待ちしています」と言われます。何気ない言葉だけど、ほかの遍路宿でこういう言葉をかけられることはありません。それは当然、来年も歩くかどうか判らないし、ほかの宿もいっぱいあれば、愛想としてもそういう言葉はなかなか使えない。それを普通にかけてもらえるというのは本当にうれしいしありがたいことだと思います。たくさん巡っても何の自慢にもならないと常に自分に言い聞かせていますが、こういうところだけはちょっと優越感を持ってもいいかなと思ったりします。

 歩き始めて200mも行かないうちに足の不調を感じます。踵のひび割れが痛い。ここまでもちょっとした違和感を感じるときはあったのですが、動きに影響が出るほどではなかった。でもこれははっきり駄目だと自覚します。ベストはこの時点で諦めます。
 気持ちよく見送ってもらったのに気持ちよく歩けないというのは、いかにも残念。でも、いつもの歩きができなくても前に進むしかありません。選択の余地がないのがおへんろのいさぎよいところであり、ありがたいところ。
 足が気になるせいか潟元の交差点を左折するところを少し行きすぎてしまいました。ここで曲がれなかったことは一度もありません、それほど普通ではなかったか、余計なことを考えていたのか。
 琴電潟元駅で夫婦連れのお遍路さんが降りてきました。一宮寺から屋島まで13km、この区間大都市高松の大通りを歩くことが多いし、電車もすぐ横を走っているので、使う人もいるようです。前にも会ったことがあります。
 屋島の登りはじめの急坂もやっぱりひどく堪えます。ここを楽に登ったことは一度もありません。太龍寺の山門の手前よりきついかもしれません。


 7時43分、84番札所屋島寺に到着、宿から73分12秒、ベストより2分半ほど遅れましたが後半は痛みがあまり気にならなくなって予想よりはよく歩けました。
 水屋を使っていると、納経所の横のベンチに地元の早朝登山の男性5人ほどが歓談中でした。もしやと思いお参りもさておいて近づいてみると、やはりそうでした。6年前に写真を撮らせて貰っためがねの男性がいました。09年8月2日に投稿した写真の手前から2人目の人です。6年前に写真を撮らせて貰ってブログに投稿したんですよ、と言うと、「指名手配されてるから写真は困るんやけどな」と6年前と同じことを言われたので、そのことを言うと一同爆笑。一人一人に納札を手渡します。しばらくしてみなさん下山を開始されたので、それからやっとお参りです。
 8時10分、屋島寺を出発します。下山はいつものように近道の急坂です。ちょっと危ないくらいの山道ですが、昨年ひざと踵の具合が良くなくて全然思ったような歩きができなかったので、今回は普通に歩けるか確認しておきたい。
 山道の最初の所でつまずきそうになってひやりとしたのですが何とか事なきを得ました。ひざの具合は昨年とは違ってほとんど問題はないし、歩き始めで痛みのあった踵も気にならなくなっています。
 舗装道を横断した後は滑りやすい石畳の急坂が待っていますが、こちらも昨年のような苦労はなく普通にいいときの感じでこなすことができました。最後の舗装道の直線も明らかに昨年のような負担は感じませんでした。
 運河を渡って八栗の登りに入っても、普通に力を出せている感じはあります。昨年より遙かに楽に歩けてはいますが、ベストと比べてどうかというのは判りません。ケーブルを横目に見ながら、坂を登っていきます。


 9時11分、85番札所八栗寺に到着、屋島から61分08秒、ベストタイでした。出だしが悪くてどうなるのかと心配だったけれど、何とか復活してきたようです。
 ケーブルや車で来ている人は多いのですが、歩きのお遍路さんは3人くらいしか確認できません。屋島の近くの宿から来た人たちで、今日は長尾までと思われます。20kmほど、長尾から先には宿がないからやむをえずという人が多いでしょう。余裕があるせいか二人の人は本堂大師堂以外の堂宇も熱心にお参りしています。先に下りたもう一人の人も、1.7km地点の番外霊場六万寺へ下りていく分岐点で立ち止まっています、行こうか行くまいか迷っていると言います。携帯をとりだして六万寺の情報を確認、結局行くことにしたのでお別れです、これくらいの余裕がある方がお遍路としては上等、豊かだとは思いますが、忙し遍路のぼくにはなかなかまねのできることではありません。
 八栗寺は9時35分に出発、屋島の下りが調子が良かったので、こちらは緩やかなところが多いのでさらに力が入ります。急なところもひざの負担はあまり感じることなくスピードも落ちません。


 10時36分、86番札所志度寺に到着、八栗寺から58分17秒、またまたベストタイです。時速は6.68km、出だしの不調が嘘のようです。山門の横でタイムメモに書き込んでいたら、女性が出てきたので挨拶します。女性の一人歩きの人は久々です。ここまでトータルで5人ほどしか見かけていません。
 お参りを終えて納経所に行く前に本堂の前のベンチで昼食、お接待のおにぎりをいただきます。天気はご覧のように快晴、88番へ向かうときにこれだけ天気が良かったことはあまりないと思います。
 納経を終えて10時57分に出発、次の札所まで7kmあるから先に出た女性には追いつけるでしょう。
 志度寺から1kmの所にあるコンビニ(今はセブンイレブン、前はサンクス)で最後の買い物です。ローソンではないのでいつものコンビは買えず、ゴマスティックにします、明日の昼食です。
 4km地点の番外霊場玉泉寺を過ぎてしばらく行くと前を行く人が見えました。県道を横断して川沿いの点線の道に入るところで追いつきました。山門で入れ違いになった女性です。予想より追いつくのが早かったと思ったのですが、4.3kmくらいで歩いているから、ごく普通の速さでした。そのすぐ先では長身の白人女性にも追いついて、「こんにちは」というと、ちゃんと日本語で「こんにちは」といい笑顔で返してくれました。後で聞いたら彼女は日本語が全く駄目だそうです。そのあとも男性一人に追いついて、

 12時03分、87番札所長尾寺に到着、志度寺から64分30秒、ベストより2分遅れでした。この区間のベストは時速6.67kmで出にくい区間なので仕方のないところ。
遅れて到着した日本人の女性に今日の宿を聞くと、ぼくと同じ八十窪です。でもこの時間からだと入るのはかなり遅くなってしまいそうです。
 お参り納経が終わって水屋の横のベンチで休憩、少し手前で追い抜いた男性に話を聞きました。納札を交換、千葉県市川市の加藤さん、帰ってから調べたらぼくの親友が今年になって引っ越したところと同じ町内です。彼は区切り打ちで、今日は88番の宿がとれなかったので少し手前まで歩いて野宿をするということでした。白人女性はこの近くの宿に泊まるということでした。
 長尾寺では40分ほど滞在、12時43分に出発です。
 昨年、この区間は踵が痛くていつものようには歩けなかった、途中で佐藤さんに出会ってそこからは佐藤さんに合わせてゆっくり歩くと、踵の痛みが嘘のように消えたのを覚えています。ずっと無理して歩いていたのだと、痛めるようなスピードであったのだと思い知りました。かといって無理にゆっくり歩くわけにもいかないので、本当に難しいところです。今年は、同じようにひび割れができていて屋島までは思うように歩けなかったけれど、屋島からは全く問題なく気持ちよく歩けています。当然、狙いながら歩いています。
 
 前山ダムのそばにある休憩所がタイムチェックポイント、4866mを45分24秒、ベストタイでした。時速は6.43km、最後の坂を登ってのこのスピードはなかなかのものです。
 13時33分、500m先のおへんろ交流サロンに到着、最後の休憩です。サロンにはお遍路さんの姿はありません。この時間だと八栗から来た人でも先に進んでいるのが普通、今回は後から来る人が何人かいますが。冷水器で何杯もお代わりします。38回目、最後のお接待です。
 13時50分、88番に向けて出発です。今回も花折峠経由の道を歩きます。女体山は距離では近道ですが、時間では10分ほど(ぼくの足では)遠回りになるし、昔のへんろみちではないし、山門をくぐれないし、ということでこれから先も歩くことはないでしょう。一度歩いて納得しました。
 昨年は、交流サロンまで全部の区間で思ったような歩きができなかったものの、最後の区間だけ見違えるような歩きができていい気分だったのですが、今回も登りはじめからいいときの感じです。峠の手前ではまだかまだかと焦りの気持が強くなるのですがそれもほとんどなくて、比較的峠まで短く感じるほどでした。下りの調子はここまでと同じでちょっと小走りでも大丈夫なくらい。県道に合流してからは気持のよい下り勾配でますますいい気分、歩道はないけれどこの道は大好きな道の一つです。
 多和の交差点を左折、国道に入ると登りがありますが、全く負担もなく力が十分出せています。順調そのもので竹屋敷を通過、最後の脇道に入ります。2300mで標高差100mを登っていきますが、味わう余裕がいつも以上にありました、天気もいいし、へんろみちを満喫しています。またこの道に戻ってこられたありがたさ。


 15時28分、88番札所大窪寺に到着です。前山ダムから102分17秒、時速は6.01kmでした。1番から5番までお参りしていないので、まだ結願にはなりません。


 15時50分、今回の旅最後の宿、民宿八十窪に到着しました。8回目の投宿です。若女将が出迎えてくれます。「何回か来られてますよね」「お遍路は9回目、こちらの宿は8回目です」と答えると「それだけ来てもらってたら覚えてるはずよね」、8回といっても、14年、12年、09年、と昨年の前は2年、3年と空いているので、それでも覚えてもらえるのは光栄です。何しろ1年に2000人は宿泊する宿ですから、名前は出なくてもすぐに判ってもらえるのはうれしいです。帰ってきたという感じが少しします。
 1番乗りだったので、すぐにお風呂に入れます。同宿は男性3人、女性2人、ぼくのテーブルは女性二人といっしょです。長尾寺でいっしょだった女性は、6時の時点ではお風呂を使っていて、少し遅れて食堂に入ってきます。交流サロンから2時間半かかって納経にはぎりぎりだったようです。女性二人とは話が弾みました。食事が終わってもその後8時近くまで食堂でいろんな話ができました。二人とも明日の宿は安楽寺宿坊で、その翌日はフェリーで和歌山へ行きます。一人は九度山の宿に泊まって町石道を全部歩いて高野山に登る。別格の念珠の話や、四国総奥の院與田寺の話、などを熱心に聞いてくれて、ますますお遍路に興味を持たれたようです。

 27日目の歩行距離  41.0km
      歩行時間  6時間44分  終わりよければ・・・
      平均時速  6.09km  明日もありますが