尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

子ども庁は要らない

2021年05月10日 22時15分52秒 | 政治
 菅内閣で「子ども庁」を作るとか言っている。自民党の中でも「子ども政策の一元化」を求める声がある。子ども関係を担当する部署が各省庁にまたがっていて、「縦割り行政」になっているというのである。そういうこともあるかもしれないが、僕は「子ども庁」なんて要らないと思う。

 そういうことを言い出せば、様々な政策課題ごとに○○庁を幾つも作る必要がある。そして、いくら子ども政策に関わる部署をまとめたとしても、予算を決める財務省の担当部署はそのままである。予算がなければ何も出来ない。小さな庁になってしまえば、財務省に対する立場が弱くなるだけだ。文部科学省厚生労働省から派遣される役人だって、子ども以外のこともやりたいだろう。早く本省に戻って、大きな役所で出世したいに決まってる。

 「こどもの日」に書こうかと思ったんだけど、まあ遅れても書いておきたいと思う。この何十年、日本では「少子化」が進んできた。「子ども人口」も40年連続で減少している。「子ども人口」の正式な定義を知らなかったので調べてみると、「4月1日現在で15歳未満の人口」だという。2021年は1493万人で、昨年より19万人少なくなったという。毎年こどもの日に合わせて、総務省から発表されている。「4月1日で15歳未満」は、中学3年生までである。
(子ども人口の推移)(出生数の推移)
 ところで、この子ども数の減少という事態は、なんで起こったのだろうか。いろいろな人があれこれ言うけど、まだ国民が大方のところで合意する定説はないのではないか。要するに「第二次ベビーブーム」が終わってから、ずっと子どもが減っている。「第三次」が起こってもいいはずの90年代は「バブル崩壊」の「就職氷河期」に当たってしまった。「親になる世代」そのものが減っているわけだが、その上に「婚姻数」も減少し続けている。
(婚姻数の推移)
 結婚しなくても子どもは生まれるけれど、日本の場合「出来ちゃった婚」という言葉が当たり前に使われる。子どもが生まれるなら、「結婚」(異性婚)することが条件になることが実際には多いだろう。「世間体」というものが生きているのである。それがいいわけじゃないけれど、そういう現実の日本において、「不妊治療の助成」が少子化解消の決め手になるとは思えない。(もちろん政策として悪いと言ってるわけではない。)

 子どもが生まれるかどうかを別にして、まずは「結婚して暮らしていける仕事」がなければ「婚姻数」が増えない。現状はコロナ禍で経済苦境が予想され、また出会いの機会も減り、婚姻数も出生数も激減が予想されている。制度いじりのパフォーマンスをしているヒマがあったら、困窮者支援の充実こそが緊急に必要なのではないか。

 ところで実際に「子ども庁」が出来たらどうなるか。内閣府の下に置かれて、専属の「内閣府特命担当大臣」が置かれるのだろうか。その場合、一番最初は相当に知名度のある女性議員が閣僚に任命されるのだろう。子ども政策は女性だけの問題ではないけれど、多分今までの「少子化担当相」と同じく、ほとんどは女性議員が任命されるのではないか。そうすると、女性議員の数自体が少なく、派閥ボスレベルはいないのだから、そのうち知名度のある女性議員が枯渇することになる。財務省に強く出られる大臣はほとんど期待できない。

 それは「地方創生担当相」の経過を見れば予想出来ることだ。2012年9月に自民党総裁に復帰した安倍前首相は、当初総裁選の予備選で1位になった石破茂氏を幹事長として処遇した。しかし、2014年の内閣改造に合わせて、石破氏を「地方創生担当」という名目で入閣させた。言葉としては重要な役職に見えるが、要するに幹事長を辞めさせたのである。石破氏は2016年まで務めたが、その後は「無役」となって政治基盤を弱くすることになった。その後の「地方創生担当相」なんて誰も覚えてないだろう。調べてみると、山本幸三、梶山弘志、片山さつき、北村誠吾、坂本哲志である。子ども庁担当相も大方そういう道をたどることになる。
 
 自民党は上記のような宣伝を行っている。厚生労働省内閣府文部科学省法務省警察庁の関係部署をまとめるという。しかし、文科省の「学校」と言っても、「子ども」つまり「中学まで」を担当すると言えば、「中等教育」を途中で切ることになる。中高一貫校を推進してきたのに「初等中等教育局」を分断するのか。それとも初等中等教育局ぐるみ「子ども庁」に移管するのか。

 そんなことが出来るとは思えないし、コロナ禍の中で関係省庁の大反対運動が起きる。それは単に「省益」とは非難できないだろう。そもそも制度をいじれば、政策がうまく行くといった発想そのものが間違っていると思う。リーダーがきちんと判断すればいいだけだ。制度を変える必要はない。
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