尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

都教委、4校の夜間定時制廃止を決定

2016年02月17日 20時42分41秒 |  〃 (東京・大阪の教育)
 2月12日の東京都教育委員会の定例会で、夜間定時制4校(小山台、雪谷、江北、立川)の募集停止が決定された。正式に言えば、「都立高校改革推進計画・新実施計画」が決定されたということになる。(都教委HPにある「都立高校改革推進計画・新実施計画」の策定についてを参照。)

 この問題に関しては、昨年に計画が発表された時に、「都立高「改革」・全定併置は「解消」するべきなのか」という記事を書いた。(2016.11.29)東京の新聞には、今回の決定が掲載されているが、その他の地域ではあまり出てないかと思うので、前に書いた記事の事後報告。

 この問題に関しては、その後、短期間ではあるが反対運動が起こり、反対の署名約12,000人分が提出されたり、有識者80人ほどによる反対声明が出された。その中には、山田洋次氏や大村智氏が含まれている。また、東京弁護士会の反対声明も出た。検索すれば、さまざまな記事が見つかるが、一応、東京新聞の2月13日の記事を紹介しておきたい。

 都教委に対する意見募集の結果と都教委のコメントも発表されている。だけど、言ってしまえば、同じことの繰り返し。都立中学の育鵬社教科書採択など他の問題とすべて共通で、初めから対話する意思はないと思わざるを得ない。(だから、ここにリンクは貼らない。)都教委が決めた計画は、手続き上「都民の意見を聞く」というプロセスを経るが、変えることは想定されていないだろう。反対運動が起きる、では、呼んで意見を聞き、一緒に考えてみよう…などという、他の組織では存在する仕組みが全くない。国会では参考人を呼んだり、公聴会を開く。それに意味があるかと言えば、まあ「タテマエ」でやっているというのに近いが、それでもそういう仕組みはあるわけだ。

 今年の定時制高校一次試験の倍率も発表されている。当該校を調べてみると、小山台は60人中、16人(0.27倍)、雪谷は30人中1人(0.03倍)、江北は60人中、16人(0.27倍)、立川は90人中49人(0.54倍)となっている。立川は1倍を超える年もあるが、今年は半分ぐらい。雪谷に至っては1人しか出願していないから、閉課程もやむを得ないようにも見えるが、この地域には比較的近くに他校があるから、もうすぐなくなる、後輩も入って来ないという学校だから敬遠されているのか、それは判らない。例年、一次試験で1倍を超えるのは、工芸高校定時制のグラフィック・アーツ科で、30人中35人と今年も1倍を超えている。また、葛飾区にある農産高校定時制も近年希望が多く、30人中33人と1倍を超えている。

 このような結果を見て、だから「夜間定時制は希望が少ない」と決めつけるのは早計である。例年、ずっとこのような倍率傾向が続いている。だから、一次試験では募集人員が埋まらず、かならず大量の二次募集がある。それなら、1回目は他の全日制高校や三部制高校を受けてみようか、受けさせてみたいとなるのは当然である。もしかしたら受かるかもしれない。落ちたら、その後で定時制の二次募集を受ければいいわけである。しかし、今のような戦略が成功するには、ある程度の学力が必要である。「障害」があったり、外国出身で日本語が不自由な生徒は、二次募集では落ちてしまうかもしれない。それを逆に言えば、必ず定員割れする一次募集においては、「日本語による高校教育」が難しいような生徒であっても、学力検査を受ける程度の学力、体力があれば、合格できる可能性が高い。

 都教委は、夜間定時制を減らしても、チャレンジスクールを増設したり、募集増を行うからいいのだと言っている。しかし、今年のチャレンジスクール(三部制総合学科の定時制高校)の倍率は、合計で1.57倍となっている。学力検査を行わず作文で選考するチャレンジスクールでは、作文能力が低い「障害」「外国」生徒の合格は極めて難しい。(似たような性格の三部制高校もいくつもあるが、皆1倍を超えているので、やはり学力検査で落ちるだろう。)そんなことを都教委の担当者が知らないわけはないから、要するに「障害生徒」は高校ではなく特別支援学校の高等部に行けばよく、外国出身生徒は(成績が高い生徒は国際高校などで対応するが)基本的には対応しないというのが、この方針の本質だと思う。人数で言えば非常に少数ではあるが、「誰を排除するのか」という問題設定で見えてくるものがある。
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