尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

梶芽衣子トーク&ライブ

2011年11月23日 00時05分21秒 | 自分の話&日記
 昨夜は日比谷図書文化館で、梶芽衣子のトーク&ライブ。これ、最高でしたね。ここ数年で一番面白いトークショー。もっとも昔の梶芽衣子の映画をみていないと面白くないと思うけど。梶芽衣子、本名太田雅子は神田の生まれで、日比谷公園でアイスクリームを食べながら散歩中にスカウトされたという。当時は日活本社が日比谷にあり、上部は日活ホテルになっていた。今のペニンシュラ・ホテルのところで、裕次郎・北原三枝の結婚式をやったとか、いろんな日活映画のロケに使われたとか、映画の本によく出てくる。ということで、梶芽衣子は日比谷に縁があり、都立日比谷図書館が千代田区立日比谷図書文化館にリニューアルされた記念の公演である。

 まあ、還暦をとうに過ぎたというのに、かくも元気ではつらつとしてビックリ。数日前に階段から落ちて怪我したということだったけど。だから目元を保護するサングラス、黒づくめの服装に真紅のハンカチが胸元にあり、素晴らしい。あの「さそり」シリーズの衣装も自分で考えたそうだが、衣装も演技の一環というライフスタイルを貫いている。お酒は全く受け付けない体質だそうだが、トークはざっくばらんでとても面白く、さそりの無言スタイルの印象とは全然違う。タランティーノの「キル・ビル」で梶芽衣子の歌が流れるが、タランティーノの来日時の契約には「梶芽衣子に会わせる」が入っていたそうで、帝国ホテルにいったら、30分間握手した手を離されなかったとか。70年の「反逆のメロディ」で原田芳雄と共演するが、それは沢田監督が日活以外の俳優を探していて、梶芽衣子がテレビで見た原田を推薦したのだという。

 梶芽衣子の特集がこの夏に銀座シネパトスというところであって、全部は見てないけれど数本を見た。さそりシリーズも何本か見直したし、「無宿」(やどなし)とか「修羅雪姫」も見たが、代表作の「曽根崎心中」も33年ぶりに見た。増村保造監督のATG作品だが、これで主演女優賞を総なめした宇崎竜童が黒メガネを取って時代劇に挑み、二人の破局的な恋の道行が圧倒的な情感で描かれる。近松はいつまでも新しいと思ったが、この原作さがしの苦労は大変だったという。増村監督と梶芽衣子で撮ることだけ決まっていて、松本清張や黒岩重吾やいろいろ読みふけり、ようやく決まったが、完全主義の監督に冬の撮影に辛さ。モントリオール映画祭で受賞した後、ニューヨークで上映したら、宇崎竜童のロック調の音楽が「どうして音楽だけ、われわれのものを使うのか」と質問されたとか。当時見た実感では、大ヒット中のダウンタウン・ブギウギ・バンドの宇崎が素顔で熱演して、さらに現代調音楽をつけたことがとても新鮮で成功していた。今年31年ぶりに歌を吹き込みCDを出したが、それは宇崎竜童の曲ばかり。ではこの間親密だったかというと、撮影最終日以後全く会うこともなく、今回突然電話したのだとか。

 梶芽衣子の芸名になる前に、本名で「夜霧よ今夜もありがとう」などに出ていた。今見ると、太田雅子時代から僕は好きで、日活ニューアクションの「野良猫ロック」シリーズなど本当に大好き。ただ同時代的に見たのは「さそり」シリーズから。あの冷たく鋭い目つきの黒づくめの造形が、連合赤軍事件以後の「内ゲバ」に明け暮れた「鉛の時代」の心象を形作っている。最後の歌が「怨み節」。愉快なトークと「怨み節」が聞けて幸せな一夜でした。
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