尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

戦争にはならないはずだが-北朝鮮問題⑤

2017年08月20日 23時03分41秒 |  〃  (国際問題)
 家族がケガをして家事が忙しい。映画なんかに行ける時間もないから、その間に国際情勢を書いちゃおうかと思ったけど、時間と気持ちに余裕がない。まとまったことを調べて書くゆとりがないから、残された問題をさっさと書いてしまいたい。要するに、多くの人の最大関心事は「戦争になるのか」ということだろう。冷静に分析すれば「戦争になる可能性は限りなく低い」ということである。

 かつて、1981年6月7日に、イスラエルがイラクの原子炉を爆撃したことがある。当時のイラク・フセイン政権が原子力発電所を建設することに対し、イスラエルはアラブ諸国の核開発につながる国家的危機とみなし「自衛権」の発動として空爆を実施した。イスラエルはイラクと国境を接していないから、ヨルダンとサウジアラビアの領空を侵犯していった。この事態に対し、国連安保理はイスラエルを非難する決議を採択した。イラク戦争でフセイン政権が崩壊した今となっては「昔話」かもしれないが。

 北朝鮮とすれば、この事態が一番避けたい事態である。そのような空爆が国際法違反かどうかは別にして、サッサと核やミサイルの開発基地を米軍がたたいてしまえば、北朝鮮問題は終わるとも言える。でもそうならないように相手も考えている。地下に作ったり、中朝国境の奥深いようなところなどに作ってるという話だ。この間のミサイル発射も国内のあちこちでやっている。もうすでに90年代の危機において、そのような「限定的空爆は不可能」とされている。

 米軍が時々あちこちを空爆、あるいはミサイル攻撃するニュースが聞かれるが、アフガニスタンとかスーダンとかシリアなどは、米軍に対する反撃能力がない。だが、北朝鮮には反撃能力がある。何も長距離ミサイルは必要なく、韓国にある米軍基地、あるいは韓国軍を攻撃することは今すぐできる。そのような攻撃能力を米軍側がすべて先制攻撃することは不可能である。

 米軍だって戦争したいわけではないだろう。世界のどこでも戦争してないんなら、「軍の存在価値」のために戦争を望む軍人がいないとも言えないが、中東の米軍はいまもなお戦争に関わっている。「二正面作戦」なんか愚の骨頂だ。軍人だから、命令されれば戦うと答えるだろうが、戦略的には本格的攻撃作戦は不可だろう。

 中国も習近平体制二期目の党大会を秋に控え、米朝軍事衝突がいま起きては困るだろう。北朝鮮がどんなに困り者であっても、習近平時代に朝鮮半島全域が米国の勢力圏に入ることは絶対に阻止したい。もし起こったら「外交的失点」とみなされかねない。習近平政権はもしかしたら3期目が絶対ないとはいえないかもしれないが、とりあえず2期目の最後の年、次の次の党大会が開かれる2022年までは戦争を望まない。その年は2022年北京冬季五輪の年でもある。

 韓国は北崩壊を引き受ける余裕がないし、もちろん北朝鮮指導部も本格戦争になったら今度は米軍に負けて体制変換が起きると判っているだろう。米国は北朝鮮のミサイル危機をきっかけに、韓国や日本に対ミサイル防空システムを売りつけている。常識で考えれば、米国もいま「北朝鮮問題」が消滅してしまえば大損になるから、早期の北朝鮮崩壊は望んでいないはずだ。

 という風に関連国がすべて戦争が起きないことで利益を得るんだから、常識では戦争にならない。でも…はあり得る。今までの歴史を振り返れば、第一次世界大戦、日中戦争、ヴェトナム戦争、イラク戦争…。こんなはずじゃなかったのに」の連続で、いつの間にか大戦争になっていた。関係者がみな「なんでこうなるの?」と思うような展開になってしまった。

 そういうことは今回も起こり得る。それは朝鮮半島だけではない。インド・パキスタン、イエメン、ロシアとウクライナなどでもあり得るだろう。ヴェトナム戦争では、後に謀略と判った「トンキン湾事件」という「米軍が攻撃された」と報道された事件が大軍派遣のきっかけとなった。本当の偶発事件か、もしくはどこかの国の陰謀か、とにかくなんらかの「米軍に対する攻撃」が起これば、トランプ大統領は、あるいはほかのどの大統領であれ、直ちに反撃を命じるだろう。

 そういう偶発事件が起こらないようにすることが大切だ。もし起こっても、周辺国の努力で「単なる偶発事件」レベルに留めるようにする。そういうことが大切だ。今までも38度線周辺では、何度かそのような「偶発事件」は起きたことがある。だから、今度起きても大事態にはしないようにできるはずだ。

 だけど、北朝鮮のミサイル実験はいずれ行われるだろう。作ったものは実験して確かめないと使えない。新薬だって、自動運転車だって、実験だけでOKにはならない。治験や公道での実験を経ないと、使い物になるかどうかが判らない。ミサイルだって、作った以上、実際に撃って確かめないと判らない技術的問題があるだろう。作ったら、発射実験はしてみたいに決まってる

 だが、それがグアム島周辺海域かどうかは僕は疑問。標的地点を明かして、米軍に迎撃されたりすれば、米国技術の大宣伝になっちゃう。他に撃てば、元の標的が判らないんだから、作戦成功と言える。ということで、ミサイルや核兵器の実験はいつでもあり得るが、それで戦争にはなりにくい。じゃあ、現状維持かというと、そういうことになる。つまらない結論だけど、このような状況がしばらく続くのだと思っている。
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