尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

池袋西口野外劇場で「マハーバーラタ」を見る

2019年11月23日 22時45分47秒 | 演劇
 新設された池袋西口野外劇場の「杮落とし」(こけらおとし)公演の「マハーバーラタ~ナラ王の冒険~」を見てきた。「東アジア文化都市2019豊島バージョン」と銘打たれている。「マハーバーラタ」は古代インドの宗教的叙事詩で、「ラーマーヤナ」と並ぶ二大叙事詩で、ヒンドゥー教の聖典でもある。演出は宮城聰、製作・出演は「SPAC - 静岡県舞台芸術センター」。宮城聰はSPACの芸術総監督で、今までも「マハーバーラタ」を各地で上演してきた。歌舞伎座で新作歌舞伎としてやったこともある。今回は池袋の東京芸術劇場の真ん前に野外劇場が作られ、新たに豊島バージョンとして公演した。

 僕は静岡まで見に行くのが大変なので、宮城君の芝居を最近見てない。(君付けの理由は後述。)それまでの「ク・ナウカ」時代はいくつか見ているけど、久しぶりだから楽しみにして発売日にチケットを買いに行った。また豊島区や芸術劇場にも縁があるから、これは見ておかなくちゃと思った。数日前まで楽しみにしていたのだが、最後になって晴れの天気予報が変わった。午後2時半から入場、3時開演だから、それまでどこ行こうかと計画していたが、昨日からグッと冷え込んだ雨が降っている。もう他に行くのはやめにして、防備をしっかりして臨むことにした。

 お芝居の感想は「面白い」とか「判らない」とかいろいろあるだろうが、今日に限っては一にも二にも「寒かった」。小雨ながら、止むことなく降り続き、気温も低い。予定上演時間は90分なんだけど、それでも1時間が限界かなあ。最後の頃は早く終わってよと願うことしきり。ちょっと前まで、暖かな晴天の日が続いていた。まさか、こんなことになるとは。日本の野外公演といったら、「薪能」やあちこちの「ロックフェスティバル」が思い浮かぶが、やはり夏じゃないと難しいのかと思う。事前にチケットを買う必要を考えると、都市における常設野外劇場は最近の気象状況から難しいなと思った。
(シネリーブル池袋の男子トイレから見る、真ん中の丸い部分)
 「あらすじ」をホームページからコピーすると、こんな感じ。「その美しさで神々をも虜にするダマヤンティ姫が夫に選んだのは、人間の子・ナラ王だった。その結婚を妬んだ悪魔カリの呪いによって、ナラ王は弟との賭博に負け国を手放すことになる。落ちのびていく夫に連れ添おうとしたダマヤンティ。だが疲れて眠っている間に、彼女の衣の切れ端を持ってナラは去る。夫を捜して森をさまようダマヤンティを様々な困難が襲う。行く先々で危機を乗り越えた彼女はやがて父親の治める国へ。一方ナラも数奇な運命を経てその国にたどり着く。果たして夫婦は再会し、国を取り戻すことが出来るのか…。

 円形部分の中に椅子を置いて観客席とする。円形部の上が舞台となり、一周をうまく使った。その下に楽器が置かれて、音楽と演技が一体化している。この構造は面白いけど、周りをさえぎるものは何もなく、向こうに「ビックカメラ池袋西口店」のネオンが見える。宮城聰の舞台は、演技者とセリフが分かれることが多い。つまり、人間で行う文楽(人形浄瑠璃)のような感じ。今回も大部分はそうだけど、重要なところはナラ王やダマヤンティ姫が自ら語る。最初にナラ王とダマヤンティ姫が登場するときは、厳かすぎて「即位の礼」か何かか。ナラ王が賭博で国を失った後はコミカルなやり取りも多い。
(ホームページから)
 大団円でダヤマンティ姫が登場するときは、その神々しい姿が圧倒的だ。演じる美加里の存在感の大きさ。「平安時代の日本にインドの叙事詩『マハーバーラタ』が入ってきたらどういう化学反応が起こったか?」とホームページに演出意図が語られている。話自体は判りやすくなっていて、セリフも口語だから理解出来る。音楽と相まって、祝祭的な交響感覚が場内を覆うはずのところ、ある程度は感じ取れたけど、やっぱり寒いなあという観劇体験だった。

 前に「見田宗介「現代社会はどこに向かうか」を読む」(2018.12.30)で書いたけれど、僕は1980年に見田宗介さんを囲む講座に参加したことがある。その会が終わっても、時々事後の集まりを持っていた。そのメンバーの一人だったのが宮城聰君で、僕の方が少し年長だから当時「君」付けで認識してしまった。当時は東大生で自分の劇団を作ろうとする頃だった。先代の林家正蔵(8代目)が大好きだというのが印象的だった。その後、東大をやめてプロになると宣言した頃からは、集まりにも顔を出してないと思う。ずいぶん活躍してるなと遠くで見てるだけ。

 なお「こけらおとし」とは「新たに建てられた劇場で初めて行われる催し」のことだが、「」(こけら)と「」(かき)は違う字である。旁(つくり)の部分が「こけら」は4画で、「かき」は5画なのである。「こけら」って言うのは、材木を削った際の木片のこと。
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