尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

開高健記念館(茅ヶ崎市)を見に行く

2021年02月26日 22時21分40秒 | 東京関東散歩
 神奈川県茅ヶ崎(ちがさき)市にある開高健記念館に行って来た。開高健は1974年に茅ヶ崎に終生の住まいを作った。2003年にそこが記念館になって公開されたが、知らない人が多いと思う。僕も割合最近(と言っても数年前だが)に知った。何しろ金土日しか開館してないから、なかなか行きにくい。今日も雨の予想だったが、何とか持ちそうな予報に変わったので行くことにした。最近開高健を読んだから、こういう時期じゃないとなかなか行きにくい。

 茅ヶ崎と言えば、一般にはまずサザンオールスターズ(桑田佳祐の出身地)で、続いて加山雄三だろう。(父親の上原謙が邸宅を構えた。)有名人の出身者、居住者が多い町で、松坂桃李や今宇宙に行っている野口聡一さんの出身地とも出ている。映画監督の森田芳光の出身地で、小津安二郎の定宿だった茅ヶ崎館もある。大岡越前一族の墓があって大岡越前祭もやっている。茅ヶ崎で開高健を思い出す人はほとんどいないだろう。

 そんな茅ヶ崎だが行くのは初めて。遠いけれど乗り換え一回で行ける。上野駅で上野東京ラインの熱海行に乗って、ウトウトしてる間に着いてしまう。スマホでバスを調べたが、時間が全然違ってる。改札を出て南口寄りに観光案内所があり、ガイドマップが置いてある。初めて行く人には必須だ。コミュニティバスに開高健記念館というバス停があるが、時間が合わないので歩くことにした。徒歩20分とあるから何とかなるだろうと思ったが、まあ近くまでは問題なく行ける。問題は近くに案内が少ないことで大回りしてしまった。
   
 2枚目の写真にあるように、今も「開高健 牧羊子」と刻まれた表札のままである。入ると玄関前に碑がある。「入ってきて人生と叫び 出ていって死と叫ぶ」。館内では写真を撮らなかったが、戦場のヘルメットや釣り道具や酒、本が集まっている。「パニック」のアイディアの基となった新聞記事、開高が携わったサントリーの新聞広告、人生折々の写真など貴重な資料がいっぱいだった。主のいない書斎がそのまま保存され外から見られる。
  
 庭を歩けるが、開高は「哲学の小途」と名付けていた。開高家の本籍は福井県で、中野重治と同じ村だった。そのゆかりで庭には越前スイセンが植えられて今見頃だった。記念館には開高健の流通している本も集められて購買できる。全然知らない人には意味が無いところだと思うけど、そういう人はもともと来ないだろう。現代史の貴重な資料が残されていて僕は面白かった。
  
 記念館のそばに「茅ヶ崎ゆかりの人物館」というのがあって、共通券もあったから行ってみたが、ここは入る必要はないと思う。記念館の所在地は「東海岸南」だが、開高邸から海は見えない。砂防林があるからだ。5分ぐらい歩いて国道を越えると海が見えてくる。堤防まで行くと下が砂浜である。遠くに江ノ島が見えた。松林の中は散歩道が整備されている。歩きながらサザンビーチを目指す。途中に野球場があり、そこに国木田独歩の文学碑がある。
  
 明治の文学者国木田独歩は結核のため36歳で亡くなった。亡くなる前は茅ヶ崎にあった有名な結核病院、南湖院に入っていた。ここは当時非常に有名だった病院で、名前の「南湖院」はいかにも湘南っぽいけれど、実は所在地の地名である。(ただし「なんご」と読むらしいが、病院は「なんこいん」である。)平塚雷鳥の愛人だった奥村博史や詩人の八木重吉なども入っていた。近代文学史、思想史に大きな意味を持った場所だが、戦後進駐軍に接収され、現在は滞在型有料老人ホーム「太陽の郷」になっている。第一病棟などが現存していて公園として公開されている。ここも行きたかったのだが、雨がパラパラしてきたから今回は止めることにした。
 (茅ヶ崎館)
 そこでサザンビーチ前で曲がって「茅ヶ崎館」を探すことにした。まあここは現役の旅館だから外から写真を撮って帰ることにした。ビーチ沿いには夏ならばオシャレそうな店が並んでいたが、緊急事態下の冬の曇天(時には雨がパラパラ)だから、特にビーチリゾート感はなかった。でも町全体に何となく夏っぽいムードがある町だ。僕は一度も湘南ビーチに行ったことがない。千葉や伊豆はあるが、混んでそうなところは行きたくない。だから鎌倉と小田原の中間地帯は全然知らないが、そこにも興味深い史跡はあるので今後また行きたいと思った。
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