尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「学士課程」を前期、後期に分けてみる-大学入試問題②

2017年09月12日 22時18分37秒 |  〃 (教育問題一般)
 大学を中退する人が結構いる。僕の時代にもいたけど、最近もかなりいる。というか、とても増えている。文科省が2014年に発表した調査結果によると、2012年において、全大学生約300万人中、退学者は約8万人だった。(2.65%)そのうち、経済的理由が20.4%で最大になっているという。その5年前には14%だったから増加傾向にある。また「学業不振」による中退も多い。

 さて、大学を中退した人はどういう扱いになるんだろうか。普通に考えると、「最終学歴は高卒」になるはずだ。でも、選挙公報を見ていると、時々「〇〇大学中退」という候補者がいる。最終学歴ではなくても、そう書いてあるということは、「日本では大学は入っただけで意味がある」ということの証明だろう。中退者はいつどんな理由でやめるのか。人それぞれだろうが、ほとんど通わずやめた人もあれば、卒業近くまで頑張ったけど単位が足りずやむなく中退する人もいるだろう。

 短大だったら2年間で教育課程が終わり、「短期大学士」(2005年9月以前は「準学士」)という学位が授与される。(高専は「準学士」。)ところで、大学生が2年以上大学できちんと単位を取った後で、経済的理由等でやむを得ず退学する人はどうなるのか。短大や高専同等以上の教育を受けたわけだから、「準学士」の学位が与えられてもいいんじゃないか。

 ある時、僕はふとそう思ったんだけど、どうなんだろうか。そこからさらに考えると、大学院を考えてみれば、「博士課程前期」「博士課程後期」に分かれている。(前期を修了すれば「修士」になるので、以前は「修士課程」と呼ばれていたけど、今はそう呼ぶところはないだろう。)だったら、「学士」をめざす課程(つまり普通の4年制大学の4年間のことだけど)だって、前期・後期に分けてはだめか。

 つまり、「前期学士課程」「後期学士課程」である。(そうなれば、短大というのは「前期学士課程に特化した教育機関」ということになる。)もちろん、そうなると不都合も生じる。2年から3年にかけて留学する人はどうなるのか。体育系や芸術系なんかは連続した教育の方が望ましいだろう。

 でも、別にそれはそれでいいのである。大学は大学で「4年間この大学で学んでもらう」ことを前提にした教育課程を作るだろう。学生の方だって、途中で留学して元の大学に戻って卒業するつもりでいい。何かの理由で退学した場合、きちんと単位を取っていれば、後から「準学士」(なり、それに類した名前の学位)を認定すればいいだけのことだ。

 だが逆に、「学士課程後期」は別の大学に移っていくことを前提にして、それまでの2年間を語学や一般常識、ボランティアなどを中心に学ぶ地方の大学だってあっていいじゃないか。高校を出たばかりでは、まだ親元から近いところに通いたい、通わせたいという人も多いはず。2年後になって、「是非この先生について学びたい」と専攻がはっきりしたら他大学へ編入するというのもありだろう。

 大学や大学生は、いつも何か批判されている。「イマドキの若者は…」ということになる。大学生の専門教育が批判されているわけじゃないと思う。むしろ「一般教養」というか、ちょっと前の人なら知っている常識が欠けている(その代りに、その後登場した「新技術」には精通している)ということだ。確かに少子化が進み、様々な社会体験をつむ機会減っているのも確かだろう。

 だから僕は「学士課程前期」という教育課程を作って、新しい教育を模索する試みもあっていいと思う。僕が考えるに、最初の2年間は家から近い大学で「語学」(英語)や「ボランティア」、「社会的表現活動」(町作りや地域活動と、自己の表現活動をミックスしたような活動)などを行う。そのまま同じ大学で学んでもいいけど、その後は別に大学で後半の大学生活を送るというのもいいと思う。

 そして、「無償化」はこの「学士課程前期」から進めていくというのがいいと思う。そうすれば、短大や専門学校も含めて、「高等教育の最初の2年間」をまず無償にするということになる。その方が平等という見地からはいいだろう。ちょっと入試そのものと離れてしまったけど、「入学試験廃止」と合わせて、大学のあり方を完全に変えてしまうことを考えてみませんかという提案。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「無償化」より「無試験化」... | トップ | 「新テスト」は結局どうなる... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

 〃 (教育問題一般)」カテゴリの最新記事