尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「百田暴言」および安倍首相と大西議員

2015年06月27日 23時55分01秒 | 政治
 安保法案関係をもう少し書きたいんだけど、ちょっと番外編。自民党の「若手議員」の勉強会「文化芸術懇談会」(さすがに「自由」で「民主」的な政党にふさわしいネーミング)に、作家の百田尚樹氏が講師で呼ばれ、「沖縄の2紙をつぶさないといけない」と述べた。また議員の中から、「マスコミを懲らしめるためには広告料収入をなくせばいい」という発言も出た。露骨な報道圧力である。安保法案への支持が広がらない現状を「マスコミの偏向報道」によると思い込んでいるんだろう。ずいぶんと議員の資質も劣化したもんだと思う。この問題を取り上げておきたい。

 東京新聞27日付朝刊に、共同通信が百田氏を電話取材した様子が出ている。「オフレコに近い発言で、冗談として言った」「なくなったらいいなとは思っているが、政治的な圧力でつぶせという趣旨ではない。そのようなことはあってはならない」と言っている。その後で、「例えば好きじゃない人物に『死んでほしい』などと軽口を言うことは一般にあるはずだ」とも述べたとある。いやあ、この人は軽口で「死んでほしい」という人なのか。そして、そうやって心にグサッと突き刺さる暴言を吐いておいて、後から冗談、冗談と言うのである。それを批判されると「冗談も通じない人なんだよなあ」と言う。

 いるよね、そういう人。パワハラ、セクハラ発言を連発しておいて、後から冗談に決まってるだろ。それも判らないのかと開き直る。「軽口で死んでほしいという人」なんて、一般にはそうはいない。若者には「死ね」が口癖というヤツもいるかもしれない。でも、そういう人間は大体、粗野な人間、無神経な人間で、周りからもそう思われている。今回の発言もそのたぐいで、大の大人が与党政治家の勉強会で言う言葉じゃない。だけど、今回の百田氏は謝罪どころか、発言の撤回もしていない。それどころか、自身のツイッターでは「炎上ついでに言っておくか。私が本当につぶれてほしいと思っているのは、朝日新聞と毎日新聞と東京新聞です(^_^;)」と言っている。確信犯なのである。

 この問題が国会で追及されても、安倍首相は他人事のようである。「私的な勉強会で自由な議論がある。一つ一つの意見をもって、処罰することがいいかということだ」とか言っている。これは全くおかしい。理由はいくつもあるが、まずこの日に予定されていた勉強会は当初はこれだけではなかったのである。党内の「リベラル系議員」がつくる「過去を学び『分厚い保守政治』を目指す若手議員の会」は、同じ25日に漫画家の小林よしのり氏を招いて5回目の勉強会を開く予定だった。しかし、「時期が悪い」と自民党執行部の意向で中止に追い込まれた。小林氏は改憲派の立場から憲法解釈の変更を進める安倍首相を批判している。だから、中止なんだろう。「私的な勉強会で自由な議論」が聞いて呆れる。一方は「時期が悪い」んだから、百田氏を招く方は「時期が悪くない」のである。そういう経緯を安倍首相がどこまで知っているのかは判らない。でも自民党執行部の最高責任者は安倍首相である。(ところで、小林よしのり氏を呼ぶのが、「リベラル系」と言われる時代になってしまったとは。)

 自民党は2014年末の総選挙以来、ずっと報道機関に圧力をかけ続けている。その前に2014年1月にNHK会長に籾井勝人氏を選んだところからと言うべきかもしれない。選挙報道では「公平を期せ」と各テレビ局に文書を送っていた。それ自体は当たり前というかもしれないが、「出演者の発言回数や時間、ゲスト出演者の選定、テーマ選び、街頭インタビューや資料映像の使い方」なんて具体的な項目を挙げている。ゲストや街頭インタビューまで挙げているんだから、これは露骨な圧力以外の何物でもない。そして、2015年になって、自民党がNHKやテレビ朝日を「事情聴取」で呼びつけている。「放送法違反」を言うが、一政党が報道機関を呼びつけることの方がずっと大きな「放送法違反」ではないか。こういう流れがずっとあって、その上で今回の発言である。

 もうはっきりしている。異論を許さない社会を作るのが安倍政権の考え方ではないのか。違うというなら、自民党の最高責任者として、自民党議員の発言を撤回させ、自らも謝罪するべきである。でも、そうはしない。去年の朝日新聞問題で、右派マスコミは「謝罪せよ」「辞任せよ」と大声をあげた。立場が違う勢力には強く当たるのに、自分の問題はスルーするのか。大体、今まで百田尚樹と言う人物がどれだけ物議をかもす発言を繰り返してきたことか。今、この人の話を党本部で聞いて「勉強」しようという発想そのものがずれている。ある意味、役割としての「暴言」である。ホントは自分で言いたいんだけど、やっぱり議員は言っちゃいけないかなという発言をしてもらって鬱憤を晴らすための「暴言要員」を頼んだのである。だから、面白くなってどんどん暴走したのである。

 ところで、「マスコミを懲らしめるためには広告収入なくせばいい」と言ったのは、大西英男衆議院議員だとのことである。大西議員は2014年6月に、上西小百合議員(日本維新の会=当時)の質問中に「まず自分が子どもを産まないとダメだぞ」とヤジを飛ばしたことで有名になった。この人はどういう人かと言うと、江戸川区の大部分を選挙区とする東京16区から、2012年、2014年と2回当選した衆議院議員である。その前は都議会議員、さらに前は江戸川区議会議員。1946年生まれで、今68歳である。1975年に区議会議員、1993年に都議会議員。それぞれ4期当選している。

 僕はこの大西さんを昔から知っている。僕が最初に採用された江戸川区の中学校の学区内に大西区議が住んでいたのである。学校の儀式にも、地元の区議としていつも出席していた。「新年賀詞交換会」とか昔っぽい会が多いところで、そういう会では挨拶するのを何度も聞いている。僕が異動する年のことだけど、PTA会長も卒業生の親だったから、替わりを見つけないといけない。上に書いた議員の任期をよく計算してくれると判るんだけど、都議会当選の前に数年の浪人時代がある。その時にちょうど、大西さんの次男が中学に入ってくるということになった。では会長を頼もうということで、PTA会長を大西英男氏が務めた時期があった。僕と入れ替わりなので、子どもの方も親の方も話したことはないけれど。この時の子どもと言うのが、大西洋平(1978年生まれ)という人で、2011年から江戸川区議会議員になっていたとは知らなかった。いや、時の流れは速い。

 大西英男氏は2007年に都議を辞職し、参議院選の比例区に立候補したが落選した。それでキャリアは終わりかと思ったら、民主党惨敗の選挙にあたり、めでたく当選したのが2012年で、66歳で初当選となった。この年ではおとなしくただマジメに議員を務めても、大臣の口など回ってこないだろう。そう思って、自分なりに好き勝手に発言しているのだろうか。昔聞いていた挨拶は別に当たり障りはないものだったと思うが。区議、都議、衆議院議員と、自民党の中で何十年も過ごして、世の中の弱い者を見下す意識が身に付いてしまったのか。昨年ヤジを飛ばした上西議員も、その後「維新の党」を除籍されてしまった。除籍を進めた橋下大阪市長も、今のところ政界引退とか。世の栄枯盛衰は激しい。盛者必衰のことわりを思えば、こういう出来事が続く安倍政権も盛りを過ぎたのか。この、自分に都合の悪いことには耳をふさぎ、自分に都合のいいことばかり聞きたがる体質。これこそが後に「安倍時代」の特質と回顧されるだろう。自民党内にも「言論の自由」があるらしいから、是非多くの議員もホンネトークで何でも言ってしまえばいいのに。
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