尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

フィルムセンターの「発掘」映画特集

2018年01月22日 22時58分14秒 |  〃  (旧作日本映画)
 東京は久方ぶりの大雪となっている。明日から旅行を予定しているので、交通が乱れるのが心配。トランプ政権一年やオウム裁判終了、あるいは安倍政権で進む軍事大国化や沖縄で追い次ぐ米軍ヘリ事故などなど、考えておくべき大問題は多いが、2018年1月30日から3月4日に行われるフィルムセンターの「発掘された映画たち2018」について書いておきたい。日本で唯一の国立映画保存施設であるフィルムセンターは、戦前の記録映画の「発掘」や戦後の映画の修復なども行っている。今回の特集はむしろ映画ファンというよりも、現代史に関心が深い人が見るべき映画が多い。

昭和天皇と秩父宮
・日本では記録映画は「天皇」を可視化する装置でもあった。昭和天皇が皇太子の時にヨーロッパを訪問した時の記録映画は、非常に大きな政治史的、社会的な意味があった。「皇太子渡欧映画 総集編」と「東宮殿下御外遊 實況大正十年」が上映される。(2月3日4時、2月27日7時)
・大正天皇の次男である秩父宮は、兄との関係をめぐってもいろいろと取りざたされた。しかし、戦時中から結核で闘病生活を送り戦後まもなく亡くなった。秩父宮を映像で見た人は少ないだろう。秩父宮妃勢津子は松平恒雄(宮内大臣、松平容保の六男)の長女だが、兄一郎の長男松平恒忠の私的な映画コレクションが今回寄贈され上映される。「秩父宮殿下の御英姿」(1931)など全6本の映画である。非常に貴重な機会ではないかと思う。(2月8日7時、2月25日4時)

戦前日本の貴重な映像
日露戦争と関東大震災の映像が残されている。日露戦争は「国寶的記録映画 旅順開城と乃木将軍」など、関東大震災は全6編になる記録映画の断片である。(2月4日1時、2月28日7時)
野田醤油(キッコーマン)、鈴木商店浜口雄幸の葬儀記録もある。浜口雄幸は1930年に東京駅で狙撃され、1931年に亡くなった総理大臣。鈴木商店は金融恐慌で破綻したことで有名だが、今回はホームムービーが発掘された。(2月11日1時、2月27日7時)
能代・佃島・築地市場の記録映画。秋田の能代で撮影された「能代港町全貌」(1934)や戦後の1964年頃に撮影された「佃島」「魚市場の一日」を上映。(2月11日4時、2月28日3時)
・個人映画もある。「阿部正直コレクション」は幕末の老中阿部正弘を出した備後福山藩阿部家の最後の伯爵、阿部正直(1891~1911)の映画。「雲の伯爵」と呼ばれて、気象研究所長を務めた人で、富士登山記や雲の映像、家族映画を残した。(2月9日3時、2月25日1時)
・日本最古のアニメとされる「なまくら刀」など貴重なアニメ特集。(2月4日4時、2月21日3時)

戦後の発掘された映画の数々
・僕が一番見たいのは、山際永三監督の「狂熱の果て」(1961)である。ウルトラマンシリーズなどのテレビで知られる山際監督の唯一の劇映画。新東宝倒産後にほんのちょっと存在した大宝配給の映画で、その後見られなくなっていた。今回山際監督の調査でプリント作成が可能になったとある。山際さんと言えば、僕にはむしろ冤罪救援運動家としてのイメージがある。「六本木族」の虚無と退廃を描くというこの映画は是非見たい。(2月2日7時、2月20日3時)

・「叛軍シリーズ」も今まで「叛軍№4」しか見られなかったと思う。もともと岩佐寿彌監督が「反戦自衛官」小西誠を支援するために撮った映画である。だけど、「№4」になると記録映画に止まらない映画そのものの脱構築に至った。今回№1~3が監督旧宅から発掘。(2月14日3時、3月3日3時)
・「スワノセ・第四世界」(1976)は、70年代にリゾート開発に反対した人々が鹿児島県のトカラ列島の諏訪之瀬島に集結した時代のドキュメンタリー。当時ずいぶんあちこちで上映されたが僕は見逃した。ゲイリー・スナイダーやアレン・ギンズバーグが出ている。70年代カウンターカルチャーを代表する映画の一本だろう。(2月7日3時、2月20日7時)

・「バイバイ・ラブ」(1974)は藤沢勇夫監督の自主製作映画で、僕は当時見て面白かった記憶がある。どんな青春映画だったのか、また見てみたい気がする。(2月8日3時、2月21日7時)
・女優望月優子の監督作品「海を渡る友情」と「ここに生きる」。望月優子が監督もしていたとは知らなかった。後に社会党参議院議員になっただけあって、全日本自由労働組合、つまり失対労働者(日雇い労働者)の組合の製作した映画。女性、炭鉱離職者、被差別部落出身者など多くの人々の生活を描くというから、是非見たい。(2月6日7時、3月4日1時)
池部良が監督に加わった池部良プロダクション第1回作品という「ヴェトナム戦争」(1967)という記録映画。米軍の協力を得たとあるから、山本薩夫監督「ベトナム」などとは反対の立場からなのだろうか。こんな映画があったということも知らなかった。(2月7日7時、3月4日4時)

カラー映画の復元
 カラー映画は年月とともに褪色してしまうので、その修復作業も重要な仕事である。
・今回は「再タイミング版」として「セーラー服と機関銃」(1982)が修復された。春には同じ再タイミング版として「時をかける少女」が上映された。今回も角川映画の大ヒット映画を取り上げている。薬師丸ひろ子の活躍も記憶に新しいが、その完璧版。(2月10日12時、2月22日、6時半)
小津安二郎の「浮草」(1959)を修復したが、なぜか二つのヴァージョンがある。小津はコダックや富士ではなく、ドイツのアグファカラーを愛好し、それが独特な赤の発色をもたらした。「浮草」は大映で撮ったので、京マチ子や若尾文子が出ている。戦前の「浮草物語」のセルフリメイク。昔見てるけど、是非再見したい。「デジタル復元・DCP版」が2月17日12時半、3月2日7時。「デジタル復元・35㎜版」が2月18日1時、3月1日7時。

新東宝映画の復元
 可燃性オリジナルネガからダイレクトプリントしてニュープリントを作成した。今回は新東宝映画が何本か。五所平之助の「わかれ雲」「朝の波紋」「大阪の宿」「鶏はふたたび鳴く」、内田吐夢の「たそがれ酒場」、伊藤大輔の「明治一代女」「下郎の首」を上映。「大阪の宿」はしばらく上映されていないように思うけど、名作。内田監督の「たそがれ酒場」は非常に不思議な映画だと思うが魅力的で、再評価の必要がある。ここは上映時間は書かない。
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