尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

2020年キネマ旬報ベストテン・日本映画編

2021年02月05日 21時08分59秒 | 映画 (新作日本映画)
 毎年2月5日がキネマ旬報ベストテン号の発売日である。僕はこれを1970年から持っているのである。もう毎号を読む気は、お金的にも保管場所的にも持てないのだけど、ベストテン号だけは買ってしまう。特に昨年からベストワン以外の事前発表をしなくなったので、買わないと判らなくなってしまった。ということで今年も買って細かく読むからブログはお休みでもいいんだけど、どうせなら簡単に書けば手間はそうかからない。まずは日本映画編から。
(森山未來と水川あさみ)
 個人賞は後回しにしてベストテンの紹介。1位は「スパイの妻」(黒沢清)で、ただ一作200点を超えている。完成度から見て納得の結果だろう。2位は「海辺の映画館ーキネマの玉手箱」(大林宣彦)で、188点。得点ではこの2作品が抜けている。大林監督の遺作になった大作だが、僕はかなり批判的な感想を持った。「反戦」をテーマにする場合、「天皇制」や「植民地」を本格的に取り上げないといけないと思う。晩年の作品では「花筺」(はながたみ)が最高だと思う。

 続いて書いていくと、③朝が来る河瀬直美)④アンダードッグ武正晴)⑤本気のしるし劇場版深田晃司)⑥37セカンズHIKARI)⑦罪の声土井裕泰)⑧喜劇 愛妻物語足立紳)⑨空に住む青山真治)⑩アルプススタンドのはしの方城定秀夫

 ベストテン選出は「遊び」だし、時代の影響も受ける。今年に関しては、まあ、5位までは大体同感である。しかし、毎日映画コンクール日本映画大賞の「MOTHER マザー」が落ちているのは納得できない。どう見ても「空に住む」や「アルプススタンドのはしの方」より傑作だったと思うけど。「罪の声」「空に住む」は見たけど書かなかった。「罪の声」は多くの人が満足出来る出来だと思うが、原作の絵解きみたいだった。僕は「60年代反乱」をネガティブに「総括」する意図が好きになれない。まあ僕は原作を読んでいたので、展開を全部知って見たこともある。

 「37セカンズ」と「喜劇 愛妻物語」は見逃し。新人女性監督の「37セカンズ」という映画がなかなか傑作らしいという話は後から聞いた。映画は後追いできるから、どこかで見たいと思いながら果たせていない。「喜劇 愛妻物語」はまさか主演女優賞をさらっていくとは思わず、まあ見なくてもいいだろうと思ってしまった。全部見るわけにもいかないから、何本か抜けてしまうことは仕方ない。
(喜劇 愛妻物語)
 10位以下は作品名だけ挙げておく。れいこいるか、MOTHER マザー、セノーテ、ミッドナイトスワン、初恋、一度も撃ってません、浅田家!、風の電話、おらおらでひとりいぐも、窮鼠はチーズの夢を見る(最後の2作は同点で19位)

 続いて、「佐々木、ィン、マイマイン」、ソワレ、私をくいとめて、生きちゃった、男はつらいよ お帰り寅さん、のぼる小寺さん、ラストレター、脳天パラダイス、星の子(以上で30位まで)

 一般的には全然知らない作品の方が多いだろう。誰もが知ってる「鬼滅の刃 夢幻列車編」はどこにあるかと調べると、99位になっている。「ばるぼら」の48位はいいけれど、39位の「アイヌモシリ」はもっと上位になるべき作品だ。「風の電話」はここに書いたけれど、主演のモトーラ世理奈が新人女優賞を得た。「初恋」という映画は覚えてないが、調べたら三池崇史監督作品。

 「れいこいるか」という映画も見逃す以前によく知らなかった。なお、読者選出ベストワンは「天外者」(てんがらもん)だったが、批評家選出では誰も投票していない。三浦春馬の遺作という意味は大きいが、僕も映画の出来には不満が多い。

 個人賞では、主演女優賞(水川あさみ)、主演男優賞(森山未來)、助演女優賞(蒔田彩珠)、助演男優賞(宇野祥平)、新人女優賞(モトーラ世理奈)、新人男優賞(奥平大兼)、監督賞(大林宣彦)、脚本賞(濱口竜介、野原位、黒沢清

 文化映画も挙げておく。1位は「なぜ君は総理大臣になれないのか」。以下、プリズン・サークル、花のあとさき ムツばあさんの歩いた道、三島由紀夫vs東大全共闘、音響ハウス、ムヒカ 世界で一番貧しい大統領から日本人へ、タネは誰のもの、アリ地獄天国、れいわ一揆、香港画
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