尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「一国二制度」下の日本ー「補助金不交付」問題

2019年10月06日 20時54分10秒 | 政治
 香港情勢が重大局面を迎えている。警察による実弾発砲が相次ぎ負傷者が出ている。香港政府は大昔の決まりを持ち出してきて、「覆面禁止」を議会を無視して制定した。しかし、禁止令を無視してマスク姿のデモが続いている。10月1日の中華人民共和国建国70年の式典でも、香港の「一国二制度」は堅持されると表明している。だが、「二制度」と言っても事実は「中国政府の許容範囲内」ということなのか。大自然の中にいるのかと思ったら、実はサファリパークの中だったのか…。

 香港を「対岸の火事」と思っていられない自体が日本でも起こっている。関電(関西電力)幹部の問題には驚いた。福井県高浜町の元助役からの多額の金品授受が続いていた。裏にはまだまだ大問題が潜んでいそうで、その全貌は未だ見えていないと思う。「かんぽ生命」の問題も注目してきた。この問題は「そもそも郵政民営化とは何だったのか」という問題につながると思う。昨年、NHK「クローズアップ現代+」がかんぽ販売の問題点を追及する番組を放送したところ、かんぽ生命側が抗議し、NHK経営委員会がそれに応えていたという報道にもビックリした。

 様々な問題があるわけだが、ここでは今までも書いてきた「あいちトリエンナーレ」問題を書いておきたい。9月27日に、愛知県に対する補助金の不交付が決定されたという報道がなされた。補助金の交付はすでに決まっていたわけだが、その全額7820万円すべてが不交付だという。中止になった「言論の不自由展・その後」だけではなく、すべての展示に対して補助金不交付である。もちろん、問題が起きた展示に対しての補助金不交付はやるかもしれないと思ったが、補助金全部を取り消すなんて誰も思ってなかっただろう。安倍政権のやり口はいつも予測を超えてやってくる。
(補助金不交付に抗議する人々)
 国際芸術展を実施するにはお金がかかる。文化庁の補助金を申請するのは当然だろう。展示アートの内容を国が審査して、交付・不交付を決めるなら「検閲」だ。いや、そうじゃなくて申請書類に問題があったという理由を挙げているらしいが、そんなことを記入する欄はなかったらしい。そういう「後付け、無理やりの理屈づけ」は大いに追求しないといけない。電話やファックスで「脅迫」する人がいたことが「問題」なのであって、これでは「被害者」に対して「お前の方に隙があった」と言ってることになる。 

 今後、抗議活動や裁判などによって、補助金不交付が覆ることがないとは言えないだろう。だが、そうなったとしても、一度「不交付」が決定されたことは、今後も大きな影響を及ぼすだろう。今後あらゆる芸術祭において、「問題を起こしてはならない」=「問題になりそうな作家の展示を避けなければならない」という「事前検閲」がより一層進むだろう。そして、「展示可能な作家」と「展示不能な作家」に二分されてゆく。今後は権力が関わるまでもなく、アート界内部において「展示可能な作家」によって「アイツらが入ると、補助金が全部ダメになる」と排除する動きが出てくる。

 今までだって実はあったんだと思うが、より一層強まってゆく。そういう「分断」を広げることが、萩生田文科相の狙いだと思う。この人が文科相をやってること自体が日本政治が末期状態にあることを示している。日本には「日本国憲法」があり、すべての法律、政令等は憲法の精神に反することは許されない。そうであるはずが、どうもそうではない。昔から変だったけれど、安倍内閣で「集団的自衛権」容認の頃から、もう官僚のあり方が変わってしまった。実は日本だって「一国二制度」だったのか。
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