尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

都立高入選ミス問題、その後-続報集②

2014年10月10日 23時16分00秒 |  〃 (東京・大阪の教育)
 2014年2月実施の都立高の入選で多くのミスがあったという問題が発覚、都教委が点検して改めて合格者が出るなど大問題となった。このブログでは、6月に8回にわたって東京都の高校入試に潜む問題を書いた。「都立高入選ミス問題①」以下、順番に見てもらえば僕の考えは判ると思う。(ちょっと長くなってしまったけれど。)「カテゴリー」の「東京の教育」をクリックして見てもらえば、投稿の新しい記事から見ることができる。その問題のその後の展開を報告。

 夏休みが終わるころまでには最終点検を終えると言っていたが、その結果は9月11日に発表されている。都教委のサイトにある「都立高等学校入学者選抜学力検査の採点の誤りに係る答案の点検結果について」がそれである。今さら細かいことをいろいろ書いても面倒なので、一番重要な追加合格者だけ書いておく。今年が13校16人、昨年分が6校6人、計18校22人となっている。

 一方、改善策については、都立高校入試の採点誤りに関する再発防止・改善策についてという文書が同じ9月11日付で発表されている。まあ、都教委のことだから対して期待できないのは判り切っているが、案の定これを見ると「犯罪的な欺瞞」がある。「採点・点検に専念できる十分な時間と環境を確保する」などと言って、「学力検査翌日から合格発表日の前日までの日数を現行の3日間から4日間とする」などと恩着せがましく言っているのである。「現行の3日間」などというものが虚構の産物である。2014年だけが「3日間」であり、それ以前はどのようなものだったかは「昔はもっと余裕があった」で書いている。例えば2013年は、2月23日(土)実施、28日(木)発表、確かに日曜を除けば「3日間」ではある。2012年も同じだが、2011年以前は「4日間」の年の方が多い。その間の「法則性」の如きものは前記の記事に書いている。

 本来、都教委は2005年度から入選の日程を2月23日に固定していた。土日に当たろうがやるんだと言い、現に土曜実施が2回ある。だから、本来は2014年は2月23日(日)にするのが本当である。それを24日(月)にした。日曜ではおかしいというなら、初めからそう言えばいいし、その場合は発表を延ばせばいい。当然のそういう配慮をすることなく、押し切ったのである。その経過の理由の究明こそ最も大切な問題であった。東京マラソンと重なるため、(五輪招致に躍起になっていた)東京都はマラソンの方を優先したという話だけど。もちろんその経緯は全くはっきりしていないし、責任追及もなされていない。

 そのほか、検査後2日間は生徒を登校させず採点、点検に専念するという。これは一見合理的だけど、学校ごとに事情が違い機械的に運用してはならないだろう。また、マークシート方式を一部で導入し試行してみるということで、試行校20校が決定している。それはそれでいいとも言えるけど、高いカネに見合うのかどうか。それなら各校にマークシート・リーダーを買うのではなく、どこかに集約することもできるのではないか。また、マークシート方式が不利な生徒(身体的、精神的な障がいを持っている生徒)への対応をどうするのかという問題がある。

 ところで、この問題に関して「処分」が発令されている。「都立高等学校入学者選抜学力検査における採点の誤りに係る学校職員及び事務局職員の処分等について」である。追加合格者があった学校の(当時の)校長は戒告、副校長は文書訓告、ミスがあった学校の校長は文書訓告、副校長は口頭注意。「採点を担当した教員(165校、3,170名)については、校長から指導を行う」とのことである。まあ、行政機関として「行政責任」を問うのは致し方ないのかもしれない。しかし、これが僕の言う「外形的事実」だけで「処分」していくという「小権力者」特有の世界になっていることは明らかだと思う。具体的にどうすれば良かったのか。ただ偶然にミスをして、たまたまボーダーライン上の生徒にそのミスが起こった場合だけ、重い処分となる。それは本質からすればおかしい。行政には結果責任があると言えばそうかもしれないが。

 そのあたりはもう書かないが、「何でこのように間違いが多いのか」という感想が結構聞かれるので、ちょっと考えておきたい。まず第一に「ミスがあってはならない」のではなく、「採点ミスは誰がやっても必ず起こる」ということである。当然、もっと日程が詰まっている私立学校などはもっと多いだろう。疑う人は「数百人の答案をコピーして採点してみる」という実験をしてみれば判る。だから、点検に手間を掛けるしかないが、その手間を掛ける日程が確保されていなかった原因こそが大事ということである。もう一つは「入力ミス」は点検しているのだろうかということである。当然しているだろう。しかし、その報告がない以上、「入力ミスによる合格決定ミスはなかった」のだろうと判断できる。これはすごいことではないだろうか。マニュアルの細かく規定されていた入力ミスの点検はうまく行ったということではないか。

 ところで、「都教委の点検」それ自体に問題はないのだろうか。それは点検しないので誰にもわからない。後から「ミスを見つけるぞ」意識で見れば、間違いに見えてくるということはないだろうか。僕の経験では、「アイウエから選べ」などという問題で、受検生の書く文字は非常にわかりづらい。特に「ア」と「イ」は判別が難しい場合がある。最初に見た人が「そのように見えた」のなら、それを「採点ミス」と言えるのだろうか。僕はこの点検そのものを点検してみたい気もする。
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