尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「原発推進意見広告」と中学教科書問題

2011年10月21日 22時03分00秒 |  〃 (教育問題一般)
 21日の朝日新聞に「選ぶべき道は脱原発ではありません」という意見広告が載っていました。載せたのは「国家基本問題研究所」(櫻井よしこ理事長)という財団法人です。ホームページから広告も見られます。読売、産経にも掲載されたそうです。

 この広告によれば、「事故は二つのことを教えてくれました」ということです。それは何かというと、「事故が原発管理の杜撰さによる人災だったこと」と「女川原発が生き残ったように、日本の原発技術は優秀だったこと」の二点なのだそうです。ええっ、それが原発事故が教えてくれたこと?
 普通我々がまず思いつく「原発事故の教え」と言ったら、まず思いつくのは、「巨大な原発事故が一度起きれば、国民・国土に大規模な被害をもたらし取り返しがつかないこと」ではないですか。今も何万人もの人が故郷を離れ避難生活を送っていることなど、この広告には一言も触れられていません。

 福島第一原発で定期点検中だった4号機が示すように、原発自体が運転していなくても核廃棄物プールが危険な状態になるのです。核廃棄物の処理問題について何も書かないで、「原発は安全」と言うのだから、いや驚くべき「意見広告」です。それに、原発のコストはいくらになるのでしょうか。税金の投入によるぼう大な補助金、やがてくる「廃炉」の費用、何万年もかかる「廃棄物処理」の費用、今回の事故の莫大な賠償金などをすべて積算すれば、原発はものすごく高いコストがかかります。いくら「安全な技術」だと強弁しても、コストが高すぎればそれは推進すべき技術とは言えません。

 さて、この広告に出ている役員の名簿を見ていて、あることに気づきました。それは育鵬社、自由社の中学歴史・公民教科書の執筆者、推薦者が多いということです。育鵬社の歴史教科書の責任者である伊藤隆氏、公民教科書執筆者の島田洋一氏、育鵬者の支援団体である「教科書改善の会」代表世話人の屋山太郎氏などを中心に、「日本教育再生機構」(育鵬社)や「新しい歴史教科書をつくる会」(自由社)に参加しているメンバーが半数近くいます。最近は名前を出していなくても、かつて「つくる会」の役員、支援者だった人もいます。まあ、育鵬社、自由社の公民教科書が原発賛美であることは、このブログで前に指摘してありますから、当然と言えば当然でしょうが。(ところで、国基研のホームページを見たら、広告には載っていませんが、石原慎太郎都知事が理事に名を連ねていました。)

 しかし、「道徳教育の充実」をうたう彼らが、このような広告を出していいのでしょうか。いま、現実に苦しめられている人々がこれほど多い時に、発すべき言葉は何か?「選ぶべき道は脱原発ではありません」ということですか?とても嫌な気分にさせられたので、あえて書きました。
 
コメント (1)
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