玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

平壌に飛んでヒーローになろう

2006年10月25日 | 「世に倦む日日」鑑賞記
このところユニークな記事が少なくて読み応えがなかった人気ブログ「世に倦む日日」が久しぶりに怪しい輝きを放った。
あまりの眩しさに目がくらむ。総員、対ショック・対閃光防御!

世に倦む日日 : 小沢一郎は平壌を電撃訪問せよ - 虎穴に入らずんば虎児を得ず
中国に見離され、北朝鮮の外交の出口が塞がれつつある今が、小沢一郎訪朝の好機である。平壌を電撃訪問すべきだ。名目は「北朝鮮に追加核実験を断念させ、日本の平和と安全を守るため」、そして真の狙いは北朝鮮を六カ国協議に戻すことである。つまり成果は「北朝鮮の六カ国協議復帰」の実現であり、「小沢一郎の渾身の説得によって金正日が六者協議復帰を決断すること」である。事前に水面下で交渉ができればよいが、できていなくても、恐らく小沢一郎が訪朝して会談が実現すれば、金正日はその約束を与えて公式報道させるだろう。金正日は追い詰められている。米国か日本から特使が来る「大義名分」の機会を待っているのだ。小沢一郎は平和の使者となり、北朝鮮の六カ国協議復帰の立役者となり、一気に世界のマスコミがスポットライトを浴びせるヒーローになる。六カ国協議復帰の確約と共に、金正日の米国政府へのメッセージ(親書)も取って来るのだ。そして、そのメッセージを携えて、ワシントンに飛ぶのである。

さすがである。
日本広しといえど、これほど大胆な提言ができるブロガーがthessalonike4氏以外にいるだろうか。いやいない(反語)。
……と、ひたすら賛嘆しつつこの記事を終わりたいのだが、二回続けて引用だけのエントリではあまりにも手抜きなのでもう少し続けよう。

65年ほど昔、「平和と安全を守るため」「渾身の説得」で敵対国の指導者を説き伏せ「世界のマスコミがスポットライトを浴びせるヒーロー」たらんとした男がいた。
「我が闘争」の口述筆記者であり国家社会主義ドイツ労働者党のNo.2、その名はルドルフ・ヘス。

ルドルフ・ヘス - Wikipedia
1941年5月10日独ソ戦の開始直前にヘスはイギリスに向けて驚異的な単独飛行を行う。既にバトル・オブ・ブリテンはドイツの失敗に終わり、防空網を突破したことも奇跡的だったが、飛行はヒトラーに非常な驚愕をもたらし、ヒトラーは「おお神よ!ヘスが英国へ飛んだ!」と一人叫んだと言われる。目的はイギリスとの停戦交渉であった。ヘスは旧知のハミルトン公爵が住むスコットランドの居城に飛び、公爵を介して独力で独英単独講和をまとめようとしたのだった。無論そのような提案が受け入れられるはずはなく、相手にされなかったヘスはロンドン塔に拘留されることになる。ドイツの公式発表では英国への飛行は精神を病んだヘスの独断とされ、解任されたヘスの代わりにマルティン・ボルマンが指名された。事実ヘスは鬱病を病んでおり、拘留中に自殺を図っている。ちなみに、ヘスは最後にロンドン塔に幽閉された人物である。

知性と教養あふれるthessalonike4氏がヘスのことを知らないはずはないので、記事中で触れなかったのは少々不思議だ。
さらに不思議なのは、力しか信じない金正日が、権力を持たぬ野党党首でしかない小沢一郎の言葉を聞き入れると断言していることである。
たしかに小沢氏は90年に土井たか子・社会党委員長とともに訪朝し第十八富士山丸の乗組員を取り返してきた実績はある。だがあのとき小沢氏は自民党の「豪腕」幹事長であり次期総理と目されていた。もし野党党首の土井氏が一人で訪朝していたら鼻であしらわれたろう。
94年の核危機のとき訪朝し「米朝枠組み合意」への道筋をつけたのはカーター元大統領である。もちろんカーター氏が勝手に行ったわけではなくクリントン大統領の特使として派遣されている。アメリカ政府が完全なエンドースメントを与えていたからこそ金日成は信頼に足る特使として認めたのだ。想像するだけ馬鹿馬鹿しいが、もし(当時野党だった)米共和党の議員がヒーロー気取りで勝手に平壌を訪問してもピエロにしかならない。

小沢一郎と民主党が平壌訪問を発表したとき、日本中のマスコミはそれを叩くだろうし、非難攻撃の集中砲火を受けるだろうし、民主党の支持率は瞬間的に5%に下がるかも知れない。だが、構わない。金正日への説得が失敗して、六者協議復帰の確約が取れないまま帰国したときは、潔く責任をとって民主党代表の座を降りればよく、議員辞職して水沢の故郷で静養すればよいのである。隠居すればいい。これは民主党が自民党に外交戦略で勝つための賭けである。北朝鮮問題で国民の支持を得て、さらに問題を平和解決するための政治家の賭けである。虎穴に入らずんば虎児を得ず。このまま北朝鮮外交政策で座したままでいれば、主導権は安倍自民党に握られたまま、世論はマスコミに扇動されて戦争論一色になり、選挙のたびに北朝鮮問題で民主党は負け続ける。黙っていたら民主党に勝ち目はない。安倍外交を批判して国民を説得できる切り口がない。意を決して野党外交の冒険に動くほかないのだ。リスキーである。だが、政治家ならリスクを取れ。

なんと恥知らずで無責任なスタンドプレー礼賛だろう。
「参院選に勝つ」ために国際協調を無視し成功の可能性の多寡を考えず平壌に特攻しろとは、牟田口中将に匹敵する見事な敢闘精神である。
だが、構わない。金正日への説得が失敗して、六者協議復帰の確約が取れないまま帰国したときは、潔く責任をとって民主党代表の座を降りればよく、議員辞職して水沢の故郷で静養すればよいのである。隠居すればいい。

小沢氏が民主党代表を降りようと議員辞職しようと、それで国民への責任が取れるはずもない。そもそも野党は国民から外交を担う責任を任されていないのであって、勝手にしゃしゃり出て失敗したら「辞めて責任を取る」などとはちゃんちゃらおかしい。もしthessalonike4氏の構想が(ありえないが)実現して失敗したら、そのときは民主党は解党の憂き目に会い、小沢氏は軽薄さと愚かさの象徴として日本の政治史にその名を刻むことになる。

いまさら言うことでもないが、thessalonike4氏は本当にスタンドプレーが好きだ。いや、スタンドプレー以外興味ないのかもしれない。華々しく始めたSTOP THE KOIZUMI現状を見ればそれは誰の目にも明らかだ。
私のようにthessalonike4氏の奇抜な記事を楽しみにしている読者は華麗なスタンドプレー(珍プレー)に大喜びするだけだが、真面目に政治に関わろうとする人たちは間違っても真に受けないでほしいと心から願う。

コメント (13)   この記事についてブログを書く
« 口にしてはいけない規範 | トップ | ご出版おめでとうございます »
最近の画像もっと見る

13 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (古川)
2006-10-25 15:21:04
thessalonike4氏が、北朝鮮の「核実験」は偽装だと一貫して主張しているのが気になります。

核実験を認めると何か都合の悪いことでもあるんでしょうか。
ひさびさの快作 (松岡美樹)
2006-10-25 15:44:17
きましたねえ。堪能しました。ストップ・ザ・なんとかはもう玄倉川さんのブログでしか読んでないので(笑)、レポートのおかげでたまの大作を見逃さずにすみます。ありがたいことです。
Unknown (Unknown)
2006-10-25 21:28:55
最近真剣に思うのですが、

本当にテサロニケ氏は息の長いネタではないんでしょうか。
ああ偉大なり (玄倉川)
2006-10-26 01:21:36
>古川さん

指導者同志と共和国人民の偉大なる成果を否定するとはまことにけしからんことです。

世に倦んでいる暇があったら金日成全集を学習すべきです!



>松岡美樹さん

こういう超現実的な主張を大真面目に語ってくださるのが彼の人の魅力であります。

余人を持って代えがたい真に偉大なブロガーですね!



>Unknownさん

ネタ子を起こすな、なーんちゃって!





…どうもすみません。
こちらでははじめまして。 (きこり)
2006-10-27 02:47:09
すると、ただの野党の党首ではなく、もし絶大な人気を誇った前首相が平壌訪問をやろうとしたのならば、玄倉川さんはどのような判断を下されるのでしょうか?非常に興味があります。
>きこりさん (権兵衛)
2006-10-27 06:37:32
玄倉川さんは、「小沢氏の訪朝」について、「ありえないし、そもそも意味が無い」という判断をしているようです。それが小泉氏になっても同じでしょう。ただし「意味が無い」の中身は全く正反対ですが(小沢氏の場合は引き受けるべき職責がなく、小泉氏の場合はそもそもやる必要がない)。

そもそも、玄倉川さんの論評はthessalonike4氏へと向けられたもので、小沢氏に対しては別に批判しているわけでもなし。



横から失礼かとは思いましたが、どうも論点がズレているようなので、気になってしゃしゃり出てしまいました。ご容赦を。
Unknown (玄倉川)
2006-10-27 18:44:16
>きこりさん

小泉さんが安倍総理の命を受けて行くのであれば、もちろん何の問題もありません。

テサ氏が小沢氏に勧めているような身勝手なスタンドプレーは誰であろうと馬鹿げています。



>権兵衛さん

ありがとうございます。私が言いたかったのはまさにそういうことです。
Unknown (きこり)
2006-10-30 02:43:43
いえ、「身勝手なスタンドプレー」を薦める意見に反対なのは私も同じです。ただ「効果が無い」と言い切れるかというと、そんな事はないと思います。テサロニケ氏のような思想の人間にとっては特に(反日的という意味においては)。まあ実現すればの話なんですけど。



それはさておき、私が聞きたかったのはテサロニケ氏や小沢についてではなく、むしろカーター氏が道筋を付けた「米朝枠組み合意」への批評についてなのです。言ってみれば、これは北朝鮮に餌を与えて核開発を止めさせようとして大失敗した例なわけですね。国家最高権力者の意を受けたカーター氏が融和外交を行なった結果、とうとう北朝鮮が核を持ってしまったわけです。この事をどう判断されていますか?そして、小泉前首相が安倍総理から北朝鮮特使の任を受け、同じような宥和政策を行なった場合、どういった評価を下しますか?という質問をしたかったのです。

もしくは米民主党が主張する、ブッシュ政権の圧力が核を持たせてしまった、というお答えでも構わないのですが。
Unknown (玄倉川)
2006-10-30 19:38:33
きこりさんこんばんは。

この記事は「北朝鮮問題」を論じたものではありません。

テサ氏(と小沢氏)に興味がないのならどうかお引き取りください。

ご自分で話題を設定したければご自分のブログでどうぞ。
Unknown (きこり)
2006-10-31 00:27:39
ああそうなんだ。カーター氏の外交をろくすっぽ評価も出来ないのに、小沢氏の訪朝を提言するテサ氏を笑えるんだね、へぇ。ま、この質問のトラップに気付かれたようで中々賢明な返答ですな。それじゃあね。またいずれ。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

「世に倦む日日」鑑賞記」カテゴリの最新記事

関連するみんなの記事