玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

「こんにゃくゼリーの形と硬さを政治主導で決定」の怪

2010年10月06日 | 政治・外交
ネットの一部でおかしなニュースが話題になっている。
だが、このニュースはそのまま鵜呑みにできるものだろうか?

NEWSポストセブン|仙谷氏「こんにゃくゼリーの形と硬さ」を政治主導で決定へ
 尖閣諸島問題で境地に立たされている仙谷由人官房長官だが、失地回復のつもりなのか、この重大局面に奇妙な“政治主導”を見せている。9月27日、政府は「こんにゃくゼリーの形と硬さ」の基準を政治主導で決める方針を打ち出したのである。

 こんにゃくゼリー問題は、仙谷氏の数少ない政治実績である。自民党政権時代に野党としてこの問題を取り上げ、販売禁止を申し入れるなど、“戦う政治家”ぶりを見せた。

 官房長官になると、社会党出身の福嶋浩彦氏を消費者庁長官を抜擢し、こんにゃくゼリー規制を検討させた。もっとも、すでに業界の自主規制により、一昨年から事故は起きていないため、庁内では規制に慎重論も多かった。それを押し切ってやろうというのだから、なるほど政治主導である。

 菅政権の実態は、「外交は検察が決める。尻ぬぐいは小沢にやらせる。こんにゃくゼリーは俺たちが決める」という体たらくなのだ。

まるで冗談のようなニュースだ。失笑する人が多いのも無理はない。2ちゃんねるはてなブックマークでも「学級委員かよ」とか「三谷幸喜のドラマネタかと思った」とか笑いものにされている。ほかにも多くのブログやmixiやtwitter記事で叩かれている。確かにおかしなニュースで、仙谷氏が嘲笑されるのは当然かもしれない。
…だが何か変だ。どうもひっかかる。
いや、おかしいことはおかしいのだが、笑えるというより全体の構図が怪しくて気持が悪い。これが事実なのか、本当のニュースなのかどうか確信が持てないのだ。とりあえずGoogleのニュース検索で「こんにゃくゼリー」を調べると9月27日の消費者庁発表による記事が2件見つかった。

こんにゃくゼリーなどによる窒息事故防止の指標作成へ - Ameba News [アメーバニュース]
 消費者庁は9月27日、幼児やお年寄りの窒息事故が数件発生した、こんにゃく入りゼリーを含む食品等に関して、具体的な知見・データを得るための調査研究を開始したことを発表した。研究会のメンバーは口腔衛生学や安全工学などの大学教授ら専門家7名によって構成されるが、初会合にはマンナンライフ(群馬県)や、UHA味覚糖(大阪市)などのメーカー側の担当者も参加した。

 消費者庁はすでに「食品SOS対応プロジェクト報告」を発表しているが、今回はこの報告を踏まえたうえで、食品の形状、硬さなどの食品側のリスク要因を詳細に分析し、年内には形状などの一定の「指標」を定めることを目標としている。

 これらの発表に対してネット上では、「こんにゃくよりお餅やご飯で窒息する人のほうが多いのに、それらに対して規制はないのかな?」「誤飲で窒息の原因になってる食品のリストと件数をあげるべきだね。これ」「いっそこんにゃく売り場で売ったらいい」「指標て本当に作れるもんなのか?」などのコメントが寄せられている。

こんにゃくゼリーの安全性、指標作成へ研究会  :日本経済新聞
 ミニカップ入りこんにゃくゼリーによる窒息事故対策を検討している消費者庁は27日、ゼリーの形状や大きさなど、具体的な安全基準となる指標を作成するため、専門家らによる研究会を立ち上げた。指標は年内めどに作成する方針だが、法的拘束力がない上にメーカー側の反発も予想され、実効性のある指標になるか疑問視する声もある。

 研究会は医学や食品安全などの専門家7人で構成。この日の初会合にはマンナンライフ(群馬県)、UHA味覚糖(大阪市)などメーカー側の担当者も参加した。10~11月にゼリーの形状や大きさ、硬さなどを分析、実験し、窒息事故の危険性を改めて検証。12月にもガイドラインのような安全指標を具体的な数値を示した上で作成する。

 消費者庁は今年3月から「食品SOSプロジェクト」を立ち上げ、こんにゃくゼリーの法規制も含めた対策を検討していたが、7月に「科学的データが十分でない」として結論を先送りしていた。

 福嶋浩彦消費者庁長官は研究会の冒頭、「今こんにゃくゼリーの事故が起こってしまい、後追いで消費者庁が対策を取ることになれば最も不幸だ」として、対策を急ぐ考えを示した。

アメーバニュースと日経の二つの記事が「消費者庁がこんにゃくゼリーの安全基準の指標を作成するため専門家による研究会を作った」ことを伝えている。消費者庁のウェブサイトには「こんにゃく入りゼリー等の物性・形状等改善に関する研究会メンバーの委嘱について」というニュースリリース(PDF)が載っているから事実に間違いない。
だが、「仙谷官房長官がこんにゃくゼリーの基準を『政治主導』で決める方針を打ち出した」という情報は冒頭に引用した週刊ポストのネット版しか見つからないのだ。ニュース自体も多くの人が失笑したようにおかしい、というよりおかしすぎる。なんだか怪しい。信憑性が疑われる。
矛盾する情報を説明する方法は二つある。
ひとつは、消費者庁は「専門家による調査」を決めたのに仙谷官房長官が勝手に「政治主導」を宣言した場合。だが、それなら恥をかかされた福嶋消費者庁長官が異議を唱え、ないがしろにされた専門家が怒り、仙谷氏の理不尽な口出しがもっと大きく報道されそうなものだ。
もうひとつは、「こんにゃくゼリーの形と硬さを政治主導で決める」というニュース自体が捏造の場合。
仙谷氏を引きずりおろしたい週刊ポストが与太話を流しているのではないか。
最近の週刊ポストの見出しをチェックしてみた。小沢氏を応援し菅総理・仙谷官房長官を批判する記事がずらりと並んでいる。

週刊ポストの見出し一覧 - エキサイトニュース

 「小沢嫌い」ここに極まれり!-大新聞も官邸も常軌を逸している (2010年9月13日発売)
 小沢VS菅「街頭演説」を誌上再録-政策論争をといいながらメディアが割愛 (2010年9月13日発売)
 「ネットという鏡に暴かれたマスコミ偏向報道」 (2010年9月13日発売)
 ひきこもり仙ちゃんが愛でるiPadと幹事長-今週の官房長官 (2010年9月13日発売)
 大メディアが黙殺した9月5日の「オザワ・コール」 (2010年9月13日発売)
 負けて始まる「小沢支配」、「菅報復合体」の誕生 (2010年9月18日発売)
 「小沢を殺せ」大謀略で総理の椅子は泥にまみれた (2010年9月18日発売)
 実は市川房枝に見限られていた菅直人 (2010年9月18日発売)
 望まなくても「闇将軍」になる小沢一郎と日本の<悲劇> (2010年9月18日発売)
 菅首相の呼称が「弁理士総理」に格下げされた!-今週の仙谷長官 (2010年9月18日発売)
 アメリカに叩き潰された小沢一郎-代表選敗北は2月2日に決まっていた (2010年9月18日発売)
 役人いいなり菅政権、これじゃ「無差別連続<増税>」だ(1) (2010年9月27日発売)
 役人いいなり菅政権、これじゃ「無差別連続<増税>」だ(2) (2010年9月27日発売)
 役人いいなり菅政権、これじゃ「無差別連続<増税>」だ(3) (2010年9月27日発売)
 大新聞「世論調査」の支離滅裂-内閣支持率60%超って・・・? (2010年9月27日発売)
 「仙谷内閣」と左翼な仲間たちの「すき焼きパーティ」の一夜 (2010年9月27日発売)
 アメリカに見捨てられた仙谷・前原のポチ外交-平和ボケ国家の現実だ (2010年10月4日発売)
 民主党代表選で露呈した、この国を担う政治家&マスコミの貧弱すぎる知性 (2010年10月4日発売)


今回の「仙谷官房長官が『こんにゃくゼリーの基準を政治主導で決める』方針を決定した」という記事も、小沢氏を熱烈に応援する週刊ポストによる菅政権バッシングの一環であることは間違いなさそうだ。私自身も菅内閣・民主党政権を支持していないし、はっきり言って仙谷氏は嫌いなタイプの政治家だが、だからといって真偽不明の週刊誌ネタではしゃぐような真似はしたくない。それこそいい笑いものである。