玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

「愚民」とか「B層」とか

2009年08月31日 | 政治・外交
台風が接近するなかで行われた選挙も無事に終了した。まずはめでたい。
永田町には一足先に巨大台風が上陸した。民主党308議席、自民党119議席。まさかの結果というべきかマスコミの予測どおりというべきか。

当選した候補者の方々、おめでとうございます。日本のためにがんばってください。
落選した広報車の方々、おつかれさまでした。
民主党と支持者のみなさん、悲願の政権交代がかなってさぞうれしいことでしょう。お祝い申し上げます。
自民党と支持者のみなさん、選挙の勝敗は政治家の倣い、いさぎよく敗北を認めて捲土重来をめざしましょう。「勝負は時の運」とも申しますが、運や「マスコミのせい」だけでは説明できない有権者の怒りや不満を肌で感じたことと思います。石破茂氏のように、自民党政治の何が間違っていたのか、何が足りなかったのか真面目に反省してください。

前の選挙で自分が何を言っていたのか、2005年9月のログを見てみたけれどとりあえず赤面するようなことは書いてなかったので安心した。
河村たかしとかタイゾー君とか麻生太郎とか、私が「面白いキャラクターだな、応援したいな」と思った政治家はどうも世間の受けが悪いようだ。日本人はあまりにも真面目すぎる、このままでは日本はつまらない国になってしまう… などと「社会が悪い(自分は賢い)」系の慨嘆をしてもしょうがないので、「自分の好みが偏っているか応援が足りなかったのだろう」と思って無理やり自分を納得させる。

明日は投票日 - 玄倉川の岸辺
選挙の結果がどうなるかは分からないが、有権者の多くが望んだものなのだから民主主義国における「正しい」選択なのであり、それが自分の意に沿わないものだとしても天命として受け入れるしかない。すでに投票前から世論調査を見て有権者をバカ呼ばわりしているコラムニストやら「有識者」がいるが、烏滸の沙汰である。
そんなことに費やすエネルギーがあれば自分たちの敗因を分析して次回選挙の勝利のために役立てればいいのに。
いや、そもそも彼らはまだ負けてさえいないわけだが。

4年前に書いたことだが今回もそのまま使えそうだ。
私は選挙で負けた側が有権者を馬鹿にしたり罵倒したりするのが嫌いで、なんとも卑怯で恥知らずな態度だと思っている。どうやら前回選挙ではその手の負け惜しみが多かったらしい。特にアンチ小泉・自民党の人たちが「B層」なる言葉を「愚民」の言い換えとして使う例が目立った。実にくだらないことである。
思い切りおおざっぱな言い方をすれば、有権者の半分は「平均以下」に決まっている。知能や収入だけでなく、背の高さとか体重とか容姿とか学歴とか読書量とか運動能力とかどんな指標を持ってきても、たいていの場合はおおむね正規分布に沿って「半分は平均以下」になると思っておけば間違いない。
政治にマニアックな興味を持っていろんなことを言いたがる人は「自分は世の中のことが(政治家より・一般の有権者より)よくわかっている、ひとかどのものであるぞ」という意識があるはずだ。そういう人が自分の意に沿わない投票行動をした人を見るとバカみたいに思えるのは仕方がない。なにしろ政敵の支持者の半分は「平均以下」なのだから、バカにする相手には事欠かない。「あいつらはバカだ(俺は利口だ)」と吹聴したくなるのもわからなくはない。
だがそれは「地球といいながら表面の半分以上は海じゃないか!」と嘆いてみせるのとかわらない。地球表面積の70%が海であるのも、「有権者の半分は平均以下」なのも、もともとそういうものなのである。「金持ちにも貧乏人にも一票、利口者にもバカにも一票」というのが普通選挙の本質だ。「愚民」やら「B層」を諸悪の根源と決め付けて嘲笑しても何も始まらない。