牛コラム

肥育牛と美味しい牛肉のはなし

素牛選定は自らの体験を活かして

2009-06-28 19:14:56 | 素牛



種雄牛毎の能力をシビアに知るには、共進会だけではなく、全ての産子の有効なデータを本にした集計こそが信頼性は高い。
これらのデータは日本食肉格付協会や家畜改良センターなどが集計しているが、全ての格付結果がデータ化されていないことと、未だに格付員のいないセンターもあるために、100%信頼するには及んでいない。
しかしながら、畑の作物ではないが、栽培する土地や人や気象条件などによって、その成果は千差万別である。
同様に肥育牛の結果も、3代祖まで全く同じ交配の素牛であっても、同じ肥育結果にはならないのが通例である。
それは、先ず父・祖父・祖祖父は同じでも、母・祖母・祖祖母はそれぞれ異なるため、その都度遺伝子の伝承は同じではなく、交配による相性の相違によっても、遺伝子の伝承は様々に異なるからである。
また、遺伝子は似通っていても、子牛生産現場や、肥育場が異なることから、遺伝的な能力を全て同様に発揮するのは至難の業である。
その辺の条件を熟知したつもりでも、なかなか成就できないのが、肥育なのである。
以前にも述べたが、全ての素牛にその飼養条件を全くのコピー状態で行えば、その条件は整うが、増体能力が異なる故、なかなかコピーという訳にはいかない。
1頭1頭牛の顔を見ながら熟練した管理が成果を上げることになる。
だから肥育関係者は、個々の遺伝能力を自らの肥育手法により、如何に引き出そうかと懸命なのである。
そこで、肥育家らは、身近な情報でより確率の高い素牛情報として、過去に自らが導入した素牛の成果から、優れた生産者や優れた母牛を把握して、それらを意識した導入により成果を上げようと努力するのである。
優れた子牛生産者は確かに存在していて、その仔牛の飼い方と肥育場との相性も無関係ではなく、その相性効果も無視できないのである。
だから、購買者が同じ生産者の子牛を優先的に競り落とすなどは、それらの経験からメリットありと踏んでいるためである。
これまで、全国和牛登録協会では、優秀繁殖雌牛として多産牛を表彰してきた(鹿児島県はこれには応じていない)。
これには、多産することが強健で高い繁殖能力を有し、その結果経営コストの低減に繋がるなどの考慮があったからであろう。
しかしながら、15産以上が優れているかと言えば、その産子の肥育成績は、母親自身が生後15年以上、むしろ17年以上を経過していることから、当時の経済形質が現在にも通じているかと言えば、産次別の肥育成績では、8産次以上は右下がりであることから見ても、時代のニーズにマッチしていないことがわかる。
同じように、表彰するのであれば、提案したいことがある。
それは、その去勢牛産子を肥育した場合、その全てが5等級であった母牛であったり、生産した去勢仔牛全体の90%以上が5等級である生産者なら表彰に値すると考えている。
その様なことを実現することにより、繁殖牛の登録検査時に適用される審査標準の改正案などのヒントに繋がるのではないだろうか。


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