先週末。
いつものJ君とJ君の彼女との3人で、足利へ歌舞伎を観に行く道すがら、国道293号線そばの出流原湧水池に寄った。
僕は、毎回この国道を通るときに遠望できる、山の中腹にある懸造のお堂の正体が気になっていた。
懸造(かけづくり)という建築形式とは、山や崖の斜面に張り出して建物を建てる工法。懸とは、崖でもあるのだろう。
そのお堂が、湧水池脇の石段をあがったところにあるのだ。
登り口
「弁才天」という扁額の掛けられた楼門をくぐると、「磯山の大蛇」なる碑があった。
由緒を確認してみると、どうやらここは、磯山弁財天というらしい。
佐野七福神のひとつに数えられるようだ。
梅雨のこの時期、木洩れ日さえもさえぎるくらいに生い茂った草木。
見上げると、その間を縫うように現れた真っ赤なお堂がのぞく。
130段の石段を、鐘楼や、銭洗い弁天を横目に、お堂までたどり着く。
創建は天暦2(948)。俵藤太こと、藤原秀郷によるらしい。
現在の建物はもちろん当時のものではないようだけど、何度も塗り替えられた朱塗りの欄干などからは、手入れがされている印象を受けた。
回廊からの眺望は、爽快のひと言。
眼下には、湧水池や豆腐屋の工場がある。 (・・・土産に豆腐を買うのを忘れた。)
ご本尊のご開帳がいつなのか、調べてみるとどうやら去年だった。次回は、その12年後。
弁天様は、蛇神である宇賀神と習合されることもあり、ここには、当の宇賀神も祀られている。
ほかのサイトで見つけたそのお姿は、白蛇の胴体に白髪の翁の頭がのっているもの。ちょっと可愛げのある表情をしている。
栃木県には「宇賀神」という姓があるが、知り合いはたいてい、鹿沼などの県西部に住まいする人が多い気がする。
おそらく、このあたりも含めて、各地で蛇神様信仰があったのだろうと想像する。
参拝をすませ、裏手にまわると、迫り出すような迫力で巨石がごろごろとしていた。
というよりも、巨石にはめ込むように、このお堂が建てられたのか。
近づいてみると、大きな岩の間には、深い裂け目があった。
そうか!
この裂け目を覆うように、このお堂は建てられたのだ。
これは、女性の陰部の象徴なのだ。
だから弁天様なのだ!
麓に池があるからではなく、この岩こそが弁天様を祀る所以なのだろうと僕はJ君に力説した。
的中なのか、妄想なのか、僕自身としては風のいたずらのお陰でパンチラを目撃したあとのような気分で石段をくだり、湧水池のほとりへとやってきた。
環境庁指定「日本名水百選」に選ばれるほどの名水。
古生層の石灰岩を地下水が溶解して洞穴がつくられ、そこから毎分6~8立方メートルもの良質の水が湧くらしい。
この池には、水が湧き出てきた所以の昔話があるようで、かつて放送されていたTV番組『まんが日本昔ばなし』でも取り上げられられていた。
番組のアーカイブサイト
動画もみれる → こちら
古いアニメだからなのか、ずいぶんと陰湿な雰囲気だ。
水不足に苦しんでいた百姓を助けた神様は、見目麗しい弁天様ではなく、のっそりとした爺さんだった。
おそらく、この爺さんの正体が宇賀神なのだろう。
昔話はほかにもある。(以下、環境庁HPより文章を拝借)
『朝日長者伝説:
昔このあたりに朝日長者が何不自由なく暮らしていたが、ただ一つ子宝に恵まれかった。
そこで長者夫婦が、出流原弁天に子授けの願を掛けると、美しい女の子が生まれ、鶴姫と名付け、大事に育てたという。
姫が18歳の時、山に遊びに入ったまま不帰の人となった。
掌中の玉を失った長者夫婦にある時神が霊示したことは、姫は弁天池の鯉となっており、竜神となって昇天するためには、莫大な財宝がいるとのことであった。
そこで長者は娘のためにと後山に財宝を埋め、宝のありかを詠んだ歌も残している。 』
その歌とは、「朝日さす夕日輝く木の下に、うるし千ばい黄金億々」
まさか、その埋蔵金伝説を信じて、これまでにその場所を探し求めようとした人はいないだろうけど。
伝説は、その下地となる出来事がなければ生まれないもの。
もしかしたら、池で溺れた娘の供養に大枚の金をはたいた長者がいたかもしれない。
ならばその大金は、埋められたのではなく、漆を塗り鍍金を施した立派な仏像を拵えて、日当りのよい大木の元にお堂を建てて安置した、という話であってほしいと願う。
駐車場に戻る途中、草むらから顔を出して今にも襲いかからんばかりの大蛇を発見!
蛇に遭遇するとは、吉兆である。
ということは、ここにくれば毎回吉兆に出会える、というわけだ。ありがたし、ありがたし。
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