万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

二つの独裁の区別を-怪しいポピュリズム批判

2018年01月16日 16時31分13秒 | 国際政治
アメリカにおけるトランプ大統領の登場以来、メディア等では盛んにポピュリズム批判が繰り広げられることとなりました。ヒトラー独裁の事例に擬え、国民の鬱積した不満が民主的選挙を通して危険な独裁体制を呼び覚ますとして…。

 ポピュリズム批判が嵩じると、国民の参政権に基づく普通選挙を危険視する民主主義否定論に行き着くのですが、この論理展開こそ、民主主義を否定したい勢力の狙いかもしれません。“最悪なもの”を隠すために、良きものに含まれる欠点を強調して叩くのは、よくある手法であるからです。

 ウィンストン・チャーチルも「民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けば…」と評したように、民主主義には、様々な欠点が指摘されてきました。普通選挙の実施のみを以って国民に資する完璧なる統治制度が実現するはずもなく、民主主義とは、謂わば、永遠に改良を要する未完の制度なのです。ですから、独裁体制の成立の踏み台となるという、一つの欠点を論って民主主義そのものを否定することはできないのですが、民主主義を否定したい勢力に取りましては、格好の攻撃材料となるのです。また、仮に、ポピュリズムを理由として国民の政治的不満を選挙結果に反映させてはならないとしますと、民主主義の価値そのものを否定しているに等しくなります。

 それでは、この文脈において、“最悪なもの”とは、一体、何なのでしょうか。今日、全世界を見渡しますと、中国や北朝鮮など、国民と分離した形態の独裁体制が散見されます。特に経済大国にのし上がった中国では、共産党一党独裁から習近平国家主席による個人独裁体制へと移行しつつあります。何れの国でも、徹底した国民監視体制と情報統制の下で国民は管理され、独裁者やその政策に不満を抱く国民には過酷な弾圧の運命が待ち受けています。最も忌まわしい体制とは、国民に参政権が認められておらず、自己保身と私欲のために独裁者があらゆる権力を振るう体制に他ならないのです。

 こうした非民主的国家は、各国のメディアへの浸透を通してソフトパワーの発揮をも試みており、民主主義の欠点を殊更にアピールすることで民主主義を葬り去ろうとしています。独裁体制には、確かに民主的制度を介して成立する形態もありますが、革命や反乱といった暴力によって成立する形態もあるのです。そして、後者のタイプの方が、国民との繋がりを欠き、その意思を反映する経路が欠如している点において、過酷な支配体制となり易いと言うこともできます。独裁については、両者を明確に峻別しませんと、巧妙なレトリックによって独裁批判が民主主義批判と一体化してしまうリスクがあるのではないかと思うのです。

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北朝鮮のオリンピック参加カードは“ババ”では?

2018年01月15日 12時35分36秒 | 国際政治
平昌五輪への芸術団派遣を協議 韓国と北朝鮮
  先日、朝鮮半島の板門店で再開された南北対話における主要議題は、来月に開催が予定されている北朝鮮の平昌オリンピック参加問題であったとされています。膠着状態にある北朝鮮の非核化問題に対する解決の糸口となるとの期待もありますが、その後の流れを見ておりますと、その光景は喜劇的ですらあります。

 南北両国とも、北朝鮮のオリンピック参加こそ、さも重大な国際問題化のように扱っています。とりわけ、韓国の文在寅大統領の熱意は並々ならず、この結果、北朝鮮側に足元を見られ、外交カードを握られる結果を招いています。その一方で、リップサービスとしては北朝鮮の平昌オリンピック参加に歓迎の意を表しながら、その実、同国の参加を心底から祝福している国は殆どありません。むしろ、同国の参加が平昌オリンピックに政治的意味合いを持たせるとしますと、オリンピックの政治利用ともなりますし、ルールに基づいて正々堂々と競技するスポーツマンシップを強く求めるオリンピックの精神に鑑みましても、無法国家である北朝鮮チームの参加は、同大会に暗い影を落としているのです。

北朝鮮が同オリンピックへの不参加を表明しても、韓国以外の諸国は、“どうぞ、お好きなように”と応じるのみでしょう。仮に、北朝鮮の参加に何らかのメリットがあるとしますと、それは、少なくとも、同国の選手団が韓国領域内に派遣されている期間は、北朝鮮側からの同国に対する奇襲的な軍事行動はあり得ない、ということぐらいかもしれません(もっとも、ロシアは、北京オリンピックの開催日にジョージアへの侵攻を決行した…)。

 かくして、誰も歓迎しない北朝鮮の平昌オリンピック参加なのですが、南北両国だけは、別世界の住民であるかのように、平昌オリンピック参加カードをめぐり“真剣勝負”を繰り広げています。しかしながら、このカードは、「ババ抜き」ゲームの“ババ”なのかもしれません。誰もがババを引かないように身構える中、韓国だけが、嬉々としてこのカードを引こうとしているのです。

 仮に、このカードを韓国が引いてしまいますと、平昌オリンピックは、“平和の祭典”としての意義が脇に押しやられ、“民族の祭典”と化すかもしれません。北朝鮮側は、既に“美女軍団”と称される選りすぐりの若い女性達で構成される芸術団の派遣を凡そ固めているようですが(1月16日の報道では、北朝鮮側からの芸術団の派遣が合意されたらしい…)、競技種目ではメダルの獲得は難しくても、開催国である韓国との協力の下、“アリラン祭”を髣髴させるような全体主義的パフォーマンスを演出することでしょう。南北両国は、オリンピックを絶好の国威発揚の場とするかもしれないのです(オリンピック史において、選手や役員団ならぬ“国家選抜女性応援団”を派遣した国は前代未聞では?)。そして、南北融和の過剰演出は、その後、米中両国の狭間にあって、韓国の国際的な立場をさらに苦しいものとすることでしょう。

南北両国による奇妙な「ババ抜き」ゲームは、両国のみの自己満足に過ぎず(韓国は、ババを引きたことに気が付いていない…)、肝心の北朝鮮の核・ミサイル問題の解決にとりましては、攪乱要因にしかならないのではないかと思うのです(もしくは、両国の共同作戦?)。

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中国が全世界に対して“経済制裁”を発動するリスク

2018年01月14日 14時39分23秒 | 国際政治
台湾を「国扱い」、外資企業が次々謝罪 中国で批判受け
 平和に対する重大な脅威と化した北朝鮮の核・ミサイル問題に対し、国際社会は、その放棄を迫る手段として、国連安保理において経済制裁の実施を決定しました。この背景には、経済制裁を非軍事的な政治的手段とする共通認識があります。ところが、今日、経済大国化した中国は、‘経済制裁’という手段が利己的目的に転用可能であるという現実を人類に突き付けています。

 経済制裁は、古今東西、兵糧攻めや経済封鎖が軍事力の行使に代替する効果的な戦法として使われてきたことから、決して現代に固有の現象ではありません。この戦法は、経済力に優る側、あるいは、実力行使によって封鎖を可能とする側に勝利をもたらしてきました。しかしながら、この勝利条件が揃わない場合には、制裁を仕掛けた側が敗北するケースもあり、19世紀にあってナポレオン体制が崩壊した原因は、ナポレオンの対英大陸封鎖とイギリス側の逆封鎖との力関係において、後者が優位した点に求めることができます。北朝鮮問題については、同国の経済規模が極めて低いレベルにあり、かつ、一先ずは制裁に関する国際包囲網が構築されていますので、一定の効果を期待することができます。

 その一方で、中国が、“経済制裁”を政治目的のために使用した場合、他の諸国はどのような事態に直面するのでしょうか。報道に拠りますと、中国の習政権は、「中国で商売する外国企業は中国の主権と領土、人民の民族感情を尊重すべきだ」とする立場から、台湾、香港、チベットなどを国扱いした外資系企業を謝罪に追い込んでいるそうです。言い換えますと、中国の政治的主張に同調しない限り、外資系企業は13億の中国市場ではビジネスをさせない、即ち、経済制裁を科す明言しているのです。

 アメリカのマリオット・グループやデルタ航空をはじめヨーロッパの有名ブランド各社は、早々に中国に対して膝を折っていますが、安易な謝罪は、この動きをさらにエスカレートさせる、あるいは、他の問題領域にも拡大させる結果をもたらすかもしれません。経済制裁の効果に味をしめた中国が、この手段を抑制的に用いるとは思えないからです。全世界の企業は常に中国の顔色を窺い、その政治的主張や要求を受け入れざるを得なくなりましょう。たとえ、それが侵略や非人道的行為といった国際法上の違法行為の追認であったとしても…。日本企業もまた、尖閣諸島の領有権をめぐり、同地を中国領と認めない限り中国市場から締め出されるかもしれないのです。

 経済制裁の勝利条件とは、上述したように、経済力による優位と実行手段の確保にあります。仮に中国が、今後とも経済制裁を以って“中国の夢”、即ち、自国中心の国際位階秩序の実現を追求するならば、他の諸国は、逆封鎖を試みる必要に迫られることとなりましょう。世界第二位の経済大国ではあれ、現時点であれば、逆封鎖側がこの“封鎖合戦”を制する可能性は高いのではないかと思うのです。

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中国潜水艦航行事件-対中政策における政経分離は無理では?

2018年01月13日 12時06分40秒 | 国際政治
尖閣周辺を航行、中国潜水艦は原潜の可能性
 昨年末頃から、与党幹事長等による訪中の成果なのか、日本国政府の対中姿勢に緩和傾向が見られるようになりました。安倍首相も、一帯一路構想への協力に言及するなど日中関係改善に意欲を見せ始めたのですが、今年に入り、俄かにこの改善ムードに冷や水を浴びせる事件が発生しました。

報道に拠れば、今月11日に尖閣諸島沖の接続水域を航行していた潜水艦は、公海での浮上により中国籍であることが判明したそうです。原子力潜水艦ではないかとする憶測もあり、中国が、依然として軍事力を以って日本国から尖閣諸島を奪う計画を保持し続けていることが窺えます。太平洋への進出は“中国の夢”の実現には不可欠であり、地政学的にそれを阻む位置にある日本国は、中国の軍事戦略上、何としても攻略すべき存在なのでしょう。

 中国が、政教一致のイデオロギーの下で百年単位の長期的な視野から対日政策を練り、目的に向かって着々とスケジュールを遂行してきたのに対して、日本国側の対中政策の基本原則は、政経分離であったように思えます。喩え軍事や政治において対立していたとしても、両国の敵対関係は経済分野へは波及しないとする楽観論です。しかしながら、この楽観論は今日に至るまで裏切られ続けており、日本国は何度となく煮え湯を飲まされてきたのが現実です。尖閣諸島国有化に際しても、中国国内では激しい日本製品排斥運動が発生しましたし、何よりも、今般の一件は、経済面における関係改善が尖閣諸島に関する中国の対日方針に全く影響を与えないことを如実に示しています。

 しかも、この事件が、昨年10月に開催された中国共産党第十九回全国代表大会の後に発生したことは、極めて重要な意味を持ちます。何故ならば、この大会においてこそ、習近平国家主席が、人民解放軍全軍に対する指揮権を含め、独裁的な権力基盤を固めたとされるからです。大会以前にあっては、人民解放軍の突発的な行動や挑発行為は、同軍の一部部隊や末端による“誤り”として弁解され得る余地がありましたが、習体制が確立した今日にあっては、この説明は最早通用しません(ただし、仮に、今般の一件が一部の人民解放軍による独自行動であれば、それは、習体制が早くも綻びを見せている証拠となりましょう)。

 中国の国家体制が政治目的を優先する政経一致体制である点を踏まえますと、日本国は、早晩、対中政策における政経分離論の見直しを迫られるかもしれません。軍事力こそ、中国にとりましては経済面における脅迫手段ともなり得るのであり、この点を見誤りますと、“敵に塩を送る”ことになりかねないと思うのです。

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問われる一帯一路協力の道義的責任-中国の帝国主義を許すのか?

2018年01月12日 16時21分59秒 | 国際政治
経済協力強化で一致=中国主席、仏大統領と会談
 中国の習近平国家主席が唱える一帯一路構想とは、インフラ建設を介して中国を中心とした広域経済圏をユーラシア大陸全域に構築する構想として知られています。“全ての道はローマに通ず”と同様に、この構想は、中国が交通インフラの起点に位置する点において、まさしく帝国主義的な発想に基づいています。
 
 同構想については、中国を訪問していたフランスのマクロン大統領が参加を表明すると共に、慎重な態度を崩していなかった日本国政府も、案件ごとに吟味をするとの条件付きながら、同構想への協力に言及しています。しかしながら、ローマ帝国が領域全体に交通網を張り巡らせた目的が、周辺諸国の征服事業や征服地の支配体制の維持、即ち、軍隊の迅速な移動であったように、交通インフラの敷設には、古来、軍事戦略上の意図が含まれています。“近代帝国主義”の時代にあっても、インフラ整備と植民地支配は同時並行的に推進されたのです。

 もっとも、広域的な交通網の整備が商業を活発化させたことも歴史的な一面ではあります。帝政初期にあっては、帝国大の交通網は領域内の商人達による自由な商活動にも利用され、ローマ帝国の繁栄を支えると共に、ローマ法における万民法の発展をも促しました。国際法との関連については措くとしても、こうした経済面におけるメリットは、今日でも、中国が、一帯一路構想を対外的に宣伝する際の有力な説得材料です。とは申しますものの、近現代には、特産品交易が主であった古代の商業活動とは異なる側面があることも無視はできません。

 19世紀中葉を頂点とするイギリス、あるいは、東インド会社による世界大の自由貿易体制の構築が、搾取型の植民地支配体制の成立と連動していたことは良く知られるところです。また、80年代以降にあっては、政治的な支配は伴わないものの、自由貿易から市場統合への移行によって、‘もの’のみならず、サービス(製造や開発拠点等を含む…)、資本、人、技術等も自由移動の対象となり、産業の空洞化、富の偏在、並びに移民問題など、それ固有の様々な問題を引き起こしています。そして、とりわけ今日の中国が唱える“グローバリズム”が、共産主義が内包する政治と経済との一体化において、近代植民地主義への回帰を意味するとすれば、同構想への協力は、道義的な問題を突きつけることとなりましょう。中国による帝国主義的植民地支配に手を貸す行為として…。

 しかも、今日の交通インフラの特徴は高速化にありますので、必ずしも建設地を潤すわけではありません。起点と終点の中間にある諸国は、企業のグローバル展開において余程何らかの強みがない限り、“素通り”、もしくは、“置き去り”されないとも限らないからです。ヨーロッパ諸国が一帯一路構想に賛意を示すのは、西方の終着点が同地に定められているからなのでしょう。

 同構想の背後に中国共産党、あるいは、それをもコントロールする国際組織の思惑(マクロン大統領の背景等からロスチャイルド系では…)、即ち、植民地化を含意する世界支配の野望が潜んでいるとしますと、この構想に対する協力には、日本国にあっても多くの人々が良心の痛みを感じることでしょう。非民主的な独裁体制を敷く中国、並びに、その中国が恣意的に便宜を与え、厚遇される国のみを利し、他の諸国を犠牲にする体制の出現が人類を資するとは思えないのです。

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日韓慰安婦合意問題-韓国の重大なる自己矛盾

2018年01月11日 11時58分48秒 | 国際政治
安倍晋三首相、平昌五輪の開会式欠席へ 慰安婦日韓合意めぐる韓国新方針で判断
韓国の文在寅大統領は、一昨年末の日韓慰安婦合意を不服とし、日韓合意に至る経緯を調査する作業部会を設置した上で、合意の破棄や再交渉には踏み込まないまでも、日本国に対して謝罪を求める方針を示したと報じられております。新たな要求の提起は合意違反ですので、この調子では、韓国政府は今後とも同合意を遵守することなく、国際社会においても慰安婦プロパガンダを継続することでしょう。こうした韓国の“蒸し返し”に対し日本国内では反発が広がっておりますが、韓国の日韓慰安婦合意に対する態度には、幾つかの問題点が指摘されます。

 第一の問題点は、国際社会では、合意の遵守は国際法において行動規範とされている点です。国際合意とは、当事国の一方の気まぐれや利己的動機から安易に破棄されますと、国際社会の不安定要因となりますので、今日では、国際法の網がかけられているのです。1969年に慣習国際法を法典化して成立した「条約法条約(条約に関するウィーン条約)」は、文書化された国家間の合意(条約)にのみ適用されますが、日韓合意のような非文書形式の合意であっても、一般的規範としての合意の遵守義務を免れることはできません。因みに、同条約では、錯誤、詐欺、買収、強制といった条約による無効や、後発的履行不能や事情の根本的変化等による条約の終了・運営停止に関する条件を明記しており、日韓慰安婦合意も、常識的にはこの規定に従うべきなのですが、当合意は、何れの条件も満たしていないのです。

 第二に、話し合い解決であった日韓慰安婦合意を蒸し返しながら、文政権は、北朝鮮問題については、軍事力に依らない話し合いによる解決を主張しているという自己矛盾です。話し合い解決とは、双方が合意内容を誠実に遵守してこそ成立する紛争の解決方法です。ところが、当の韓国は、日韓慰安婦合意に限らず、しばしば国際的合意を一方的に破ってきました。自らが合意の一方的違約の前例をまざまざと見せつけながら、交渉による合意こそが唯一の解決手段であると主張しても、説得力に欠けるのではないでしょうか。朝鮮半島の両国とも、常習的な合意違反国であることを考慮しますと、文政権の主張は、いかにも空虚に響くのです。

 およそ紛争の解決手段には、人類の発展過程の時系列上に、力、合意、一般的なルールの三者が存在するとしますと、特に朝鮮半島問題に関しては、南北当事国には後二者における脆弱性、即ち、自発的合意遵守や順法精神の弱さが観察されます。慰安婦合意にせよ、北朝鮮問題にせよ、日本国政府、並びに、国際社会は、両国の国際規範からの逸脱をゆめゆめ許してはならないと思うのです。

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南北“示談”による米韓同盟の行方

2018年01月10日 15時14分20秒 | 国際政治
南北首脳会談の用意=慰安婦「心からの謝罪を」―韓国大統領
 今月9日、朝鮮半島では、2年ぶりとされる南北両国の閣僚による会談が開かれました。新北派で知られる文在寅韓国大統領のたっての願いが叶えられたわけですが、南北の歩み寄りは、今後の東アジア情勢にどのような影響を与えるのでしょうか。

 当初、同南北対話では、議題は、平昌オリンピック問題のみに絞られると報じられていました。しかしながら、議題限定化の予測に反し、韓国側からは、目下の懸案である核・ミサイル問題も提起されたようです。この非核化の提案に対して北朝鮮側は無視を決め込んだものの、平昌オリンピックへの北朝鮮の参加と協力、並びに、朝鮮半島の緊張緩和や軍当局レベルでの会談等については合意に達し、一定の成果が強調されています。

 今後の展望として、文大統領は、南北首脳会談の実現まで視野に入れているそうですが、同大統領が対北融和政策の行き着く先をどのように描いているのか、疑問なところです。仮に、南北統一であれ、“二国共存”の相互容認であれ、それが南北間の和解、即ち、朝鮮戦争の終結(講和)を意味するならば、アメリカとの同盟は、最早、必要ではなくなるからです。

 朝鮮戦争とは、北朝鮮による奇襲的な韓国侵攻を国連安保理が“侵略”と認定し、米軍を中心とした国連軍が侵略国である北朝鮮に対し、武力を以って排除しようとした戦争です。北朝鮮は、平和を破壊する加害国として位置付けられ、国連軍は、多大なる犠牲を払って被害国である韓国を軍事力を以って救済したのです。ところが、南北両当事国が和解するとなりますと、事実上、加害国と被害国とが“示談”したこととなります。そして、米軍をはじめ、“平和の敵”と戦うために軍隊を派遣していた諸国は梯子を外され、犯罪国家である北朝鮮から被害国である韓国を守るという意味での“世界の警察官”の役割も宙に浮いてしまうのです。

 南北が和解した以上、アメリカは、米韓同盟を維持する理由を失い、朝鮮半島から米軍を撤退させることでしょう。この状況は、漁夫の利を待つ中国やロシアにとりましては好都合な展開なのですが、アメリカは、ここで、またもや重大な選択を迫られることとなります。北朝鮮は、韓国側に安心感を与えるため、あるいは、米韓を離反させるためか、核やICBM等の標的はアメリカであると明言しております。このことは、南北の“示談”が、むしろアメリカにとりまして安全保障上の脅威であることを意味しているのです。つまり、南北間において朝鮮戦争は終結しても、対米戦争だけは継続されるという奇妙な状況が出現するのです。しかも、この場合、アメリカは、対北戦争の最前線基地として韓国に期待することはできません。また、南北が和解して北朝鮮が敵国をアメリカ一国に絞った場合、中ロを含む広範な国際経済制裁網を維持することも困難となります。

仮に、このような事態に至れば、アメリカは、(1)アメリカ・ファーストの立場から、予防的防衛措置として、単独で北朝鮮の核・ミサイル 攻撃能力を潰す、(2)“世界の警察官”の立場から、国際的な有志連合を結成して北朝鮮の国際法違反行為を排除する(おそらく、中国やロシアの協力は得られない…)、(3)軍事力の行使を断念する場合には、日本国の核武装やミサイル防衛網の整備等の抑止力の強化等で対応する…といった選択肢の中から何れかを選択することでしょう。もっとも、これらの選択肢やそれに伴うリスクは現状と大して変わりはなく、最大の違いは、軍事行動において韓国軍の協力を得られない点にあります。

 北朝鮮問題は、朝鮮戦争が絡む故に複雑化している嫌いがありますが、今般の南北の動きは、朝鮮戦争抜きの北朝鮮問題解決への移行、あるいは、北朝鮮による暴力主義に基づく核・ミサイル開発という問題の本質を明確化しているのかもしれません。何れが選択されるにせよ、北朝鮮問題の解決には、軍事制裁であれ、抑止力強化であれ、暴力主義の封じ込めを要することは言を俟たないのではないかと思うのです。

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シルクロードは“一方通行”であった-“中国の夢”は恒常的黒字国

2018年01月09日 12時13分39秒 | 国際政治
マクロン仏大統領が初訪中 関係強化目指す一方で「シルクロードは一方通行ではない」とクギ
フランスのマクロン大統領は、今月8日、就任以来、初めて中国を訪問し、習近平国家主席から歓待を受けたと報じられております。米中対立が燻る中での仏中接近となりますが、この訪問で気になるのは、自由主義諸国の対中貿易の認識です。

 マクロン大統領は、習主席が提唱してきた一帯一路構想への参加を表明する一方で、“古代のシルクロードは一方通行ではなかった”と述べて、中国市場の閉鎖性について釘を刺したとそうです。しかしながら、古代から近代にかけての対中貿易の歴史を振り返りますと、中国貿易は、常に中国が有利な形での不均衡であり、この不均衡こそが、世界を揺るがす重大な要因ともなったのではないでしょうか。

 古来、中国を代表する特産品と言えば、シルクロードの名称が端的に示すように、“絹(シルク)”です(近世以降には陶磁器や茶葉も特産品に…)。化学繊維が発明される以前にあっては、中国産の絹は西方諸国においても珍重され、いわば、全世界が中国産絹の市場であったのです。シルクロードがユーラシア大陸の大動脈であった時代には、ユダヤ商人、イスラム商人、インド商人等の手を介して西方に齎された絹製品は地中海沿岸の諸都市に集積され、ベネチアやジェノバ等の商人によってヨーロッパ各地に運ばれ、手広く売買されたのです。

 独占的特産品の強みが中国をして恒常的貿易黒字を生み出し、歴代の中華帝国の繁栄を支えたのですが、一方の西方諸国を見ますと、中国に対して然したる輸出品を持ちませんでした。このため、常に対中貿易は赤字であり、貿易決済を通してヨーロッパ産の金、銀、銅といった貨幣価値を有する希少金属は、大量に東方へと流出したのです。この結果、新たな航路の探索のみならず、慢性的なコイン不足からヨーロッパにおいて為替手形が発達し、やがて銀行券を生み出すこととなりました。対中貿易、あるいは、東方貿易に伴う赤字は、今日の金融システムの原型の誕生と無縁ではないのです。

 また、アヘン戦争(1840~42年)が、イギリスの対中貿易の赤字に起因することは、よく知られた事実です。世界大での自由貿易体制を構築し、三角貿易等の多角貿易によって莫大な利益を上げていたさしものイギリスも、対中貿易だけは赤字を記録し続け、この解消のためにインド産のアヘンを中国に秘かに輸出したことが、この戦争の発端であるからです。当時のイギリスは、軍事力を以って中国市場をこじ開けて対中貿易の不均衡を解消したわけですが、1840年は、中華人民共和国憲法の前文にあって、同国の屈辱的な半植民地化の始まりの年と位置付けられています。

 因みに、中国産の絹の問題は、日本国の歴史とも関係しています。清朝末期の混乱によって中国からの絹輸出の減少を懸念したイギリスが、代替生産国を準備すべく、日本国の明治維新、並びに、絹生産を戦略的に後押ししたとする有力な説があります。実際に、鎖国を解いて開国した明治日本が真っ先に参入した国際市場は、絹製品の分野でありました。この説には更なる検証が必要ではありますが、富岡製紙工場などの史跡は、中国貿易をめぐる国際経済、並びに、日本経済の来し方を、良しにつけ悪しきにつけ、今日に伝えているのです。

 以上に中国貿易の歴史を大雑把に述べてきましたが、“中国の夢”の実現をスローガンに掲げる習政権にとりまして、過去の栄光を取り戻すとは、アヘン戦争以前の状態への回帰、即ち、国家による貿易統制と恒常的貿易黒字国の実現であることは想像に難くありません。そして、この歴史的とも言える不均衡状態の再来は、再び、全世界を震撼させないとも限らないのです。中国が特産品の強みを失った今日にあっては、過去をそっくり再現することは不可能ではありますが、シルクロードが一方通行であった歴史は、自ら“グローバリゼーションの旗手”を自称する中国に対する政策が、一筋縄ではいかないことを物語っているのではないでしょうか。

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経済優先による独立性の喪失-韓国は過去を反省しているのか?

2018年01月08日 15時32分54秒 | 国際政治
昨年、韓国政府は、THAADの配備・運営の配慮を含め、中国に対して自国の対外政策を縛る約束を交わし、対韓経済制裁の緩和という果実を手にしました。主権の制限という代償を払ってまで、韓国は経済的利益を選択したこととなります。

 中国の13億の市場は、かくも絶大なる政治的効果を見せつけたのですが、この選択を見る限り、韓国が、過去の歴史を反省しているとは思えません。何故ならば、1910年の併合条約により、日本国によって韓国が併合された背景には、ロシアの極東侵出(南下政策)の脅威と並んで、韓国の経済事情があったからです(当時は大韓帝国と称したものの、ここでは韓国と表記)。

 日本国による韓国併合に際しては、韓国国内にあって反対論も無いわけではなかったものの、当時、韓国最大の政党であったとされる「一進会」をはじめ、併合に賛成する勢力も少なくありませんでした。韓国側の已むに已まれない事情として指摘し得るのは、その莫大な対外債務です。イザベラ・バードの『朝鮮紀行(1905年)』によれば、1910年の併合に先立ち、韓国は、財政顧問(税関長?)であったジョン・マクレヴィ・ブラウンの発案を受けて、不潔極まりなかったソウル市内の整備などに着手しています。こうした近代化政策には、当然に巨額の資金を要しますので、同国政府は、日本国内で国債を発行するなど、資金調達に奔走したのです。また、日本以外にも、ロシアやイギリス等の列強諸国からも借金を重ねており、同国の“台所事情”は火の車であったと言います。

 恒常的な財政難は、防衛面においても韓国の弱体化を招きます。十分な軍事費を捻出できなければ、ロシアの軍事的脅威に対抗することは到底できないからです。かくして韓国は、併合を選択することで、借金の肩代わりを日本国にしてもらうに留まらず(韓国の対外債務は日本国が完済…)、毎年、日本国からの財政移転を受ける立場を獲得します。また、朝鮮半島の防衛を日本国に丸投げすることで、防衛費の負担をも免除されたのです。

今日、韓国は、日本国による併合を1000年の恨みとして糾弾しておりますが、当時の韓国が主権(統治権)を他国に移譲したのも、今日の同国の政府と同様に、経済問題を優先させたからに他なりません。しかも、今日の場合には、米中対立の最中にあって、経済は中国に依存しながら防衛はアメリカに依存するという、救い難い二面外交の状況にあると言えます。加えて、中国は、韓国を属国化はしても、かつての日本国のように、同国に対して統治責任を以って財政移転や各種の支援を行うとも思えません。韓国は、日本国に対して過去の歴史の反省を求めるよりも、まずは、自国の過去を歴史の教訓とすべきではないかと思うのです。

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南北会談の議題は平昌オリンピック-“リトマス試験紙”から逃げた南北両国

2018年01月07日 10時56分55秒 | 国際政治
南北会談は五輪のみ議論…米韓国防相が確認
強硬姿勢を綱貫いてきた北朝鮮が韓国側の提案を受け入れ、凡そ2年ぶりとなる南北当局者による会談が今月9日に板門店で開かれる運びとなりました。南北会談再開の報に、日本国政府は“リトマス試験紙”という表現で静観方針を示しましたが、同会談が、仮に北朝鮮の核・ミサイル問題に踏み込むとすれば、南北両国に対する決定的な“リトマス試験紙”となるはずでした。

 北朝鮮に対しては、同会談は、核・ミサイル放棄を前提とした交渉に応じる意思があるか、否かを問う貴重なチャンスとなったことでしょう。この場面において期待される韓国の役割は、北朝鮮側の最終的な意思の確認であり、手にした“リトマス試験紙”によって、北朝鮮側の対米交渉への決断の有無が判断されるのです。仮に、北朝鮮側の回答が核・ミサイル開発・保有の堅持であれば、対米交渉の道は、この時点で閉ざされます(米軍による対北武力制裁の可能性が格段に高まる…)。

 一方、同会談は、韓国に対する“リトマス試験紙”でもあります。否、北朝鮮以上に、韓国は、この会談において各国からその立場を試されたことでしょう。何故ならば、この会談における韓国側の発言こそ、同盟国であるアメリカの味方なのか、それとも、昨今、急速に関係を改善させた中国の‘代理人’なのか、同国の立ち位置を明らかとするからです。南北会談の再開については、当初より、米韓離反策の一環ではないかとする懸念がありましたが、仮に、韓国側が、アメリカの方針を無視して核・ミサイル開発の一次的な凍結路線で交渉を進めるとすれば、同国は、中国の“代理人”と化した可能性が高まります。

 以上に述べたように、南北会談は、両国の基本的な立場を明らかにする上でも、重要な機会となるはずでしたが、結局、同会談での議題は、北朝鮮の平昌オリンピックへの参加問題に限定されてしまったようです。議題の限定化は、米韓電話会談後のマティス米国防長官の発言に依りますが、おそらく、この判断の背景には、“リトマス試験紙”を怖れる両国の思惑があったことは想像に難くありません(もっとも、韓国側の裏切りリスクを懸念したアメリカが、交渉議題から核・ミサイル問題を外した可能性も…)。時間稼ぎと瀬戸際作戦を得意とする北朝鮮にとりましては、会談における最終的な意思の表示はアメリカの決断を早めますし、“蝙蝠外交”を維持したい、あるいは、親中・親北の本音を隠したい韓国もまた、旗幟を鮮明にすれば、米中両国、あるいは、同国の裏切りを確信した一方から手厳しい報復を受けかねないからです。

 結局、平昌オリンピックの参加問題のみを話し合う南北会談とは、北朝鮮問題解決には何ら貢献するところもなく、対北宥和派が切望していた話し合いの実現という自己満足に過ぎないのではないでしょうか。そして、両当事国が、自国に不都合と見るや、真っ先に“本題”から逃げたことは(北朝鮮側から核・ミサイル問題に関する提案があるとは思えない…)、この‘本題’、すなわち、核・ミサイル問題の交渉による解決の難しさを暗示していように思うのです。

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中国市場に期待するより中国企業に警戒を

2018年01月06日 15時42分27秒 | 国際政治
近年、2030年頃にはGDPにおいて中国がアメリカを追い抜き、世界第一位の経済大国に躍り出るとする予測を目にするようになりました。こうした予測の根拠は、13億を数える中国の人口規模にありますが、この予測が正しければ、日本国は、中国市場に期待するよりも、巨大化する中国企業こそ警戒すべきではないかと思うのです。

 経済成長率が6.5%程度に減速したとはいえ、日本国内には、中国の経済成長をビジネスチャンスとして歓迎する声は少なくありません。少子高齢化により国内市場が縮小傾向にある日本国では、なおも拡大を続ける13億の中国市場は、製造拠点、消費市場、投資先等の何れの面においても魅力的です。しかしながら、市場規模と企業規模は比例する点を考慮しますと、この歓迎論は楽観的に過ぎます。

 例えば、80年代にヨーロッパにおいて試みられた市場統合は、欧州企業の規模の拡大を意図していました。市場が中小の国ごとに細分化された状態では、日米等のハイテク企業が凌ぎを削るグローバルな国際競争には生き残れないとする危機感が、欧州市場の誕生を後押ししたのです。かくして、規模においてアメリカを凌ぐ人工的な巨大市場が出現したのですが、この点、中国は、市場規模に苦労する必要はなく、既に国内市場のみで世界一の規模を誇ります。

このため、中国の国内市場の成長は、即、中国企業の競争力伸長を意味するのであり、技術的劣位も、グローバル化を追い風とした技術移転や企業買収等により容易に克服し得ます。昨年、東芝の家電部門が中国の美的集団に買収されましたが、この事例は、日本企業が中国市場においてシェアを伸ばすのではなく、多国籍化した中国企業が、日本市場の一角を占めてしまう展開の先例となりました。今後も、“規模の経済”を背景に、資金力にものを言わせた中国企業による日本企業の買収が続けば、やがて、日本経済は中国経済に飲み込まれ、日本企業は消滅の危機を迎えないとも限らないのです。

 しかも、政経一致を旨とする共産党一党独裁体制が堅持されている中国では、政府系企業が幅を利かしており、民間企業もまた、法律によって共産党員の受け入れを義務付けられています。乃ち、中国企業の海外進出には、進出先の国における中国の政治的影響力、否、支配力の浸透を伴うのです。その一方で、中国は、自国企業を保護・育成し、併せて体制を維持するために、国境に見えない“万里の長城”を建設しています。

 人口規模において国家間に先天的な条件の違いがある場合、レッセ・フェール的な自由貿易主義の貫徹が適切であるとは言えないように思えます。中国の鉄鋼の過剰生産問題に際しては、日頃は自由貿易主義の堅持を主張してきた諸国でさえ、これを自由貿易の結果として受け入れようとはしませんでした。13億の市場を背景に中国企業が全世界に事業を広げる今日、日本国を含め、巨大化する中国企業対策、そして、拡大至上主義や規模優位型経済からの転換こそ真剣に考えるべきではないかと思うのです。

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民営化と植民地化は一緒にやって来る?

2018年01月05日 16時46分15秒 | 日本政治
報道に拠りますと、日本国政府は、地方自治体が運営しているインフラの民間への売却を促進するために、法改正を行う方針なそうです。法案の主たる改正点は、(1)売却に際しての地方議会の決議不要化、並びに、(2)利用料金の承認制から届け出制への変更にありますが、この法改正、日本国の植民地化を招くリスクが潜んでいるのではないでしょうか。

 同改正案が実現すれば、第一に、地方自治体の長は、自らの権限でインフラの売却を決定することが可能となります。首長を選ぶ地方選挙が、公約においてインフラ売却の是非を問う一点争点選挙であれば、選挙結果によって住民の意向が反映されますが、それ以外の場合には、住民の預かり知らぬところでインフラ売却が決められるリスクが高くなります。また、同法案は、地方議会の権限剥奪をも意味しており、地方議会レベルで売却を阻止することも不可能となります。

第二に、インフラの売却に際しては競争入札が予測されますが、インフラを落札した企業は、届出制への変更により、利用料金を比較的自由に設定できるようになります。法改正の狙いの一つは、民間資金を活用するPFI方式による公共料金の引き下げですが、独占的権限を獲得した企業は、利益率を低下させる値下げを申し出るでしょうか。民間事業者がインフラの運営権のみならず、所有権までも取得するとしますと(水道等の分野では老朽化対策でもあるので、設備の所有権も移転する可能性が高い…)、競争メカニズムが働かない永続的独占体制となります。地方自治体の負担は軽くなっても、住民の負担が重くなれば、元も子もありません。

加えて、同法案には、隠れた問題点があります。それは、インフラ市場に参入する民間事業者は、必ずしも日本企業とは限らないことです。近年の民営化とは、海外企業に向けた市場開放と凡そ同義となる場合が少なくないからです。水道事業には既にフランス企業が進出済みですが、最近、海外のインフラ投資に積極的に取り組んでいるのが中国です。中国企業も、13億の人口規模を背景にインフラ事業において競争力を付けてきており、日本国のインフラ市場の開放は、絶好のチャンスとなるはずです(日本国の再生エネ市場も海外勢が席巻…)。インフラ売却の公開入札においてコスト面で優位にある中国企業が落札した場合、日本国の電気、水道、ガスといったインフラは、永続的に中国の手に落ちることになりましょう。

この構図、近代以降の植民地化のプロセスに類似しています。植民地化の先兵となった東インド会社は民間事業者ではありましたが、列強勢力はアジア・アフリカ等におけるインフラ・コンセッションの取得を足掛かりとして、その支配圏を拡げています(空間的支配へ…)。今日にあっても、政府系も含め、資金力に優る中国企業が大挙して日本国のインフラ事業に参入してきた場合、日本国の独立や安全保障上のリスクが皆無であるとは言えません。親中派の地方自治体の長の下では、売却に際して中国企業に対して特別の便宜が図られる恐れもあります。アメリカでは、対米外国投資委員会が、アリババ系の投資会社アント・フィナンシャルによる国際送金大手のマネーグラムの買収を阻止したと伝わりますが、以上に述べてきた諸問題がある以上、法改正には慎重であるべきではないかと思うのです。

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今年の初暴露は中国の最高機密文書

2018年01月04日 11時26分48秒 | 国際政治
「北の核容認」「核実験自制なら体制保証」 中国機密文書?米サイトが暴露
 報道に拠りますと、今年最初の暴露は、北朝鮮問題をめぐって中国共産党が作成した最高機密文書となりそうです。中国外務省は、フェイク・ドキュメントとして否定しておりますが、この機密文書、本物である可能性は相当に高いのではないでしょうか。

 発信元は米ニュースサイト「ワシントン・フリービーコン」ですが、同機密文書は、昨年9月15日に中国共産党中央弁公庁によって党中央対外連絡部宛てに作成されたとされています。文書の内容は、硬軟織り交ぜた北朝鮮懐柔政策、並びに、国際社会対策によって構成されているようです。対北政策としては、核実験の自制を条件としつつ、(1)金正恩体制の保証(2)新型の短・中距離弾道ミサイルやクラスター爆弾等の高性能兵器や軍事技術の供与、(3)インフラ支援の増額などの“あめ”の提供を約する一方で、核実験を自制しない場合の“鞭”としては、「罰則的措置」を科すとしています。一方、国連安保理において対北制裁決議を成立させた国際社会に対しては、対北石油輸出の規制は“象徴的にとどめる”、即ち、実施はポーズだけとする本音を語っているのです。

 以上の内容は、中国の公式見解とは裏腹であり、訪中時のトランプ米大統領との合意をも違えています。中国外務省の耿爽副報道局長が“少しでも常識がある人なら文書が偽造であることを見抜ける”と述べて否定に躍起になるのも、この文書が本物であれば、国際社会における中国の信頼性は著しく損なわれ、今後の対米交渉などにも決定的なマイナス影響を与えるからなのでしょう。言い換えますと、再三指摘はされてはきましたが、証拠文書を以って“裏の顔”を持つことが判明した以上、中国は、国際社会における信頼に足る誠実な交渉相手とは最早見なされなくなるのです。

 同文書は、中国の二面性を暴露しているのですが、実のところ、中国の公式見解とは逆ではあっても、実際の行動とは凡そ一致しています。本気で北朝鮮の非核化を望み、国連決議を遵守するつもりがあるならば、対北密輸の取り締まりの徹底など、北朝鮮に対する制裁をより厳格に実施することでしょう。また、現時点では、中国には、金正男氏の長男を擁立するなど、金正恩政権の転覆を画策している気配は見られません。加えて、弾道ミサイル等の技術供与についても、敢えて長距離のICBMを含まない点においては、アメリカへの特段の配慮が窺えるのです。イランの核合意の如く、核実験、並びに、ICBMの“凍結”で手打ちにしたい中国の本音が透けて見えるのであり、アメリカの“融和派”が合意できる範囲に巧妙に落とし込んでいるのです。

 同文書の信憑性は、アメリカの“宥和派”のみならず、日本国をはじめとした世界各国の親中派との連動によってもさらに高められています。1月16日には、カナダのバンクーバーにおいて、宥和派とされるティラーソン米国務長官の要請の下で、朝鮮戦争時の国連軍参加国に日韓両国を加えた閣僚級会合が開催されるそうですが、この会合においても、チャイナ・ロビーの浸透ぶりからすれば、同文章に記されている中国の意向が反映される可能性も否定はできません。そしてそれは、習近平国家主席が提唱する「新たな大国関係」における米中合意、即ち、日本国の置き去りを意味しかねないのです(短・中距離弾道ミサイルについては技術供与…)。新年早々の暴露ニュースの真偽は詳細な検証を待つ必要がありますが、日本国は、今年こそ、中国の二面性、否、”二枚舌”をも見定め、迫りくる現実のリスクに賢明、かつ、迅速に対処してゆくべきではないかと思うのです。

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*御礼申し上げます

 私事ながら、昨年の暮れ、父は二度の心肺停止という絶望的な危機を脱し、奇跡的に一命を取り留めました。父の病に際し、ご心配、並びに、お見舞いをたまわり、まことにありがとうございました。今なお入院中ではありますが、幸いにして命を長らえましたのも、救命医療に携わられておられる方々のお蔭と、深く感謝いたしております。また、夜間、タクシー会社の電話番号を調べてくださったコンビニエンス・ストアーの店員の方、そして、父危篤にタクシーの順番を快く譲って下さった若い女性の方など、見も知らぬ方々のご親切に人の世の温かさに感じ入る日々ともなりました。この場を借りまして、皆さま方に、厚く御礼を申し上げる次第でございます。


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新年のご挨拶

2018年01月01日 08時12分23秒 | その他
 謹んで 年頭のご挨拶を 申し上げます


 昨年中は いろいろとお世話になりまして ありがとうございました

 皆さまのご多幸と健康をお祈りして


 のどかなる 春のそらに 雲わたり
  初日を照らし 年のあけゆく


 
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