万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

入管法改正問題-人口減少=縮小均衡なのか?

2018-12-04 13:55:19 | 日本政治
外国人材法案 与党 今週成立目指す 野党 内閣不信任案も視野
 入管法改正案につきましては、様々な問題が複合的に絡まっており、反対論のみならず、賛成論にあってもその理由は一様ではありません。人手不足、あるいは、景気の調整弁を表向きの理由としたい政府は否定しているものの、同法案には、人口減少に伴う日本経済の縮小均衡を防ぐため狙いがあるとする指摘があります。

 仮に、日本経済の縮小均衡の予防が法改正の主要要因であるとすれば、当然に、同法案は、日本国内での外国人の定住を前提とする‘移民法’となるのですが、ここで先ずもって考え、議論すべきは、‘人口減少は必然的に縮小均衡をもたらすのか’という基本問題であるように思えます。縮小均衡防止論は、基本的には、1億3千万人を数える現在の日本国の人口を将来に亘って維持すべきとする立場にあります。公約違反となるため、移民政策であることを口が裂けても言えない立場にある政府としては、この縮小均衡論も表には出したくないのでしょうが、メディア等では、半ば周知の事実として語られているのです。

 仮に日本国の経済規模を維持しようとするならば、その方法は、外国からの‘人口補填’のみではないはずです。しばしば指摘されるように、AIやロボット技術等の先端技術の開発・導入等による労働代替や効率化に対する期待も高く、また、国民一人あたりの生活の質を向上させることができれば、経済規模は縮小しません。将来的な‘経済規模の維持’という課題に対する答えは‘人口規模の維持’の一択ではなく、また、人口減少が必ずしも縮小均衡を齎すとも限らないのです。つまり、人口減少⇒外国人労働者の受け入れ拡大は、複数ある政策上の選択肢の一つでしかないのです。そして、一般の日本国民からしますと、外国人労働者によって人口減少分を穴埋めするよりも、一人あたりの可処分所得が増加し、高品質の製品を購入できる購買力を有し、かつ、広い居住空間を確保できる方が望ましい選択肢に決まっております。

 縮小均衡論の背景には、グローバリズムと共に広がった質より量を重視する価値観があります。実際に、グローバル時代にはあっての勝者は、市場規模(人口規模)においても資金、資源、人材等の調達力においても規模に優る企業群であり、規模の経済の追求はグローバリズム最大の特徴でもあります。この路線を歩むとすれば、人口減少は必敗の要因となりますので、人口減少に直面する政府は、何としてもこの傾向に歯止めをかける必要に迫られます。しかしながら、中国、インド、インドネシア、中東諸国、並びにアフリカ諸国の人口増加率を考慮すれば、日本国が逆立ちしてもこれらの諸国との人口競争に勝てる見込みは限りなくゼロに近いと言わざるを得ません。つまり、人口の維持や増加を以ってグローバル時代を生き抜こうとする戦略は、‘勝てない戦争’を闘うに等しいのです(中国のグローバリズム推進の姿勢が示すように、グローバリズムは人口大国に有利に働く…)。

 また、日本国のみならず、他の諸国も人口維持、あるいは、人口増加に邁進するとしますと、全世界の人口は地球が養えるキャパシティーを越え、食糧問題では解決したはずのマルサスの懸念が、資源有限性において再燃するかもしれません。未来都市のヴィジョンとして、ゆったりとした空間で人々が先端技術に囲まれて豊かに過ごしているスマートシティ等が描かれていますが、人口の大半が都市部に集中すると予測される未来の現実は、こうした理想的な生活を送れるのは極一部の富裕層(中国では共産党員?)のみであり、世界各地から寄り集まったその他大勢の人々は、郊外に拡がるスラム化した密集地帯での退廃した生活を余儀なくされるかもしれないのです。

 このように考えますと、やはり、日本国は、量より質を求めるべきであり、少なくとも、日本国の将来像を決定する重大な選択については、国政選挙において国民に問われるべきなのではないでしょうか。総選挙も経ず、国民への説明にも多くの矛盾点が散見される中、政府与党が入国管理法改正案を強引に可決させることは、民意を素通りした事例として、日本の国政史上において汚点を残すことになるのではないかと懸念するのです。

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2 コメント

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人口問題 (櫻井結奈(さくらい・ユ-ナ))
2018-12-04 20:20:16
現在の日本の経済成長を維持するためには、一億二千万の人口を維持しなければならない、という発想はおかしいと思いますね。
 それに、日本列島の面積では、八千万人くらいが快適にくらせる人口だという説もあります。
そのはうが、日本人の生活空間が広がりますし、ひとりあたりの居住面積も大きくなるわけです。
それを、日本列島内に、おかしな外国人のコミュニティーを作ろうとする人の気が知れません。
外国人移民で人口を維持したところで、『日本民族』それ自体の人口は増えないわけですから、、、、
櫻井結奈さま (kuranishi masako)
2018-12-04 21:34:43
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 かつて、内閣府は移民6000人計画を公表しておりますので、もしかしますと、今般の入国管理法改正は、この路線上にあるのではないかと疑っております。行く行く先は日本人がマイノリティとなり、チベットやウイグルの都市部のように、中国人コミュニティーが最大人口となるかもしれません。日本国という国名は辛うじて残されてはいても、もはや日本の歴史や伝統を受け継いではおらず、多民族国家となっているかもしれないのです。日本国は、危うい局面に来ている37のではないでしょうか。

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