万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

国民不在の政界再編劇-露呈したのは既存政治システムの限界

2017-09-29 11:25:14 | 日本政治
安保も消費税も…希望と民進、政策に「溝」
政治家は、常々、“改革”や“刷新”という言葉で国民を惹きつけます。根底からひっくり返えす “革命”はその極致ですが、特に現状に不満を抱く有権者が多いほど、これらの言葉は、悪弊や腐敗が一掃されて新しい時代が始まる予感を抱かせるのです。しかしながら、衆議院解散を機に俄かに噴出した政界再編の動きを見ていると、真に変えるべきは、政党の枠組ではなく、政治のシステムではないか、とする疑問が湧いてくるのです。

 政界再編とは、既存政党間の離合集散に過ぎず、政党政治という枠組み内の再編成です。いわば、“コップの中の嵐”であり、たとえ新しい政党が誕生したとしても、“コップ”の中から出ることも、“コップ”を壊すこともできないのです。あくまでも政界における政治家達のグルーピングの変化であり、全体としてのその顔ぶれには然して変わりはありません。しかも、今般の日本国の政界再編は、外部から“コップ”の中をより明瞭に見えるように(操作できるように?)、凡そ二つに整理することを目的としており、新たなグルーピングに際しても、入党基準となる政治信条や基本的な政策方針を設けているわけでもありません。自民党は、しばしば左右が共存する包括政党と称されましたが、希望の党もまた、選挙での勝利を共通利益とする左右の寄せ集めとなったのです。

 こうした政界の再編劇の結果として困惑し、窮地に立たされたのは、一般の日本国民です。これまで政治を舞台に鋭く対立していた政治家達が仲よく政党を同じくする同士として顔を揃えており、しかも、政策綱領を見ますと、どちらの政党を選択しても、政権政党による政策内容の取捨選択の如何によっては、国民にとりまして望ましい結果をもたらすとは思えないのです。

メディアが報じるところによれば、自民党を選択すれば、プラス面としては対北制裁強化や中国の軍拡や朝鮮半島有事に備えた防衛体制の整備が期待できる一方で、マイナス面としては、カルト系利益集団の公明党との連立のみならず、消費税率は10%に上がり一般国民の家計を圧迫します。一方、希望の党を選べば、プラス面としては10%消費税率上げが凍結されるとしても(ただし、永続性については不明…)、原発廃止は経済的にはマイナスに作用しますし、民進党が合流するのでは、防衛や安全保障面においても親中親北に転じる可能性があります。もっとも、両党のどちらを選んでも憲法改正への道筋がつくという点では、いずれにせよ、プラスの評価できるかもしれません(ただし、改憲内容によっては、マイナス評価となる可能性もあります)。

 多党制は、一党独裁と比較すれば、国民が複数の政党の中から自由な選択できる点において、民主主義のメルクマールとされてきました。しかしながら、上述したように、政党が一方的に一括選択方式の政策綱領を作成し、その選択を、政治家を選出する選挙と同時に選ばせるシステムには、根本的な弱点があります。複数の政党が裏で結託したり、何れもが上部において操作されていたり、あるいは、何れの政党も一部の利益に奉仕する政党であるといった場合には、民主主義の証であるはずの多党制においても、国民の選択は無意味になるのです。政治的権利や自由は保障されていても、悪しき意図を持つ者によって具体的な選択肢が操作されれば、一党独裁よりは“まし”な程度であり、民主主義はもはや死滅したに等しくなります。

 今般の政界再編劇は、まさに、民主的多党制の欠陥を露わにしています。現在、国民主権、民主主義、そして自由を守るために問われているのは、“コップ”の中の改革ではなく、内部から腐り、外部からの支配の道具となるリスクの高い“コップ”のままでよいのか、という統治制度に関わる根本的な問題なのではないでしょうか。投票率の低さは、政治システム自体への国民の不審や不信感を示唆しているのかもしれません。

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4 コメント

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Unknown (オカブ)
2017-09-29 17:45:53
倉西先生
いつもご指導ありがとうございます。
今回の"政界再編劇"には、ご指摘の通りの、有権者が一票を投じる政党に全ての政策の生殺与奪の権を与える、現行の政党政治、選挙制度の問題点をはらんでいると思います。
しかも、民進党、希望の党はもちろんのこと、自民党でさえ、呉越同舟の烏合の衆であることを思えば、有権者は何を基準に政党を選択し、投票を行えばよいか、という問いに、正確な答えを出すことは難しいでしょう。
残念ながら、現在の日本の政治状況で「政党」と呼べるのは公明党と共産党くらいだと私は思っています。
こうした混沌とした状況で政治家に求められるのは、理念、政策で一致する集団をもって、一党を建てることなのですが、希望の党と民進党のように、自分の議席と職が確保できれば、その他のことは無視すると言っているに等しい堕落の極みの状況になっています。
これは、一過的な人気や流れや空気によって投票行動を行う有権者にも責任があるのですが、その流れや空気を作り出しているメディアにも大きな責任があると言えるでしょう。
今回の"政界再編劇"のシナリオライターであり黒幕は明らかに小沢一郎なのですから、もし今回の総選挙で希望の党が圧勝することになれば、国民は一切を小沢一郎に付託したことになります。
先生ご指摘のように、政党の上部が結託し情勢を操作しているという構造がまさに当て嵌まります。
こうした腐敗した政治構造を正すには、まず国民・有権者がより賢くなることが必要で、"選挙ゴッコ"をやっているような高校の"政治"教育ではなく、もう一歩踏み込んだ、政治の基礎から準義務教育である高等学校において学ばせる必要があると思います。
いずれにせよ、中立的と思われる大手紙や経済紙でさえデマゴーグと化し、メディアの匙加減によって、右往左往する現代日本の政治状況はまことに国民にとって不幸であり、国民が自律した民主主義を希求することが求められるのではないでしょうか?
今後ともご指導の程よろしくお願い申し上げます。
オカブさま (kuranishi masako)
2017-09-29 19:53:01
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 今般の政界再編劇のシナリオライターが小沢氏としますと、その小沢氏を操る真のライターが別に存在しているように思えます。しかも、その人物、あるいは、組織は、海外におり、小沢氏を手先として動かすことで、間接的に日本国の政界を牛耳ろうとしているように思えるのです。思い起こしますに、民主党政権が誕生した際に、小沢氏は大訪中団を結成して中国を訪問し、自らを”人民解放軍の野戦軍”と名乗っており、共産主義勢力の影も見えてまいります(その一方で、バチカンとの関係も取り沙汰されている…)。もっとも、指南役が小沢氏であるとは確定は出来ないのですが、少なくとも、日本国民は、こうした間接的な内政干渉を許しているシステムを変えてゆく必要がありましょう。
 
 なお、公明と共産党につきましては、特定の宗教団体やイデオロギー団体を支持基盤としておりますので、一般国民から広く支持を求める国民政党ではないと考えております(部分政党…)。政党政治が揺らぐ中、既成概念を排して論じるべきは、民主的政治システムにはどのような可能性があるのか、という課題ではないかと思うのです。
Unknown (Unknown)
2017-09-29 23:54:05
小池さんは情報公開と政治改革を訴えているのだと思っています。

都知事選挙でもシガラミのない立場を強調してたので好感を持ちました。

議員は世襲や経済力やカルト創価学会などの、権力者や組織力のある人達の利権のために利用されています。

おカネがかからない選挙で、議員報酬額を下げて本当に世の中のためになる政策や法案を作って欲しいです。
Unknownさま (kuranishi masako)
2017-09-30 08:49:12
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 多くの国民は、Unknownさまと同様に、日本国の政治改革を願っていると思います。果たして、小池知事が、その願いに応えるか、あるいは、ポーズに過ぎないのか、現時点では、的確には判断できないかもしれません。現状では、国民が全く以って無視され、政党の枠組み再編のみに躍起になっており、不安を覚えざるを得ないのです。

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