万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本の電力市場自由化は”中間搾取”の解禁?-統制経済と新自由主義の握手

2014年10月25日 13時55分03秒 | 日本経済
電力会社に原発の電気、拠出義務づけ…政府検討(読売新聞) - goo ニュース
 電力自由化に向けて、政府は、電力会社に対して原発で発電した電気を卸売り市場に拠出することを義務付ける案を検討しているそうです。この案から推測しますに、日本国の電力自由化とは、その実態は、統制経済と新自由主義が手を結んだ中間搾取の解禁なのではないでしょうか?

 この案における統制経済的な側面とは、”自由化”と銘打ちながら、電力会社に電気卸売市場への電力拠出を義務付けていることです。真の自由化であれば義務付けの必要はなく、電力会社は、自らが製造した電気を卸売市場を介さずに、誰に対しても自由に”産地直売”できるはずです。ところが、政府は、最低価格が実現できる産直方式を否定し(全てではないにしても…)、電力会社から電力を強制的に拠出させたのでは、卸売市場は、国家事業の一つとなります。そして、この”国家卸売市場”に群がるのが、新自由主義者たちです。電気卸売市場には、誰でもが参入できる点で自由ですが、自前の発電設備を保有する発電業者も参入することができます。つまり、卸売市場で買い取った電力を小売りし、その間にマージンを取るのが、彼らのビジネスなのです。おそらく、外国企業もこぞって参入して来るでしょうから、日本国の電気市場は、中間搾取の場となりかねません。

 拠出義務付け対象が、原発の電力に限定されている理由は、やはり、火力や再生エネよりも原発電力の方が安値であるからなのでしょう。つまり、原発で造りだした低価格電力は、卸売市場における事業者の中間搾取で価格が上乗せされ、国民には低価格の恩恵は及ばないことになります。統制経済と新自由主義の握手は、国民にとりましては、最悪のパターンであると思うのです。

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2 コメント

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Unknown (ねむ太)
2014-10-25 21:39:44
こんばんは。だいぶ前になりますが、ニューヨークでの大停電、電力自由化がもたらした結果です。
電力自由化の問題点は噴出し指摘されているにも拘らず「電気代が安くなる」「やってみないと分からない」幼稚園児並みの知性しか持ち合わせていないのですかね。
電力自由化したからといって電気代が安くなる事はありません。
電気料金を無理に下げようとすると、送電線の点検や施設設備費・人件費を大幅に削らなくてはならなくなります。
「地域独占の大企業で殿様商売だから許せない」嫉妬から出てくる幼稚過ぎる感情論にほかなりません。
停電で死者が出た場合は誰が責任を負うのでしょう。
原発が全て停止している現在、燃料代だけで年間4兆円もの金額が海外に支払われています。
これを全て電気料金で回収しようとすれば、電気料金は数倍に値上げしなくてはなりません。
そこで、電力会社が値上げ幅を小さくする為に、赤字という形で負担しているのです。
電力会社が赤字経営なのはそのためです。
地域独占という大きな企業だからできる事であり、中小の電力会社では父さんの可能性もありますので、出来ません。
全て電気料金の値上げという形で消費者が全て負担しなくてはならないのです。
中小・零細企業は現在でも電気料金が高いために青息吐息の状態です。
中小・零細企業に止めをさすつもりなのでしょう。
経産省の人間は、東北の震災でも「復興しても生産性が低いから復興は後回しでいい」と費用対効果でしかものを考えない人間の集団です。
費用対効果で考えなくてはならない場合と、そうではない場合がある事を理解できない連中に振り回されてはなりません。
受験勉強に明け暮れ、世間を知らずに育ち机上の学問で費用対効果について少しかじった程度で知識を振り回されては国民が迷惑なのです。
電力やエネルギーなどは費用対効果より、安全保障分野の問題として扱われなければなりません。
・・・と言っても反原発運動やデモに参加し集会では演説を打ってみたりする馬鹿な人間が国会議員である事が大問題なのです。
原発の再稼働や金融・経済などの分野は、個人の思想信条はあるにせよ、国家全体の事を考え、時には自分の意見を差し置いても国家の安全保障や国民生活全体を優先すべき事柄です。
その為には、特定の運動などに肩入れしたり、デモに参加したりするような事は厳に慎まなくてはなりませんが、この事を分からない素人でも国会議員なのですから問題なのです。
電力という根幹のエネルギーを市場自由化し、ある地方は特定の国の企業から供給を受けているとします。
その地方から国政に出馬する議員に投票しなければ電力気要求を止める、と無理な要求をされた場合どうしますか、という問題も起こりえるのです。
裁判に訴えても判決が出るまで電力は使わず生活できますか・・という話にもなるのです。
根幹のエネルギーの市場開放をしてしまえば、エネルギーを通じて国民が人質にされてしまうことも考えておくべきです。
現在、社会の中枢を担っている層が、バブルの時「これからは製造業などいらない金融立国を目指すべきだ」と言っていた連中ですから注意が必要です。
電力自由化や市場開放は安全保障の根幹に関わる問題である事を真剣に考えるべきでしょう。
ねむ太さま (kuranishi masako)
2014-10-25 22:26:25
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 エネルギー政策の分野は、国家の安全保障のみならず、その国の産業、国民生活…など、様々な要素が絡む複合的な政策領域です。こうした性質を持つ政策分野に関しては、多面性こそ国民に丁寧に説明すべきなのですが、何故か、マスコミは、原発反対への世論誘導にばかり熱心です。その一方で、政府もまた、電力自由化の方向にひた走っておりますが、この道にも、落とし穴が隠れております。再生エネと同様に、”濡れ手に粟”の事業者によって、国民にその負担のしわ寄せが行くのですから…。政府は、一部のレント・シーキングを狙う勢力ではなく、国民のためにこそ、政策を立案すべきと思うのです。

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