万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

第3次世界大戦は’3次元戦争’?

2021年06月14日 12時30分51秒 | 国際政治

 戦争というものは、古来、国家と国家との間の戦いというイメージが染み付いています。このため、戦争の背景を分析するに際しても、その観察者の視点は、主としてどの様な対立要因や背景があって両国がぶつかるに至ったのか、という点にあります。両国間、あるいは、同盟関係による両陣営間にあって複雑に絡まった利害関係を解き明かせば、戦争の要因も特定できると信じられてきたのです。実際に、二国間の戦争であれ、陣営対立となった戦争であれ、その殆どは国家間の戦争と見なされ、歴史の教科書にあっても、当事者はいずれも’国家’に限られています。

 

 戦争を国益の衝突の力による解決として見なす場合、戦争とは、平面上、即ち、二次元の空間で行われる行為と見立てることができます。しかしながら、この国家を中心とした戦争観、本当に実際の戦争の要因を解き明かしているのでしょうか。近代以降、急速な産業の発展により、金融をはじめとした私的な経済勢力は、経済のみならず政治や社会に対して甚大な影響力を及ぼすに至っています。実際に、民間の出資団体から始まりながら、軍隊を備え植民地を獲得した東インド会社のような事例もあります。’

 

 フランス革命やロシア革命の’黒幕’として、しばしばロスチャイルド家の名が上がるのも、ワーテルローの戦いで巨万の富を手にした同家、あるいは、ユダヤ系金融組織が国家体制を転覆させ得るような’財力’、あるいは、超国家的なネットワークを有していたからなのでしょう。しかも、このような民間の経済団体は、国家そのものではないために、国家間の対立とは距離を置きつつ比較的自由に経済活動を行うことができます。第二次世界大戦前夜まで、アメリカの大企業の一部はドイツのナチス政権を支援していましたし、直接的な脅威を受けていたイギリスにあってもドイツとの経済関係が完全に遮断されていたわけではなかったようです。今日にありましても、間接的ではあれ、中国を軍事大国に育てたのは、同市場を有望な収益源と見た自由主義国の民間企業であったのかもしれません。諸国家が2次元空間に存在しているのであるのならば、超国家的ネットワークは、いわば’3次元’空間に存在していると言えるでしょう。

 

 毎年、スイスで開かれていたダボス会議は、あたかも’世界政府’の如くに各国の政府に対して政策を指南してきましたし、今年は、コロナ禍で年次総会の開催を見送ったためか、G7が半ばダボス会議化しているようにも見えます(デジタル化、カーボンニュートラル、ワクチンはグレートリセットの3本柱?)。そして、今般のG7において’新大西洋憲章’が発表されましたのも、戦争へと向かうどこか危うい空気が感じられるのです。第二次世界大戦にあっては、アメリカが未だ参戦していない1941年8月の段階にあって、米英両国の首脳が大西洋憲章で合意し、戦後の’世界構想’を公表しています(同年12月の真珠湾攻撃に先立って、既に、アメリカの参戦は織り込み済みであった…)。

 

 今日では、超国家権力体と化した国際金融・経済勢力の隠然たる影響力を考慮しますと、仮に第3次世界大戦が起きるとしますと、何れの国の国民も、それが’3次元戦争’であることを理解しなければならなくなるかもしれません。第二次世界大戦までは、国民の大多数は、それが国家間、あるいは、陣営間のいわば’二次元戦争’であると信じていました。しかしながら、国境を越えた超国家権力体の存在は、この見方が最早通用しないことを示しております。国家間の対立のさらにその上層部には、両国から利益を得る、あるいは、戦争そのものを操る組織が存在している可能性が極めて高いからです。同存在は、今では陰謀論では片付けられないリアリティーがあります。

 

 戦争そのものは、自由主義陣営対全体主義陣営の構図で始まることでしょう。最もあり得るシナリオは、第二次世界大戦時のドイツ・ナチス政権と同様に’鉄砲玉’となった中国が、国際法違反となる侵略を実行し、同行為を咎めた自由主義陣営が大義名分の下で戦いに挑むというものです。中国が侵略行為を働いた以上、この戦争は不可避です。何故ならば、仮に、中国の行動を黙認すれば、中国による世界支配が成立してしまうからです。そして、これもまた、超国家権力体のシナリオであるかもしれず、同組織は、どの様な展開になっても、あるいは、どちらが勝利しても自らは安泰なように準備しているはずなのです。

 

 このように考えますと、日本国民は、自国の防衛、並びに、国際法秩序を維持するために中国と闘うと共に、超国家権力体に対しても防御を固める必要がありましょう。従来の二正面戦争とは次元が異なる、水平と垂直の両方向における3次元対応の防御を同時遂行しなければならないのです。そして、この問題は、日本国に限ったことではありません。近現代の戦争を三次元構造として捉え、第3次世界大戦もまた’3次元戦争’であるとする認識なくしては、人類は、今般の危機に対して適切に対応できるとは思えないのです。

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