万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

既に見破られている北朝鮮の‘核施設廃棄ショー’

2018-05-21 14:55:51 | 国際政治
【激動・朝鮮半島】「取材1人当たり300万円」ぼったくり? 北核実験場廃棄“ショー化”の恐れ
北朝鮮の‘金王朝’には、代々演出好きのDANが受け継がれているようです。先代の金正日委員長は、外部から情報を一切遮断する閉鎖国家化を徹底する一方で、ハリウッド映画には夢中になっていたそうです。今日、北朝鮮において独裁者として君臨する金恩正委員長もまた、現実とスクリーンの境界が曖昧な危ういカルト的な世界に住んでいるように見えます。

 来月12日の米朝首脳会談を前にして、北朝鮮は、豊渓里核実験場を廃棄する方針を表明し、その日程等を発表しました。おそらく、経済制裁解除の条件として、アメリカが核放棄に向けた具体的な行動を採るように求めたため、北朝鮮は、この措置を以って、解除条件を満たしたと主張したいのでしょう。しかしながら、“具体的な行動”ではあっても、それが、‘完全、検証可能かつ不可逆的な核廃棄(CVID)’の要件を満たさないことは言うまでもありません。

 そもそも、豊渓里核実験場が北朝鮮国内に建設されている唯一の核実験施設であるかどうかは分かりませんし(他の場所に既に設備等を移動させている可能性もある)、IAEAによる査察も受け入れていませんし、他に核施設があれば不可逆的でもありません。また、既に完成している核弾頭については“具体的な行動”は、全く見られないのです。これでは、経済制裁解除からはほど遠いのですが、何故か、北朝鮮は、‘子供だまし’のショーを演出すれば、アメリカをはじめ、国際社会が騙されると信じているらしいのです。

 この恐ろしいぐらいの北朝鮮の現状認識の低さは、閉鎖空間にあって、常に演出を以って国家を統治してきた北朝鮮という国の宿命なのかもしれません。かつてハリウッド映画に、誕生と同時にドーム状の巨大なセットの中に閉じ込められ、それが現実世界ではなくセットであるとは知らされずに成長し、24時間‘ショー’を演じさせられた青年が主人公の『トゥルーマン・ショー(1998年公開)』という題名の作品がありました。北朝鮮とは、まさに、国そのものがその撮影用の巨大なセットであるかのようです。『トゥルーマン・ショー』では、主人公の青年は、自らが生きている世界が虚偽、虚構であることに気が付き、恐怖心を克服して島から脱出するのですが、一方の金委員長は、自ら率先して虚偽の世界を演じているのですから、‘トゥルーマン’ならぬ、『フォールスマン・ショー』の主人公であるのかもしれません。そして、この『フォールスマン・ショー』の主人公は、『トゥルーマン・ショー』の主人公とは逆に、視聴者に対して自らが演出した虚偽の世界こそ“現実”であると思い込ませようとしているのです。

 しかも、豊渓里核実験場の廃棄に際しては、その取材をアメリカ、中国、ロシア、イギリス、韓国の五か国に限定しつつ、ビザや航空料金を含めて取材記者から一人当たり凡そ300万円の支払いを要求していると報じられています。北朝鮮にとりましては、核放棄を演出する‘政治ショー’に留まらず、実験場の廃棄は国費を投じて準備した‘スペクタクル・ショー’なのですから、入場料を採るのは当然と考えているのかもしれません。今月23日から25日までの間とされる破棄当日は、取材陣が腰を抜かすほどの迫力ある爆破シーンが演出されることでしょう。加えて、その‘興行収入’が、実質的には‘経済制裁の抜け道’ともなるのですから、北朝鮮は、国際社会を愚弄しているしか言いようがありません。

 劇場国家であり、虚実を区別するどころか、国際社会を虚偽の世界に引きずり込もうとする北朝鮮を、どのようにしたら現実に引き戻すことができるのでしょうか。先ずは、既に‘ショー’であることが国際社会から見破られている‘現実’を認識させることが、この問題の解決への一歩となるかもしれないと思うのです。

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