万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

米イラン核合意再交渉提案が示す教訓―対北譲歩は無意味

2018-04-26 15:11:48 | 国際政治
 アメリカのトランプ大統領は、大統領選挙戦のキャンペーンにあって既に2015年に成立した米・イラン核合意の破棄を主張しておりました。今般、アメリカを訪問したフランスのマクロン大統領は、今年1月に表明したアメリカの再交渉方針に応える形で、トランプ大統領に対してイランの非核化を実現すべく、具体的な修正案を提示したと報じられています。

 マクロン仏大統領による米イラン核合意の再交渉案の提起は、制裁解除で獲得したイラン利権等を背景にこれまで合意の維持に固執してきた同国でさえ、内容が不十分であったと認識していることを意味しています。このため、具体的な修正内容は、米・イラン両国の双方が受け入れ可能な条件を探ったのか、(1)2025年に設定した核開発制限期限の延長、(2)弾道ミサイル開発の停止、(3)武装組織支援の制限とされています。フランスとしては、トランプ政権が一方的に核合意を破棄し、経済制裁が再開されるよりは、アメリカと歩調を合わせながら修正合意による枠組維持を次善の策としたのでしょう。もっとも、上記の主要3項目には、アメリカが要求してきた査察の強化も抜けており、トランプ政権を満足させる内容とは言えないかもしれません。

 それでは、もう一方の当事国であるイランの対応はどうでしょうか。これまでのところ、イランは、核合意成立時の合意内容から一歩も動かない構えを見せています。イランにとりましては、トランプ政権が進める再交渉の動きこそ“合意違反”であり、NPTからの脱退をも仄めかしつつ、合意修正には応じない方針を表明しているのです。そして、このイランの拒絶こそ、実のところ、同国が核開発を未だに断念していない証でもあります。仮に、2015年の合意にあって“核の放棄”に合意したのであれば、修正案も快く受け入れたはずであるからです。乃ち、イランは、核開発の余地を残すからこそ合意したのであり、真の目的は、経済制裁の解除による国力の充実であり、その先には、資金力と技術力を高めた上での核開発の再開であったとも推測されるのです(“核放棄”の合意ではなく“核開発の一時停止”の合意に過ぎない…)。イランの修正拒絶姿勢は、むしろ、同国が核開発・保有への執念の炎を燃やし続けていることを、国際社会に確信させているのです。

 このように考えますと、国際社会の目的が核拡散防止にあるとしますと、現行の米・イラン核合意は、その目的に対しては不十分であるどころか、経済制裁の解除がイランにもたらす資金・技術力が核開発をむしろ加速化させる点を考慮すれば、より危険でさえあります。そして、この米・イラン核合意をめぐる顛末は、北朝鮮問題に際しても、重要な教訓を与えています。それは、中途半端な合意は問題の先延ばしに過ぎず、将来的には事態を一層悪化させると言うものです。イランの場合には、石油利権等が絡んでおり(もっとも、北朝鮮の場合もウラン等の鉱物利権が関係する…)、一筋縄ではいかない複雑さがありますが、米朝首脳会談を間近に控えた今、米・イラン核合意の二の舞にならないよう、十分な注意が必要なのではないかと思うのです。

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