万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

米朝首脳会談費負担の謎

2018-06-09 15:35:33 | 国際政治
高級ホテル周辺、交通規制開始…シンガポール
<いよいよ米朝首脳会談が開催される6月12日が近付いてまいりましたが、ここに来て、非核化とは直接的には関係のない問題が持ち上がっているそうです。それは、同会談の費用負担に纏わる謎です。

 米朝首脳会談の開催地はシンガポールのサントーサ島であり、島内の高級リゾートホテル「カペラ・シンガポール」がその会場となります。ただし、両首脳とも同施設に宿泊するわけではなく、先遣隊の姿が目撃されたことから、北朝鮮の金正恩委員長は、シンガポール中心部の高級ホテル「セントレジス」に宿泊するのではないか、とする憶測が広がっています。シンガポール政府は、両施設周辺の地域を「特別行事区域」に指定しており、既に交通規制も始まっていると報じられています。警備やテロ対策も含めて、米朝首脳会談に要する費用は相当額に上るものと推測されますが、費用負担については幾つかの謎があります。

 第1の謎は、宿泊費以外の米朝首脳会談に付随する費用は、どの国、あるいは、誰が負担をするのか、というものです。上述したように、セキュリティー一般はシンガポール政府が担っていますが、その費用も開催地の国の国庫から支出されるのでしょうか。仮に、会談の影響で休業状態となる会場や米朝両国の一行が宿泊するホテル、あるいは、その他周辺の商店等の損失まで補償するとしますと、その額は決して少なくはないはずです。オリンピック等の国際イベントの誘致と同じく、自国の宣伝効果を考慮して自己負担を当然と考えているのでしょうか。あるいは、シンガポールを開催地に選定した手前、アメリカ政府が負担するのでしょうか。本来、この問題を引き起こした張本人は北朝鮮ですので、請求書は北朝鮮に送られるべきなのですが、不思議なことに、北朝鮮が負担すべきとする声は聞こえてきません。

 第2の謎は、金委員長の宿泊費の払い手です。アメリカ政府は北朝鮮分の費用を引き受けるつもりはないと明言しているため、核兵器禁止条約を取り纏めた功績でノーベル平和賞を受賞したICANが費用負担に名乗りを挙げています。しかしながら、仮に、北朝鮮が非核化を拒絶した場合でも、ICANは、支払いに応じるのでしょうか。また、会談の行方に拘わらず、本来、活動費となるはずのノーベル賞の賞金や寄付金が、独裁者の贅を尽くしたホテルでの滞在費に費やされるとしますと、納得できない人々も現れることでしょう。

 そして第2に関連して第3の謎は、金委員長は、シンガポールの滞在費の支払いに窮するほど、“貧しい”のか、という疑問です。メディアの報道ぶりでからしますと、厳しい経済制裁を受け、かつ、最貧国である北朝鮮は外貨不足が深刻であり、その支払い能力はない、というものです。しかしながら、独裁者が世界屈指の大富豪であることは、共産主義国の常です。中国の毛沢東然りです、キューバのカストロ然りです。表向きは、貧しい人々のために暴力革命を起こしたように見せかけながら、その実、独裁者たちは、ちゃっかりと私腹を肥やしているのです。北朝鮮の歴代独裁者たちも例外ではなく、タックスヘブンの世界各地の銀行に隠し財産を保有していることでしょう(近年、スイスは規制が強化されたため、秘密口座が存続しているかは不明…)。国民が貧困に喘いでいる国と言う北朝鮮のイメージからしますと費用請求は非人道的にも見えますが、建前とは違い、金一族は裕福なのですから、滞在費の請求書は北朝鮮に向けて送るべきです。北朝鮮、否、金一族が保有する外貨を減少させる効果も期待できますので、一石二鳥なのです。

 以上に米朝会談の費用に纏わる謎について述べてきましたが、米朝首脳会談をめぐる費用負担問題からは、国際社会における‘偽善’の問題も見えてきます。そして、これらの‘偽善’が北朝鮮を暗に擁護する役割を果たしているとしますと、米朝会談では、アメリカが用心深く注意を払うべきは、北朝鮮のみではないのではないかと思うのです。

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