万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

英国民投票は国家対市場の構図-古くて新しい問題

2016-06-23 14:59:28 | 国際政治
EU離脱支持、1ポイントリード=世論調査
 注目を集めてきたEUからの離脱を問うイギリスの国民投票は、遂に投票日を迎えました。直近の世論調査では、離脱支持が1ポイントほど上回っていると報じられており、最後まで結果が分からない展開となっております。

 EU離脱派とEU残留派との対立軸を見ますと、終盤に至るほどに、国家対市場という古くて新しい対立構図が浮かび上がってきたように思えます。現実の世界では、通常、政治と経済とでは、異なる秩序の下にあるものです。共産主義国家では、理論上、政経は一元化されており、その硬直性(自由な経済空間の消滅)が、ソ連邦を崩壊させた要因となりました。

 その一方、自由主義国、特に第二次世界大戦後の西側諸国では、政治の分野では国民国家体系が構築される一方で、経済の分野では、個々に経済活動の自由を認める市場経済が独自の発展を遂げています。国民国家体系は、民族(nation)を基本的な枠組みとしますので、分離・独立に見られるように、政治的単位は細分化の方向へと向かいますが、市場経済では、グローバリズムと称されるように、国境を超えた拡大志向を特徴とするのです。つまり、両者は、分化と拡大という全く逆方向のベクトルを持つのです。この二つの系は、どちらか一方のベクトルが強く働く、あるいは、両者が同時に自らの目指す方向にアクセルを踏みますと、分裂や崩壊の危機に瀕します。EUが、市場経済の発展に応える形で、複数の主権国家から構築された地域機構であることを考慮しますと、EUとは、まさしく、両者のバランスの上で安定を保っていたとも言えます。

 イギリスの情勢、並びに、近年のEU懐疑主義の躍進は、EUにおいて保たれてきた国家と市場との間のバランスが崩れつつあることの現れであるかもしれません。危機に瀕するEUは、国家と市場との調和点はどこにあるのか、という根本問題を、改めて問うているように思えるです。

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