万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

シリア国軍は国民の盾となれ

2012年06月01日 11時12分18秒 | 中近東
シリア各地で衝突、98人死亡 民間人処刑の情報も(朝日新聞) - goo ニュース
 シリアでは、アサド体制に抗議する国民に対する痛ましい虐殺が続いており、死傷者は、日に日に数を増すばかりです。調停案も破綻寸前であり、シリアの混乱は、一向に収まりそうにもありません。

 国民に銃口を向けた時点で、アサド大統領が、統治者として資格を失ったことは歴然としています。政府とは、国民を護るために存在するのですから、アサド大統領は、シリアと国民の守護者としての役割を放棄し、国家権力を私物化したのです。シリア国軍もまた、民兵組織と共に、アサド大統領の武力弾圧の手先となり、国民の命を無残にも奪っています。独裁体制を葬ったリビアでは、国軍や政府幹部の離反が相次ぎ、政権崩壊への転換点となりました。シリアにも、国軍と袂を分かった自由シリア軍が存在しているそうです。政府側からの離反者が増えれば、強固と見られるシリアの体制もまた、自ずと揺らぐはずです。

 シリア国軍が、本来闘うべき相手は、国民ではなく、国民を虐待する”暴君”なのではないでしょうか。シリア国軍の中から、虐殺の危機に晒されている国民の盾となる勢力が現れれば、混迷にあるシリアに、一筋の希望の光が差し込むのではないかと思うのです。

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2 コメント

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Unknown (兼業農家)
2012-06-01 12:05:40
理念としては、仰るとおりのですが。「アラビアのロレンス」の時代(第1次世界大戦)から、アラブ世界は、部族社会です。つまり、国、国家という概念が希薄なのです。その結果、件旅行を持った一族が全ての利権を掌握し、軍隊も一族に忠誠を誓う。このような、未だ近代国家を形成したことが無い人々には、なかなか理想は届かないようです。そういう意味では、かつてのオスマン・トルコ帝国などのように、宗教を軸として、シーア派、スンニ派と分かれてグループを作るほうが、たやすいように思います。何はともあれ、このシリアの状況は、アラブの春に便乗した、欧米のシーア派枢軸つぶしであり、アサドもそれを知っているため、まだまだ解決は遠いでしょう。
兼業農家さま (kuranishi masako)
2012-06-01 21:32:03
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 アラブの春は、欧米の陰謀との説はありますが、国民の多くが、独裁体制を拒否し、自由や民主主義を求めていることを、過小評価してはならないと思うのです。シリアでは、国民の7割はスンニ派であり、アサド一族を含め、国民の一割に過ぎないシーア派のアラウィ派が、権力を独占している状況のようです(国軍がアラウィ派で占められているならば、離反の望みは薄い…)。これでは、スンニ派の国民多数が、反政府派として抵抗運動に身を投じるのも当然の成り行きです。平和裏の解決を望むならば、話し合いの場を設け、宗派別の連邦を形成するといった合意が必要であり、現政権の武力弾圧は、言語道断な蛮行です。このまま武力弾圧が続きますと、やはり、国際社会の介入を受けることになるのではないでしょうか。

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