万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

元統一教会被害者の救済は献金等の返還・賠償支払いで

2022年10月05日 12時18分10秒 | 国際政治
世界平和統一家庭連合(元統一教会)との関係が批判を浴びている現状に対応すべく、自民党は、「霊感・悪徳商法等の被害救済に関する小委員会」を設け、霊感商法や多額の献金などが問題視されている同教団から被害を受けた信者やその家族に対する救済措置を設ける方針なそうです。具体的な対策としては、相談体制の充実や再発防止を目的とした法改正が挙げられています。しかしながら、同問題の被害が金銭的なものである以上、最も必要とされているのは、教団側からの被害者への献金等の返還や賠償の支払いではないかと思うのです。

今般の救済策から垣間見える自民党の基本戦略は、自党と同教団との関係に触れることなく、新興宗教団体の反社会的行為として片付けてしまう‘他人事作戦’のようです。霊感商法や悪徳商法の取り締まりに特化する、あるいは、矮小化すれば、政治と宗教との癒着問題に立ち入らなくても一先ずは解決を装うことができるからです。言い換えますと、同教団をかくも巨大な組織に育てた責任が自らにあることには頬被りをし、あたかも被害者を救おうとする救済者に見せかけようとしているのです。霊感商法や悪徳商法に限定すれば、連立相手である公明党の支持母体である創価学会に火の粉が飛ぶこともありませんので、一石二鳥でもあるのでしょう。真に必要とされている宗教団体による選挙協力、政治動員、秘書等の派遣を禁じる法改正も遠のいてしまいます(公明党の存在は、現行の憲法にあっても違憲では・・・)。

その一方で、報じられているように相談室を設置しても、法改正を行なったとしても、おそらく、世界平和統一家庭連合にとりましては、教団存立の危機に陥るほどのダメージとは与えないかもしれません。既に莫大な資金を日本国内の信者から吸い上げていますし、法改正によって解散を命じられない限り、信者からの献金システムは維持されるからです(同教団と密接な関係にあった萩生田政調会長は、既に解散は難しいと述べている・・・)。布教方法の偏向や献金額の制限等によって資金源は細っても、教団は生き残ってしまうのです。また、政治との関係についても、教団側は、自らと‘同じような考え方の政治家‘への応援は続けるとも述べていますので、結局、両者の関係は地下に潜ってしまうこととなりましょう。

今般の被害者救済は、いわば、自民党、世界平和統一家庭連合、公明党、創価学会にとりまして最もダメージを低く抑えることができる‘最適解’なのでしょうが、この方法では一般の国民も教団信者被害者も取り残されてしまいます。そこで、先ずもって試みるべきは、教団へ提供された資金を取り戻すことです。安部元首相暗殺事件の容疑者である山上の供述が事実であれば、教団への献金は、それが自発的なものであれ‘搾取’や‘詐欺’と言っても過言でありません。今般、教団側は、献金額を月収の三分の一を超える場合には、家族の同意を確認するとした自己改革案を公表していますが、裏を返しますと、三分の一以下であれば、家族の同意なく献金ができることになりましょうし、家族の同意があれば、三分の一以上献金できることにもなります。

霊感商法につきましては、刑法、不当景品類及び不当表示防止法、消費者契約法等を根拠として、法律上の罪や違法行為を問うと共に損害賠償を求める民事裁判を起こすことできます。購入した壺において教団側が説明したような霊験や効果が現れなかったことを証明すれば、詐欺罪や不当表示が成立するかもしれませんし、消費者契約法でも、契約の取消し並びに返還請求ができる可能性があるそうです。それでは、信者の献金はどうでしょうか。

信者が定期的に教団側に提供するお金については、献金、寄付、贈与、会費の何れに当たるのかという議論があるそうです。もっとも、世界平和統一家庭連合は、献金と表現していますので、法律上は献金として捉えられているのでしょう。ところで、献金となりますと、贈与等とは異なり、政治献金と同様に受け取る側の活動目的が限定されます。信者は、教団の宗教活動を資金面から支えるために、自らのお金を宗教団体に提供していることとなるのです。このため、宗教活動からの逸脱がありますと、返金請求が認められるケースもないわけではありません(福岡地方裁判所平成12年4月28日判決・・・)。同教団は、水面下では反社会的活動を行なってきましたし、信者に対して自らの侮日・反日的な政治活動の実態を伏せてきた可能性もあるからです(もっとも、同教団は韓国の宗教団体ですので、信者の多くは朝鮮半島出身者であり、侮日・反日活動を黙認していた可能性も・・・)。また、祖先が地獄で苦しんでいると言った畏怖誤信があり、「社会的に相当な範曲を逸脱した行為」として勧誘自体にも違法性があれば、民事上の損害賠償が認められたケースもあります(東京地方裁判所令和2年2月28日判決など・・・)。

今日の新興宗教団体は、潤沢な資金力をバックに政治に対しても介入してきたのですが、信者や元信者からの返金や賠償請求やのラッシュが起きれば、その存立基盤が崩れることとなります。自己保身から政治サイドが動かないのであれば、司法による救済のほうが、様々な反日カルト教団を消滅に向かわせるという意味において、余程、効果的なのではないかと思うのです。

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