万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

「こども庁」から見える日本国の危機

2021年04月14日 12時11分49秒 | 日本政治

菅政権が唐突に打ち出した「こども庁」案。次期総選挙の’目玉’に掲げる狙いとも説明されていますが、国民からの評価は芳しくないようです。親中派で知られる二階幹事長が陣頭指揮を執り、新自由主義者好みの’骨太’というフレーズまで付されているのですから、国民が身構えるのは当然と言えましょう。トップ・ダウン型の上からの’改革’によって、またもや日本国を破壊するのではないかと…。

                 

既に共産主義と新自由主義との合作のような雰囲気が漂っていますが、全ての省名がその実態とあべこべである『1984年』の国家機関にも登場してきそうなネーミングでもあります(’こども省’?)。子供たちが、それぞれの個性や才能を生かし、おおらかに伸び伸びと育ってゆく環境を整えるというよりも、その真の目的は、この世に生まれ出でると同時に全ての子供たちを国家の管理機構の中に組み込んでしまうシステム造りなのかもしれません。共産主義も新自由主義も、国民の前に掲げる理想とは真逆に、行き着く先は人間の画一化と生涯にわたる徹底管理なのでしょう。今般の「こども庁」も、それを推進する人々の顔ぶれを思い起こしますと、子供たちの未来を危惧せざるを得ないのです。’こども省’の真の姿は、悪い大人たちが仕切る’おとな省’なのかもしれないのですから。

 

しかも、「こども庁」の具体的な所管の範囲や権限等についても、諸説入り乱れています。小学校から中学校までの義務教育課程を全て同庁に移管するという案もあれば、主たる移管対象は、虐待対策(厚生労働省、内閣府、法務庁)、不妊治療支援(厚生労働省、内閣府)、妊娠・出産支援(厚生労働省、内閣府)とする説もあります。仮に、後者に重点が置かれているとしますと、国民は、’ゆりかごから墓場まで’ではなく、その出生以前の段階から国家の管理下に置かれてしまうのかもしれません。

 

省庁の再編が必要ならば、上部に「こども省」を垂直的に創設しなくとも、事業の分割や一部権限の移譲といった、水平的な統廃合によっても行うことができます。現状を見ますと、先に挙げた虐待対策、不妊治療支援、妊娠・出産支援については、何れも厚生労働省と内閣府が重複している点が問題視されているのですから、厚労省に一本化すれば済むお話です。しかも、あるいは、子供については、多くの方面からのウォッチやケアがあるほうが安全ですし、子供の立場に立ちますと安心ということにもなりますので、敢えて制度的な多方面性をプラスに評価し、複数の省庁が相互にチェックしながらケアする体制を整備するという逆の方向性もありましょう。一元化のみが、必ずしも子供たちにとりまして望ましいとは限らないのです(なお、権限を移管する側の省庁から見ますと、横割りになる点については、4月6日付の本ブログ記事で指摘…)。

 

政治家が、あらゆる政策を提案するに際して、‘国民のため’と説明しないはずはありません。‘自分たちのみの利益ため’と言おうものなら、国民から反対の大合唱が返ってくることは必至です。国民を騙せるようなもっともらしい理由やカバー・ストーリーを造ることにかけては、政治家は、プロ中のプロなのです。こども庁についても、政府の説明を鵜呑みにしてはならないのですが、それでは、国民は、同案の実現を阻止することができるのでしょうか。

 

自民党は、こども庁の創設案を選挙公約に含める予定ですので、仮に、次期選挙で自民党が勝利して政権与党の座を維持すれば、同政権は、’選挙に勝ったのだから、国民からのお墨付きは得た’として、同庁を発足させることでしょう(デジタル庁の創設に至っては、選挙も経ていない…)。そこで、こども庁の創設に反対する国民は、野党に一票を投じればよい、ということにもなりそうなのですが、ここに今日の日本国が抱える重大な危機が見えてきます。それは、野党側も、こども庁の創設そのものには反対しておらず、立憲民主党が検討している対案も「子ども家庭庁設置法案」というのです。つまり、次期総選挙にあってどちらが勝利を収めたとしても、選挙後には’こども庁の創設’が実現してしまうのです。これでは、国民は、事実上、こども庁の創設の是非に関する選択肢を失っていることともなりましょう。

 

今日の民主主義国家における議会選挙は、国会議員の選出のならず、国民の政策選択の場としても機能しています。しかしながら、与野党ともに公約とする政策が凡そ同じであれば、日本国の民主主義は形ばかりとなりましょう。国民が目にしているのは、政界による悪しき’政治談合’、あるいは、こども庁の創設の指令が外部勢力からのものであれば、政界全体の’悪代官化’なのです。国民世論はこども庁創設に対して否定的ですので、同問題は、日本国にあっても国民投票制度を導入する必要性を示してもいるのですが、このまま

では、国民の政治不信は深まるばかりではないかと思うのです。

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