万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の常習的虐待問題-見て見ぬふりをするのも罪では?

2019-12-05 16:18:54 | 国際政治
 アメリカの議会下院では、先日成立した香港人権民主主義法に次いで、ウイグル人権法案を賛成407票、反対1票の圧倒的な多数を以って可決しました。本法案の可決は、党派を超えてアメリカ政界が、中国の人権問題に対して厳しい姿勢で臨んでいることを示しています。同盟国であるアメリカが中国に対して圧力を強める中、来春に習近平国家主席を国賓として迎えるなど、日本国政府の中国に対する‘寛容な対応’に対して不甲斐なさを感じている国民も少なくないのではないかと思います。

 中国政府によるチベット、ウイグル、並びに、香港に対する暴力は、昨今、痛ましい事件が相次いでいる虐待問題に類似しています。その多くは家庭内で起きており、家族の全を護り、安らぎを与える場であるはずの家庭が、親が子の、子が親の命をも殺める修羅場と化しているのです。中国の虐待問題と家庭内暴力との共通点としては、以下の諸点を挙げることができます。

中国は、これらの地域における人権問題について国際的な批判を浴びる度に、国際社会の主要な原則の一つである内政不干渉の原則を持ち出して、外部からの介入を拒絶しています。家庭内暴力にあっても、虐待する側は、先ずは自分たちの家庭内での私的な出来事であると主張し、虐待を目撃した近所の人々や通報を受けた児童相談所の職員などが住居を訪問しようものなら、恐ろしい剣幕で追い返します。なお、中国の場合、南シナ海問題でもこの原則を持ち出していますので、公道に勝手に私物を持ち込んで占拠し、私道化している違法な迷惑住民と云うことになりましょう。第一の共通点は、内政不干渉の原則を、自らの虐待行為の正当化に利用する態度です。

家庭内暴力は、しばしば血縁関係のない義理の親子において発生する傾向が見られます。もちろん、継親・継子の関係にあっても実の親子以上に深い愛情が育まれるケースもありますし、偏見を助長するとしてマスメディアも報道を控えがちです。しかしながら、『シンデレラ』や『白雪姫』といったグリム童話、あるいは、日本国の『落窪物語』でも語られるように、継母による継子虐めは古今東西を問わずにお決まりのストーリー設定であり、心理的な要因として血縁関係の有無が虐待と関連していることは否定せざるを得ないように思えます(‘シンデレラ現象’と呼ばれているらしい…)。中国のケースでは、チベット人もウイグル人も、中国国民のマジョリティーである漢人とは異なる民族であり、血縁関係のある同族ではありません。しかも、不法な手段で強引に家族の枠組に引きずり込まれた人々です(誘拐に近い?)。香港の場合には、血縁関係がありながらも世代間の価値観や人生観の違いから虐待に及ぶケースに喩えることができましょう。

第3に、両者とも、その暴力性に際限がないことです。上述したように、家庭内の虐待でも、虐待は他者の目に触れない内部の密室で行われます。中国もまた、これらの地域において海外のメディアの活動は制限しており、他者の視線を気にせずに秘密裏に行うことができます。このため、命にかかわるほどに虐待がエスカレートし易いのです。

国家レベルでの虐待問題としての家庭内暴力については、社会全体で解決に取り組む方向に向かっております。日本国でも2000年には「児童虐待防止法」が制定され、同法は、議論はあるものの、親による体罰をも禁止する法改正も行われました。家庭内の虐待については見て見ぬふりをせず、行政が介入することで救える命を救えるようになったのです。それでは、国際レベルでの虐待問題はどうでしょうか。

国際法の父とも称されるヒューゴ・グロチウスは、戦争を絶対悪として全否定するのではなく、幾つかの要件を合致する場合には正しい戦争として認めています。その中の一つが暴君による自国民の虐待なのですが、戦争に至らないまでも、国際社会は、他国で起きている虐待問題についてはそれを阻止するための介入を正当な行為として認めているのです。今日でも、ジェノサイド禁止条約は、特定の民族性を消し去る行為を国際犯罪として定め、如何なる国であれ組織であれ、これを禁止行為としているのです。アメリカのウイグル人権法案は、この点に鑑みましても正当な根拠を有するのです。

中国との経済関係を重んじるばかりに同国の虐待行為に目を瞑る日本国政府は、隣人の虐待に対して見て見ぬふりをし、救える命を救おうともせずに放置しているに等しいのではないでしょうか。日本国政府はともかくとしても、少なくとも日本国民の多くは、習主席を心から歓迎することはできないのではないかと思うのです。

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