万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北朝鮮との合意が難しい理由-‘抜け道見つけ’の名手

2018-06-11 15:14:43 | 国際政治
米朝首脳会談あす開催 両国代表団が詰めの協議
米朝首脳会談を明日に控え、両首脳とも空路で既にシンガポール入りしている模様です。成り行きについては正確に予測することはできませんが、北朝鮮との合意は極めて難しい、ということだけは、少なくとも言うことができます。

 合意を困難とする最大の要因は、両国の条件の不一致、即ち、北朝鮮側による、アメリカが要求するCVIDに基づく「完全な非核化」の拒絶なのですが、その他にも、阻害要因がないわけではありません。その要因とは、北朝鮮という国が、法の抜け道を見つけることにかけては‘悪の天才’である点です。

この才は、1994年の米朝枠組み合意が崩壊した過程を検証すれば一目瞭然です。当時、北朝鮮はプルトニウム方式による核開発を進めていたため、合意文書では、プルトニウム方式を前提とした核開発放棄の手続きを定めていました。この限定的な表現に目を付けたのが北朝鮮であり、その後、核開発の方法をウラン方式に切り替え、枠組合意には違反していないと公然と言い放つのです。忍耐強い交渉の末、ようやく成立した‘非核化合意’はあえなく空文化し、ここに、対北交渉に臨んでのアメリカ側の‘甘さ’が露呈することにもなったのですが、今般の米朝首脳会談にあっても、同様の失敗が繰り返される可能性があります。

例えば、非人道的、かつ、大量虐殺を可能とする兵器は、核兵器に限られてはいません。実際に、無法国家である北朝鮮は、生物・科学兵器の開発にも力を入れており、昨年2月にマレーシアで発生した金正男暗殺事件においても、VXガスが使用されたとする指摘もあります。同国とシリアとの軍事面における特別な技術協力関係を考慮すれば、北朝鮮もまた、サリン等の兵器を既に開発・保有していることでしょう。また、核の運搬についても、アメリカがとりわけ懸念を表明しているICBMの他にも、潜水艦発射型のSLBMもありますし、よりローテクな手段としては、核兵器を秘密裏に米国への持ち込み、工作員に命じて米本土を核攻撃させることも不可能ではありません。あるいは、より強力なレーザー兵器やEMP爆弾等を開発し、アメリカのみならず、他の周辺諸国を恫喝するかも知れないのです。

北朝鮮がかくも狡猾な国であることを考慮しますと、北朝鮮を遂にCVIDによる「完全な非核化」へと追い込んだ、とアメリカが信じ込み、その合意の成立を外交的勝利として誇ったとしても、北朝鮮側は、合意文書の中に既に抜け道を見つけ出す、あるいは、秘かに抜け道を準備しており、‘アメリカを上手に騙した’と内心ではほくそ笑んでいるかもしれません。もっとも、朝鮮戦争の終結がセットであれば北朝鮮は反米政策を放棄するので、上述した懸念は杞憂との意見もありましょうが、それでも、米中対立が抜き差しならない状況に至れば、北朝鮮が中国に靡き(軍事クーデタや中国人民解放軍による政権奪取もあり得る…)、再度、アメリカに牙を剥く可能性は否定できません。

何れにしましても、米朝首脳会談にあっては、アメリカが‘抜け道塞ぎ’を怠りますと、合意文章の上ではアメリカの外交的勝利であっても、実際には、将来的に北朝鮮側の騙し討ちに遭うという不名誉な結果となりましょう。トランプ大統領が名実ともにCVIDによる「完全な放棄」を実現できるのか、全世界は、固唾を呑んで見守っていると思うのです。

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