万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

お相撲女人禁制は‘時代遅れの慣習’か?

2018-04-14 14:53:26 | 社会
 先日、舞鶴市で催されていた春巡業において、倒れた多々見良三市長を救命しようとして土俵に上がった女性に対し、土俵から降りるようアナウンスがあったことが発端となり、目下、お相撲の女人禁制に関する議論が湧きあがっています。当論争の基本的な対立軸は、伝統vs.性差別なのですが、果たして、お相撲の女人禁制は、女性を差別する“時代遅れの慣習”なのでしょうか。

 差別論者には、お相撲が女人禁制となったのは明治以降であり、江戸時代には、女相撲が存在していたとする意見も聞かれます。しかしながら、女相撲はあくまでも興行であり、神事ではなかったはずです。今日、相撲が国技とされるのは、人ではなく神様を楽しませる神事としての伝統を引き継いでいるからであり、この点、女相撲論はお相撲の歴史の一面しか見ていないこととなります。また、神道は女性を穢れと見なすとする批判も見受けられますが、伊勢神宮の斎宮、上賀茂神社の斎院があり、また、巫女さんは神職として神殿にて奉仕しております。神社の神域においてしばしば見られる女人禁制の多くも、その理由は穢れではなく、山の神様のようにお祀りされている神様が女神であることに依ります(女神の他の女性に対する嫉妬を回避しようとする伝統)。

 仮に女人禁制が“時代遅れの慣習”であるならば、歌舞伎もまた批判の対象とならざるを得ません。歌舞伎も歴史的には神事と無縁ではありませんが、その創始者は、出雲の阿国と言う女性です。しかしながら、江戸時代までには‘女人禁制’が慣習化しており、今日に至るまで、男性が女性役を務める女形の伝統が引き継がれています。仮に、歌舞伎に女性が出演できるように改革されたとしますと、それは、最早、歌舞伎とは言い難く、一般の演劇との違いは殆どなくなります。明治以降の芸能史を見ましても、宝塚歌劇団では女性が男性役を演じますので、歌舞伎とは逆に‘男子禁制’ですし、芸能や芸術の世界では、男女別の楽団や舞踏団等は多いのではないでしょうか(例えば、ボーイソプラノ合唱団には声質が違うので女の子は参加できない…)。

 加えて、スポーツとは、基本的には男女はそれぞれ別々に試合が行われる世界です。格闘技を見れば、お相撲には、今日、女性同士で取り組む女相撲はありませんが、柔道やレスリングは男女別です。その理由は、おそらく、体格や体力には男女差がありますので、仮に、両者を区別しませんと、女性が淘汰される、あるいは、怪我を負う結果を招きかねないからなのでしょう。子供相撲にあっても、女子が出場を認められなかったケースがニュースで大々的に報じられていましたが、仮に、腕力に優る男子に土俵下に勢いよく投げ飛ばされた女子が生涯に亘って傷跡が残るような負傷でもしようものなら、女子の参加を許した主催者側の責任が厳しく問われる事態に発展するはずです。

 左派の人々は、‘個々人の違いをお互いに認め合おう’と合唱する一方で、常にその方向性は、あたかも選択肢のない一本道のように性別を消し去った画一的な平等に向かっています。しかしながら、多様性の相互承認と平等待遇が、しばしば矛盾することにも気が付いていないようなのです。つまり、多様性を相互承認すればこそ、場合によっては敢えて分ける、即ち、区別を必要とするとする発想が欠如しているのです。生来の違いを認めた上で、双方の感情等にも配慮した区別を行うことこそ、思いやりのある、賢明な対応と言うこともあります。例えば、双方の感情を慮って全世界的に御化粧室は男女別ですし、公衆浴場なども同様です(かつては、男女混同の方が野蛮で非文明的として批判された…)。

 もっとも、この時期に、マスメディアがかくも女人禁制を問題視する報道にかくも熱心なのは、単なる女性差別反対というよりは、あるいは、女性天皇や女系天皇の実現を望む勢力の暗躍があるのかもしれません。

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コメント (19)   この記事についてブログを書く
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19 コメント

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Unknown (本田伸樹)
2018-04-14 16:08:00
倉西先生。
いつもご指導ありがとうございます。
私は、この大相撲と女性の問題についてセンセーショナルに報道されることに、本当に不快感を覚えます。
そもそも、大相撲の土俵に女性が上がれないのは、慣例的に主催者である日本相撲協会が採ってきたルールであり、いかに日本相撲協会が公益法人であるから第三者の立場で監視しなければならないと言っても、それは窮屈な論争に陥るのでは、と危惧しています。
一方で、女性に対する大相撲の開放を唱える主張には「政治的な」バイアスさえ感じるのです。
日本は、そもそも皇祖神が女性の天照大御神であったように、女性主体、女系社会でありました。
それは、日本人の祖先が農耕民族であったことに関係すると思います。
農耕民族は、基本定住し、継続的なコミュニティーを保ちながら生存していました。
そこには女性の労働力が重視されたのは言うまでもなく、さらに一族、及びコミュニティーの規律を維持することに関しては女性が主体になってきたのではないかと思います。
古代日本のシャーマンの存在は、北方民族からの影響も主張されていますが、私は、こうした古代日本社会の女性の位置づけの一環だと考えております。
一方で、狩猟・遊牧民族は、女性は家畜と同様に男性族長の財産と考えられ、全く主体性を認められませんでした。
それは「旧約聖書」のアブラハムの遊牧時代と、ルツ・ナオミの農耕時代の女性の扱いの違いを見れば、明らかです。
日本に戻りますと、封建時代には、家長はもちろん男性でしたが、「家」を守る主たる役割は女性に委ねられ、家風・家法は姑から嫁へと引き継がれてきました。
それは、前時代までの因習的なしきたりであり、近代においては日本は女性に対して差別的になったという主張には、戦後、日本で女性が参政権を得たのは先進国においても比較的、早期であったという事実で反論しましょう。
もちろん、現代の日本の企業社会では、実質的に女性に対する待遇の差別的な扱いは確かにあるのですが、それは女性労働者の側の労働に対する「モラル」(これは批判的な意味合いで言っているのではありません)の問題にも起因するものであり、一概に雇用者側を責めることは不適切であると思います。
それに対して「男女共同参画」「女性SHINE」などの空虚なキャッチフレーズには、逆差別的な匂いすら感じます。
最後に、神道における女性の立場ですが、神道には巫女もおりますし、また祭祀である頭の天皇には女性も存在した事実を考えますと、とても日本の伝統社会が女性を排除してきたとは言えません。
また古代社会においては、シャーマンのような女性が部族の意思決定を行ってきたことも考え併せて、日本は女性中心が伝統であったのでは、と考えます。
『元始女性は太陽であった』という著作は、まさにタイトル通りの事実を言い表していると思います。
私は斎宮が潔斎した野々宮神社が大好きで、京都を訪れた際は、嵯峨野と併せて必ず立ち寄ります。
その、たおやかな佇まいを見るにつけ、女性の偉大さを尊重してきた日本の伝統を大切にしたいと思います。
今後ともご指導よろしくお願い申し上げます。
女性天皇・女系天皇には反対。 (本田伸樹)
2018-04-14 16:17:36
倉西先生。
投稿した直後、先生の御文を読み直して、女性天皇・女系天皇に触れられているのを見落としているのに気が付きました。
現在の「天皇【制】」は、大日本国憲法により、近代国家のあり様に適合して人為的に作られたもので、女性天皇・女系天皇が認められていないのは、日本国内外の情勢を鑑みて、国家の存続のために不適切であると判断されたと考えます。
その判断は、現代にも有効で、女性天皇・女系天皇には断固反対します。
もっとも、私は日本が土俗的エートスから抜け出して、合理的な真の近代国家になるために、天皇を廃止することを主張しているのですが・・・
Unknown (わすれんぼ)
2018-04-14 16:17:43
私は相撲の女人禁制は、女性を差別する“時代遅れの慣習”だと思っています。
この論争はかなり以前からあり、以前は女性は汚れているから土俵から遠ざけると、彼らは言っていたと思います。さすがにそう言うのはまずいので、今は否定していますが。
江戸時代の女相撲は余興のような形で女性同士ではなく盲人との相撲が行われていたそうです。明治に排除されるようになったのは、野蛮とよその文明国から思われたくないという配慮や、いかがわしさを排除して文化的な地位を上げようという目論見からだったのではないでしょうか?
それに、女性が土俵で相撲を取るのと、単に土俵に上がるというのは別の話でしょう。
女性が土俵に上がること自体を禁じるというのは、どこにもその正当性を主張できる根拠がありません。明治のいつ頃からかそうなっていたからこれからも続けると言っているだけです。
実際問題でそれを続けるためには、女性を差別し、排除しなければなりません。
お客さんで力士と何かしたい人は(例えば握手でも抱っこでも、断髪式のハサミ入れでも、表彰でも)土俵に上がってくださいというような場合に、女性はいけないと、なんの理由も落ち度もないのになく締め出すのですから、差別以外の何ものでもありません。
血の汚れにしても、女神の嫉妬にしても、極めてプリミティブで愚かしく、文化の発展の過程で克服すべきものであるとしか思えません。
確かにこれを女性天皇・宮家の話とくっつけようという下心のある人達がいるのは事実でしょうが、別問題です。

本田伸樹さま (kuranishi masako)
2018-04-14 19:13:40
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 日本国=女性蔑視の国、というのは、国際社会に蔓延しおります誤ったイメージなのではないかと思います。”南京大虐殺”や慰安婦問題等を考慮しますと、こうした誤ったイメージが広まることを望んでいる国や勢力が国際社会には存在しているのでしょう。しかしながら、日本国の実像は、流布されているイメージとは異なっており、女性を大切にしてきた国柄は、女の子の成長を祝うひな祭りなどにもよく現れております。近年、日本国政府も、日本文化の海外発信に取り組むようになりましたが、是非とも、日本国の悪しきイメージを払拭すべく、真の姿を海外諸国に伝えていただきたいと思うのです。なお、私には、”擬立憲君主制”としての天皇制は、もはや不要となっているように思えます。
わすれんぼさま (kuranishi masako)
2018-04-14 19:48:53
コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 わすれんぼさまは、男性とお見受けいたしましたが、いかがでございましょうか。フェミニストや左翼の方は、女人禁制を女性差別として目くじらを立てるのですが、女性の側からしますと、別の考え方で接している可能性もあるのではないかと思います。それは、それ程、男性の方々が伝統を重んじて土俵を大切に思い、男性のみの場としたいのであるならば、その気持ちを汲んで、敢えて土俵には上がらない、という選択です。おそらく、こうした考え方の日本女性は少なくないのではないでしょうか。あるいは、時を経て、男性方の考え方も変わるかもしれませんが、少なくとも、平等の徹底を主張して、ずかずかと土俵に乗り込んだのでは、双方の感情を害するのみであり、対立を煽る結果にもなりかねないと思うのです。また、この問題については、男女別の施設や宝塚歌劇団のような逆の事例もあることも、考慮すべきではないでしょうか。
 何れにせよ、男女平等が原理主義化しますと、全ての伝統や文化を破壊しかねない事態ともなりかねませんので、より柔軟で賢明な対応をすべきではないかと思うのです。
在日カルト創価学会統一教会撲滅祈願 (宮内庁皇室浄化大作戦)
2018-04-15 15:55:27
天照大御神は男性神です。
宮内庁皇室浄化大作戦さま (kuranishi masako)
2018-04-15 18:57:35
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 天照大神は男性神とする説も存在していることは承知しております。しかしながら、日本国の正史である『記紀神話』では女神とあり、また、真床御衾といった儀式からも、男性神とは考え難い側面もございます。もちろん、純粋に学問としての検証すべき課題ではありますが(仮に男性神であったとすれば、何故、記紀神話では女神となったのか・・・持統天皇の影響?)、少なくとも、今般のお相撲の一件につきましては、多神教である日本国では、伝統的に女神もまた尊ぶべき存在であったとを示す好例ではないかと考えております。
思いやりでしょう (北極熊)
2018-04-16 13:05:54
何年も前に貴乃花親方がインタビューに答える形で、「女性を土俵に上げるべきでないのは、大きな男が時には死を覚悟しながら戦う場所なので、そんなところに女性が上がるのは危ないからです。」と答えています。 この件のあと、相撲協会が地方の子供の相撲に女児の参加を控えるように通達したそうですが、過去に実際に女児が怪我をする事故があったとも言われます。諸説あるでしょうが、どうもこの女性をいたわる気持ちが、土俵に女性を上げない慣習の根本だとすると、女性蔑視とは正反対なんですよね。
北極熊さま (kuranishi masako)
2018-04-16 13:22:55
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 お相撲も格闘技ですので、女子が参加すれば危険であることは、誰もが理解していることではないかと思います。選手同士のぶつかり合いが多いアメフトなども男子のみのスポーツですし、男女の体力差をも無視した性差別反対論は、乱暴に過ぎるように思えます。思いやりからの’女人禁制’もあるのですから、性の違いによって対応が違う場合、その背景に何があるのか、見極めることこそ大事なことなのではないかと思います。
最近の風潮 (a)
2018-04-17 10:51:35
どのまとめサイトでも 男尊女卑だという女の意見ばっかり 、男なんかどうでもいいみたいな意見が多 男は女を大切にしてきたのに なんか守きしなくなった

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