万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北朝鮮による拉致問題の逆利用-悪魔は善から悪を引き出す

2018-04-30 13:46:05 | 国際政治
日韓首脳電話会談 文大統領が拉致問題提起 安倍晋三首相「誠意に感謝」 
 南北首脳会談に続き米朝首脳会談の開催も決定された頃から、日本国内からも、日朝首脳会談を勧める意見が散見されるようになりました。この流れに乗せられてか、安倍首相も同会談に積極的な意向を表明するに至っています。しかも、拉致問題解決を最優先の議題に据えたいようなのです。

 こうした日本側の動きを見越して、北朝鮮の金正恩委員長からも対日交渉の扉は開かれているとするメッセージが発せられているようです。しかしながら、この流れ、拉致問題を巧妙に利用した一種の詐欺ではないかと思うのです。何故ならば、日本人拉致事件とは、紛れもない北朝鮮による国家犯罪であり、拉致被害者の解放は、当然のことであるからです。国内法である刑法においては略取又は誘拐の罪に当たり、加害者は厳正なる裁判の下で刑罰を受ける立場にあります。

 ところが、マスメディアの報道ぶりを見ますと、拉致事件の解決=平和=北朝鮮礼賛の三段論法的な構図が演出されており、その犯罪性が隠蔽されているかのようです。しかも、核・ミサイル問題の解決とは切り離した見解も多く、日朝交渉に限定すれば、金委員長の‘英断’によって拉致被害者の帰国が実現すれば、直ぐにでも日本国側の対北経済制裁が解除され、日朝国交正常化まで進展するかのような印象を与えているのです。

 北朝鮮の策略とは、核・ミサイル問題は脇に置き、拉致事件を前面に打ち出すことで、先ずは日本国政府を交渉の場に引出し、現行の経済制裁の緩和や多額の経済協力を伴う日朝国交正常化等を条件に拉致被害者を帰国させるというものなのでしょう。その際には、生き別れた被害者家族の再会という誰もの涙を誘う“感動的なシーン”が演出され、金委員長を勇気ある‘解放者’として讃えるものと推測されます。その真の姿が刑務所に行くべき犯罪者であるにも拘わらず…。

そして、この点に関しては、安倍首相も、拉致事件の解決を最優先とし、かの平壌宣言に基づく日朝国交正常化に言及しているのですから、北朝鮮の巧妙な対日懐柔作戦に騙されているとしか言いようがないのです。この流れは、2002年の小泉元首相による訪朝時における“サプライズ外交”と類似しています。日本国政府は、またもや北朝鮮が仕掛けた同じ手に騙されるのでしょうか。

 “悪魔は、善から悪を引き出す”とされていますが、北朝鮮の手法は、拉致問題が人道問題であることを逆手にとった一種の詐欺のように思えます。拉致事件の解決に対しては、人道問題であるだけに心理的に反対意見の表明が憚られ、北朝鮮による詐欺を見抜いての冷静、かつ、合理的な批判であっても、マスメディア等から非人道的な見解として手厳しく叩かれかねません。国家犯罪が人道の名によって“善行”にすり替えられ、しかもその先には、日本国からの莫大な経済支援という詐取が潜んでいるのです(経済支援を受けた後に、日米に向けた核開発が再開される可能性もある)。このように考えますと、マスメディアによる“バスに乗り遅れるな”式の日朝交渉の薦めに煽られることなく、日本国政府も国民も、冷静に北朝鮮の悪を見据えるべきではないかと思うのです。

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11 コメント

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優先順位をつけて北を締め上げよ (本田伸樹)
2018-04-30 14:32:49
倉西先生。
いつもご指導ありがとうございます。
今回の先生のご指摘に全面的に賛同いたします。
北の、「犯罪を犯せばご褒美がもらえる」という奇妙な笑話に、マスコミも政界も乗せられているのに気づかない状況を苦々しく思っています。
そのうえで、私見を述べさせていただくならば、北の犯した「犯罪」は・・・
(1)国際法秩序を崩壊の危機に曝す核武装
(2)各国の主権と被害者の人権を著しく侵害する拉致
(3)自国民の生存権の人権を侵害する先軍政治と経済政策
と大きく3つ挙げられると思います。
私は、(1)から順に段階を追って解決の優先順位が高くなると考えます。
国際社会は、この優先順位に従って、北による「無条件降伏」と「自発的解決」を強く求めるべきであり、それが最終段階に至るまでは、決して北にいかなる果実も与えるべきではないと思います。
具体的には制裁の解除は北の「犯罪」が完全に生産された後に考慮されるべき問題であり、それまでは寸分たりとも北に譲歩すべきではないと思います。
これは、プーチンの制裁解除すべきどころか、北に積極的に経済援助をすべき、との提言が見事に的を外れ、南北首脳会談以降、北が制裁の結果に白旗を上げ、「許しを請う」姿勢に転換したことを見れば、制裁をはじめとする、北への「鞭」がいかに効果的であったかを示しています。
この点を視野に入れない、内外の政治家、マスコミの逆転した論調には、本当に見識を疑いたくなります。
まずは、核放棄をさせること、次に拉致被害者の奪還・・・これを「鞭」をもって北を締め上げることにより実現する以外の選択肢は国際社会にはありません。
それを外れた北への譲歩は必ずや破綻と致命的結果をもたらすでしょう。
今後ともご指導の程よろしくお願いいたします。
まさにその通りです。 (ベッラ)
2018-04-30 16:16:39
毎日必ず拝読しております。激しく同意します。ツイッターhttps://twitter.com/bellavoce3594やフェイスブックhttps://www.facebook.com/chiara.dipromaでも拡散させていただきました。三宅博先生がご存命でしたら必ずお味ことを仰ると思います。私は倉西先生と知り合えて幸せです。
本田 伸樹さま (kuranishi masako)
2018-04-30 20:52:57
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 日本国内の報道ぶりを見ておりますと、北朝鮮とマスメディアが結託しているのではないかと思わず疑ってしまいます。両者ともに”演出のプロ”を自認しているのでしょうが、私のみならず多くの日本国民は、こうした世論誘導に既に気が付いているのではないでしょうか。北朝鮮の犯罪には罰こそ与えられるべきであり、ゆめゆめ、ご褒美を与えてはならないと思うのです。
字の訂正 (ベッラ)
2018-04-30 21:09:37
申し訳ございません。字の訂正させてください。
お味を「同じ」です。
ベッラさま (kuranishi masako)
2018-04-30 21:11:58
 本記事へのご賛同、並びに、SNSでのご拡散をいただきまして、ありがとうございました。今般の一件につきましては、国民こそ、しっかりとマスコミ及び政府をウォッチしなければならないと考えております。まことに、心配な限りでございます。なお、字の訂正、拝読いたしました。どうぞ、お気になさらないでくださいませ。
私のブログにも拡散しました。 (ベッラ)
2018-05-01 05:00:43
後になって申し訳なく存じます。
今回のエントリ、できるだけ拡散したくて、私のブログにも転載をさせていただきました。
https://blog.goo.ne.jp/bellavoce3594/e/927afe308935def9d783e0f3fb87340e
テレビなどで不真面目な報道が多く、心痛めております。最初にお願いをしておくべきでしたのに、申し訳ございません。これ以上の正しい指摘はないと感じましたので何卒ご容赦のほどをお願い申し上げます。
ベッラさま (kuranishi masako)
2018-05-01 07:34:36
 本記事の貴ブログへの転載をいいただき、お礼を申し上げなければならないのは私の方でございます。度々、お手数をおかけいたしてしまい、申し訳ない限りでございます。こちらこそ、今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
フェイスブックのアドレスを訂正しました。 (ベッラ)
2018-05-01 14:39:19
もともと綴りが間違って書いていたので先程フェイスブックで訂正しました。正しくはhttps://www.facebook.com/chiara.diploma
です。長いこと登録だけしており、実際に活用したのは最近です。
ベッラさま (kuranishi masako)
2018-05-01 19:54:40
 ご丁寧にもフェースブックのアドレスの訂正をご連絡をいただきまして、ありがとうございました。
私も仲間です。 (onecat01)
2018-05-01 20:59:22
kuranishi masakoさん。

 あなたのブログは、前々から訪問させて頂いておりましたが、ベッラさんから推奨がありましたので、

 改めてご挨拶いたします。
  「私も仲間です。」

 これからも、よろしくご指導ください。

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