万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

海外渡航を全面禁止しない中国の大罪

2020年02月29日 14時59分55秒 | 国際政治

 中国政府の公式見解によりますと、中国全土に広がっていた新型コロナウイルスは、湖北省以外では新たな感染者が一桁台となり、効果的に抑え込まれているそうです。都市封鎖等の大胆な措置が功を奏したとして自画自賛する一方で、諸外国については手厳しい評価を下しています。特に日本国に対しては、‘防疫体制が全くなっていない’と言わんばかりであり、上司の部下に対する態度のようです。自国で感染症が猛威を振るっている間は日中友好を強調して甘い対応を暗に要求しながら、自らが‘回復’した途端に態度を豹変させ、忖度して病を受け入れてくれた相手国に対して厳しい対策を求めるのですから(日本国も規制対象国に…)、その変わり身の速さには唖然とさせられます。

 安倍首相による突然の小中高等学校の一斉休校措置も、中国からの対策強化圧力の結果であったとは考えたくもないのですが、昨今の日本国政府のあからさまな対中臣従姿勢は、常識の域を遥かに超えています。国民多数が中国人の全面入国拒否を望んでいるも拘わらず、政府は、頑としてその方向には動こうとはしないのですから。新型コロナウイルス感染症は潜伏期間が長く、かつ、回復後にもウイルスの潜伏により再発するリスクもありますので、少なくとも新型コロナウイルスの特性が十分に把握されるまでの当面の間は、キャリアーである可能性が高い中国人の入国は禁じられるべきです。しかしながら、中国人の入国禁止措置だけは‘聖域’扱いなのです。

中国側の日本国政府に対する視線が厳しい一方で、日本国側が中国の方針に翻弄されている理由は、4月に予定されている習近平国家主席の国賓待遇の訪日にあるとされています。となりますと、‘日本国民の命よりも大事な習主席の訪日’とは、一体、何を意味するのか、日本国民にとりましては感染症と並ぶ大きな不安材料です。日本国と同様に習主席の国賓待遇での来訪を予定している隣国の韓国も立場は同じらしく、国民から中国人の入国を全面的に禁じる措置を強く求められているにも拘わらず、対中関係を優先する文大統領は‘不可能’として拒絶しているそうです。習主席の頭の中では、中国を日韓の宗主国とする冊封体制が既に出来上がっており、両国への国賓待遇での訪問は、宗主国の権威確立を知らしめるための総仕上げなのかもしれません。そして、この一大イベントは、日本国にとりましては自由・民主主義体制の終焉を意味するかもしれないのです(日本国政府が内閣支持率の低下や有権者からの不評を気にしていないのは、民主主義が中国に潰されることを想定しているから?)。

かくして日本国内では、国民の間で政府に対する不満がふつふつと沸いてきているのですが、中国人の個人レベルでの海外自由渡航の持続に対する中国政府の執着が、情報統制と並んで、日本国のみならず、全世界に新型コロナウイルスをまき散らす主たる原因の一つとなった点は、見落としてはならないように思えます。中国政府は、自国民の海外渡航については、団体旅行客やウイルス検査で陽性となった国民の出国は禁じる一方で、政治家やビジネスマン、そして、個人旅行客といった個人での出国に対しては規制を設けてはいません。グローバル化の波に乗った中国は、全世界に中華ネットワークを広げていますので、中国から海外への人的流れを断つことは、中国の支配力や影響力の低下を意味します。習主席の海外訪問はこうした覇権追及の象徴なのですが、中国は、自らの覇権を維持・拡大したいがために、政治や経済分野で影響力を有する自国民の出国に規制をかけたくはなかったのでしょう。そして、その結果が、パンデミック寸前の新型コロナウイルスの世界大での蔓延なのです。

中国は、自らが実施した自国内での封鎖措置等について、他国への感染拡大を防止に貢献したと自己を高く評価し、他国に対しては恩を着せています。しかしながら、人類のために第一にすべきは、自国民の全面的な海外渡航の禁止であったのではないかと思うのです。利己的な思惑から全世界に有毒ウイルスをばら撒き、他国民に犠牲を強いてきたのですから、中国の罪は重いと言わざるを得ないのです。そして、日本国政府は、中国人の入国全面禁止に舵を切ると共に(自国民の命を優先する…)、今後、こうした事態が再発しないように、感染症に関しては発生源となった国の政府が自国民の海外渡航を禁止する原則を国際ルールとして提唱すべきではないでしょうか。

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