万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

憂慮すべきワシントン・ポスト報道の日米離反効果

2018年08月29日 15時01分38秒 | 日本政治
7月の北との極秘接触報道 菅義偉官房長官コメントせず トランプ「真珠湾」発言は否定
マスメディアの大方の報道ぶりでは日米首脳間の関係は比較的良好であり、国際社会で孤立しがちなトランプ大統領は、安倍首相のアドヴァイスを頼りにしているとの情報もあります。ところが、今般、これらの情報を覆すようなニュースを米紙ワシントン・ポストの電子版が報じております。

 ワシントン・ポスト発の記事は、(1)日本国政府が7月にアメリカ政府に通達することなく、ベトナムにおいて北朝鮮側と極秘会談を行った、並びに、(2)6月の日米首脳会談の際に、トランプ大統領が、日米間の貿易不均衡の是正を促すに際し、安倍首相に対して“真珠湾を忘れない”と語った、とする二つ情報から構成されています。日本国政府は、後者はきっぱりと否定しつつも前者については口を濁しておりますので、おそらく、後者はフェイクニュースなのでしょう。

 トランプ大統領による対日威嚇発言が意図的に流される背景としては、まずは、米中対立を背景とした中国側によるマスメディアに対する工作活動が推測されます。米中貿易戦争は軍事面での緊張をも招きかねず、劣勢にある中国は、あらゆるルートを用いて同盟関係にある日米間に楔を打ち込もうとするはずです。アメリカの大統領が“リメンバー・パールハーバー”を口にして日本国の首相に凄んだとする情報が日本国内に伝われば、日本国内の世論を反米に傾かせる、あるいは、これまで醸成されてきたアメリカに対する日本国民の厚い信頼感を失わせることができるからです(修正:もっとも、トランプ大統領が真珠湾を持ち出したのは、’当時の日本国のように毅然として武器をとり、アメリカと共に戦うべき’という意味であったする情報もあります。)。背後に日米離反効果を狙った工作活動が展開されていたとすれば、フェイクニュースが流された意図は容易に理解されます。つまり、日本国民の多くは、易々とフェイクニュースには騙されない、ということになるのです。

 ところが、上記の推測はトランプ大統領の真珠湾発言にあっては説明が付くのですが、前者のベトナムでの北朝鮮との極秘接触については、どこかで腑に落ちないような感覚が残ります。両者が共にフェイクニュースであるならば、菅官房長官は、前者の方も同時に否定するはずです。となりますと、日本国政府が、アメリカ政府にも黙って北朝鮮と極秘に接触したとする情報はフェイクではなく‘事実’と考えざるを得ないのです。マスメディアやプロパガンダの手法として、フェイクニュースを人々に信じさせるために、敢えて事実を混ぜる、とものがあります。今般のニュースにこの手法を当て嵌めるならば、フェイクである真珠湾発言を信じさせるために、事実である日朝極秘接触を組み合わせたのでしょう。

 以上の推測からワシントン・ポスト側の意図と背景は見えくるのですが、一つ問題が残されているとしますと、それは、事実とされる日本国政府による対北極秘接触です。米朝首脳会談後の微妙な時期にあって、アメリカに知らせることもなく極秘に交渉を行ったとしますと、アメリカ側からすれば、それは日本国側による背信行為ととられかねません。乃ち、ワシントン・ポストの記事は、世論を含めたアメリカ側に日本国に対する不信感を抱せるに十分な内容なのです(アメリカが騙し討ちに遭ったとされる真珠湾攻撃を思い起こさせてしまう…)。トランプ大統領の真珠湾発言がフェイクニュースである可能性が高いため、日本国側では安堵が広がっても、もう一方の記事が事実であれば、アメリカ側の対日不信は強まり、結局は、日米離反の効果をもたらします。日米離反を仕掛けた側の目的は、半分ではあれ、達成されてしまうのです。

日米同盟弱体化のリスクを考慮すれば、日本国政府は、再度アメリカ側の信頼を失うことがないよう、今後は、北朝鮮との交渉については同盟国であるアメリカに対して誠実に通知するとともに、中国をバックとした北朝鮮の策略に嵌らないよう、対北政策はより慎重であるべきなのではないでしょうか。日本国民にも隠していた政府の‘隠密行動’が日米同盟を危うくしたとなりますと、日本国民の政府に対する信頼は著しく失墜するのではないかと危惧するのです。

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2 コメント

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日航ジャンボ123便ソ連自衛隊核攻撃惨事 (アッキードF19で小沢一郎を撃退希望)
2018-11-16 06:51:11
日航ジャンボ123便ソ連自衛隊核攻撃惨事における たくさんのJAL123便の元気な生存者及び、ご搭乗の昭和天皇が、日本の埼玉県警察の警察官らの襲撃(日本語で おまわりさん?らの手により)により
ttp://www.marino.ne.jp/~rendaico/ainugakuin/e0011938_16494167[1].jpg
といった惨憺たる虐殺死体と化した

一方、救助に奔走したのは米国のみであった
アッキードF19で小沢一郎を撃退希望さま (kuranishi masako)
2018-11-16 07:40:18
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 日航ジャンボ機墜落事件につきましては、様々な憶測があるようです。謎が謎を呼ぶのは、日本国政府とは何か、あるいは、世界を操っているのは誰か、という根本問題があるからなのではないかと思います。何れにいたしましても、人類の真の平和のためには、’裏表のない世界を築く’というご意見には賛同いたします。

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