万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

“観光”は対北制裁の抜け道では?

2018-04-24 15:13:50 | 国際政治
金正恩氏が中国大使館訪問 北朝鮮、36人交通事故死で哀悼
 先日、北朝鮮の黄海北道において中国人32人を含む計36人が死亡する交通事故が発生しました。犠牲者の多くが中国人であったために、北朝鮮の金正恩委員長は、在北中国大使館に慰問に出向くという異例の対応を見せましたが、この事件、制裁の抜け道を見つけて北朝鮮に経済支援を行っている中国の現状を露呈したとも言えるかもしれません。

 マスメディアの報道の多くは、金委員長自ら中国大使館に足を運び、哀悼の意を示したことに焦点を当てていますが、仮に、この事件が起きなければ、少なくない中国人が北朝鮮で観光旅行を楽しんでいる実態が知られることはなかったはずです。北朝鮮には、金剛山や高麗国の首都であった開城等の観光名所があるそうですが、北朝鮮危機が緊迫化して以来、海外、特に自由主義国からの観光客は激減しています。特にアメリカでは、観光目的で入国した大学生が、拷問を疑われる状況で帰国したものの命を落としており、同国は、自由主義諸国にとりましては、生きて出国できる保障のない極めて危険な国なのです。

 それにも拘らず、中国人のみが同国を訪れる背景には、当然に、北朝鮮側が同盟国である中国の国民を丁重に扱っているということもるのでしょうが、もう一つ、推測され得る思惑は、“観光”という名の経済支援です。昨年9月に国連安保理で決定された対北経済制裁の主たる内容は、(1)対北石油・石油精製品の輸出制限、(2)北朝鮮産繊維製品の禁輸、(3)北朝鮮労働者の規制から構成されています。これらに加え、日米などは独自制裁を実施しており、経済制裁の効果をさらに高めようと努力しています。ところが、中国にとりましては、対北経済制裁決議に違反せずして北朝鮮を支援する方法を見つけることこそ課題であり、その発想は、自由主義国とは真逆なのです。

 日本国内でも、中国人観光客の‘爆買い’が常々話題とされており、様々な問題をもたらしつつも、観光客の経済効果は無視でいないと説く人々もおります。観光とは、民間交流とされながらも収益性のあるビジネスでもあり、中国人が北朝鮮に観光目的訪問すること自体が、北朝鮮に一定の経済効果をもたらしているのです。例えば、訪朝した中国人観光客が宿泊費、交通費、食費、おみやげ代、エンターテインメント代、ガイド料などを支払うに留まらず、これらの施設や商品の製造等は、北朝鮮国内の経済のカンフル剤となると共に雇用をも生み出します。しかも、支払い通貨が人民元であれば、厳しい経済制裁下にあって外貨不足に苦しむ北朝鮮にとりましては、‘恵みの雨’ともなりましょう。

 このように考えますと、北朝鮮に対する経済制裁を徹底するためには、国連安保理において、新たな制裁決議として観光業を制裁対象に加える必要があるかもしれません。訪日中国人観光客数は、現在、2400万人を超えているとされておりますが、その100分の1でも北朝鮮に向かえば、その観光収益によって制裁効果を相殺してしまいかねません。今般の事件によって、対北経済制裁の抜け道が判明した以上、国際社会は、これを塞ぐための措置を急ぐべきではないかと思うのです。

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