万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国を世界第一位の軍事大国にしてはならないシンプルな理由

2018-02-06 16:12:26 | 国際政治
米国の核戦略報告書は「見当違い」、中国が批判
中国の軍事技術は長足の進歩を遂げ、あらゆる先端技術が兵器開発に注ぎ込まれております。中国の軍事的台頭によってアメリカの優位は脅かされつつあり、米中間の軍事力の格差も急速に縮まっています。果たして、中国がアメリカを凌ぐ世界第一の軍事大国にのし上がった日には、一体、何が起こるのでしょうか。

 こうした予測に対しては、大国化した中国の軍事力を怖れ、同国との平和的交渉を以って脅威をコントロールすれば問題はない、とする意見もあります。冷静、かつ、実務的な“危機管理”と解すれば聞こえは良いのですが、国際社会の治安維持としての平和は、最終的には“力”に求めるしかないという冷徹なる現実を考慮しますと、軍事力において中国が世界トップの座に上ることは、人類に救いなき悲劇をもたらすこととなるかもしれません。

 当事国間の外交交渉等の話し合いというアプローチも、国際レベルにおける法的制裁というアプローチも共に平和的な方法と見なされていますが、その実、最終的な担保としての“力”がありませんと、問題解決に必要とされる一連のプロセスは完結しません。前者には合意の不履行があり得ますし、後者にあっても、事前には違法行為が、事後的には判決の不履行、あるいは、刑罰の不執行があり得るからです。平和的な方法と雖も、拘束力を有する“力”の存在は不可欠であり、これが欠けている場合には、全ての諸国は、平和を享受することはできないのです。

 この側面から上記の問題を考えてみると、中国の軍事的台頭のリスクの高さは容易に理解することができます。今日、なおも共産党一党独裁体制を堅持している中国は、暴力を積極的に肯定するマルクス・レーニン主義の申し子であり、国内的には体制を維持するため、対外的には華夷秩序を構築するためには、他国との合意や国際法を破ることを厭わないことでしょう。こうした加害的な国が、他の全ての諸国に優る軍事力を手にした場合、その結果は目に見えています。たとえ中国が、あらゆる合意を不履行とし、国際法に反する行為を行ったとしても、誰もそれを止めることはできなくなるのです。こうした事態は、古代ギリシャのミノタウロスの神話やヤマタノオロチが登場する出雲神話などを思い起こさせます。他者に犠牲を強要する者の支配は、それが神話化されたように、今も昔も人々を苦しめてきたとも言えます。

メキシコでは、麻薬組織が警察を上回る軍事力を保持するに至ったため、国内の治安は乱れ、人々は恐怖の中での生活を余儀なくされています。一般の諸国において、一先ずは治安が保たれている理由は、犯罪組織や犯罪者よりも、警察の治安維持力が優っているからです。中国が世界第一位の軍事力を誇るに至った時、国際社会もまた、犯罪組織が跋扈するメキシコ化を覚悟しなければならないのです。“中国の夢”が、他の諸国にとっては悪夢である以上、この事態を事前に阻止することこそ、国際社会が取り組むべき重要課題なのではないかと思うのです。

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