万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

仮想通貨と偽造通貨の境界線とは?

2016年02月24日 15時56分08秒 | 国際経済
 本日の日経新聞の記事の一面に、驚くべき記事が掲載されておりました。その記事とは、日本国の金融庁が、仮想通貨を公的に認める法規制案を準備しているというのです。この方針、危険に満ちていると思うのです。

 仮想通貨と言えば、日本国内では、ビットコイン問題で逮捕者を出しており、お世辞にも信頼性が確立しているわけではありません。マネーロンダリングといった犯罪のみならず、テロ組織や北朝鮮による利用等の安全保障上の懸念もあり、”不健全”な取引の温床としてのイメージが染み付いています(金融庁は仮想通貨の”健全”に広がることを目指しているらしい…)。こうしたリスクの他に、仮想通貨を法定通貨として認めることには、幾つかの深刻な問題があります。その一つは、仮想通貨と”偽造通貨”の境界線が曖昧であることです。今日の通貨の高い信頼性は、発行主体が公的機関である中央銀行であることに拠ります。今般、仮想通貨にも強制通用力を備えた公定通貨の地位を与えるとしますと、通貨発行権を民間にも認めることを意味ます。現在、仮想通貨は600種類ほどあるそうですが、この民間の発行主体は、誰もが知らないような団体である場合も少なくないのです。登録制とはいえ、私人の通貨発行権と通貨偽造とは、一体、どこが違うのでしょうか。通貨偽造は、実在する通貨を模した偽通貨という点では違っておりますが、民間人が通貨を発行するという点では共通しています。ビットコインの場合は、難解な問題を最初に解いた事業者が発行主体から通貨を獲得する仕組みであり(金鉱に譬えてマイニングと呼ばれている…)、通貨発行益は、マイニングの成功報酬です。マイニングには、専門知識が必要ですので、一般の人々には、ビットコイン獲得のチャンスは殆どありません。そして、ビットコインでは、発行主体とマイニング事業者は分離していますが、両者が結託すれば、一私人が無制限に通貨を発行し、それを売買を含むあらゆる取引に使用できるという状況が出現します。

 一民間人が”濡れ手に粟”で巨額のマネーを独占的に手にすることができる仕組みは、果たして、許されるのでしょうか。金融庁も説明不足であり、仮想通貨を法定通貨と認定することができる根拠、ならびに、仮想通貨と偽造通貨とを識別する基準などを、明確に国民に示す必要がありますが、仮に、仮想通貨の仕組みが、誰もが納得できる根拠を以って示されても、私的に個人が通貨を発行するという通貨の偽造と大差のないその基本的コンセプトにおいて、存在自体、正当化できるとは思えないのです。

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