万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

‘徴用工問題’から見える‘南北統一地下政府’

2019年01月13日 13時30分13秒 | 日本政治
 年初の記者会見における韓国の文在寅大統領の発言は、一般の日本国民からしますと非常識極まりないものでした。三権分立を根拠に、日本国に対し、韓国の最高裁判所が下した「日韓請求権協定」に反する‘徴用工判決’をそのまま受け入れよ、と要求したのですから。

 韓国に対して寛容であった日本国政府も、終に堪忍袋の緒が切れて遅まきながらも対抗措置の準備を始めたのですが、韓国問題で日本国内が沸騰する矢先、韓国に続いて北朝鮮からも‘徴用工’という言葉が聞こえてきました。北朝鮮は、日本国に対して‘徴用工問題’を持ち出すと言うのです。

 ‘徴用工’とは、第二次世界大戦の最中にあって、国家総動員法に基づいて工場などで労務に従事した朝鮮半島の人々を意味しており(当時、朝鮮半島の人々も日本国籍を有する日本国民であった…)、‘徴用工問題’とは、戦争末期の混乱期にあって生じたとされる未払い給与の補償問題です。この問題は、日韓間では既に上述した「日韓請求権協定」で解決しており、韓国司法は、補償金の二重払い、否、それ以上の額の支払いを要求したこととなります。韓国人原告一人あたりの賠償額は凡そ1000万円とされており、この額は、当時の賃金水準からすれば、未払い分を遥かに超えた額となるからです(そもそも、未払い期間は数か月であったのでは…)。しかも、原告は、国家総動員法に基づいて徴用された元徴用工でさえなく(民間の一般契約によるもの…)、この訴訟自体が、全てがねじ曲がった嘘の塊なのです。

 韓国は、1996年以来OECD加盟国であり、一先ずは、民主化された自由主義国と見なされてきました。おそらく、韓国人自身も、自らの国を先進国の一国に数えていることでしょう。しかしながら、今般の‘徴用工問題’に対する対応は、近年、崩れかけていた同国のイメージが完璧に崩壊しかねない程に非論理的であり、反理性的でさえあります。そして、その背景には、朝鮮半島の伝統的な政治文化に加えて、北朝鮮の影が見え隠れしているのです。

 文大統領の対北融和政策は、既に国連の対北制裁決議違反を疑われる域に達しており、米朝関係にあっても、同大統領は、あたかも金正恩委員長の代理人、あるいは、メッセンジャーの如き役割を演じています。日本海上空における韓国艦隊による自衛隊機レーダー照射事件にも‘北朝鮮漁船’が絡んでおり、そこかしこに北朝鮮が顔を覗かせているのです。今般の‘徴用工問題’に関しても、韓国が独自に決定しているのではなく、北朝鮮との連携の上で動いている可能性も否定はできません。つまり、文大統領のみならず韓国司法も金委員長の‘操り人形’であり、‘対日賠償請求’という名の戦略的目的のために密接に連携しながら一致団結して行動しているのかもしれないのです。

 マスメディアの多くは、北朝鮮による‘徴用工問題’の提起は拉致問題に対する対日牽制として説明しておりますが、韓国の不自然な態度を考えあわせますと、北朝鮮側が既にシナリオを書いており、その台本通りに行動したに過ぎないかもしれません。第一幕では、韓国の最高裁判所に‘元徴用工’に対する‘対日賠償’を認めさせ、第二幕では、文大統領にこれを追認させ、従来の韓国政府が日韓請求権協定で解決済としてきた公式見解を覆させます。続く第三幕では、北朝鮮も‘徴用工問題’を持ち出し、日本国に多額の賠償金を請求すると言うものです。韓国裁判所が示した凡そ一人1000万円の額も、北朝鮮が自らの対日請求額を算出する基準とするために決めたのかもしれません。

北朝鮮が描くシナリオの最終幕では、韓国が‘徴用工問題’で日本国に多額の‘賠償金’を支払わせる一方で、北朝鮮も、国交正常化交渉の行へはさて置き、今後の日朝交渉において‘徴用工問題’を材料にして日本国から巨額の資金を搾り取るというものなのでしょう。南北両国が‘ハッピーエンド’となる筋書きであり、同シナリオの題名は『わらしべ長者』ならぬ『嘘つき長者』なのかもしれません。しかしながら、こうした日本国に理不尽な犠牲を強いる‘悪巧み’のシナリオが、両国の狙い通りの結末を迎えるとは限らず、やがて客観的な事実、法の支配、並びに、人類普遍の正義と倫理の前に崩れ去ることとなりましょう。

何れにしましても、‘徴用工問題’は、朝鮮半島には既に南北両国政府が統合された‘南北統合地下政府’が存在している可能性を示唆しております。そして、この‘地下政府’を主導しているのは北朝鮮の金正恩委員長、あるいは、その後ろ盾であり(中国、あるいは、国際組織?)であるのかもしれません。一人の人物に決定権が集中する独裁体制ほど、政治は外部から操られやすいのです(朝鮮半島の南北両国であれば、南の大統領と北の委員長の二人で十分。もっとも、権力が分立している韓国の方がより難しいものの、今般の事件では、司法の独立を悪用…)。このように考えますと、日本国政府、そして日本国民も、朝鮮半島の南北を相対立した二つの国として分離的に捉えるのではなく、見えないところで一体化している、理性や知性の通じない一つの‘カルト的な国家’として見た方が、余程、現実を正確に理解することができるのではないかと思うのです。

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2 コメント

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なるほど、と思います。 (櫻井結奈(さくらい・ユ-ナ))
2019-01-13 18:10:56
『南北(朝鮮)統一地下政府』、、、、、
おっしゃるとおりだと、思いました。
まあ、わかりやすい言葉で言いますと、『同じ穴の‘’むじな‘’』と言うんでしょうね。

いずれにしましても、私たち日本人は、こういう『むじな』たちとは、もう、お付き合いしないほうがいいでしょうね。(苦笑)(失笑)
櫻井結奈さま (kuranishi masako)
2019-01-13 18:50:23
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 朝鮮半島につきましては、従来の南北対立構図は最早過去のものとなり、地下では既に統一政府が誕生していると見て良いのではないかと思います。そして、両国は、今後、中国をバックにさらに反日政策を強めてゆくのではないかと推測しております。その先のシナリオもあるのでしょうから、日本国政府は、決して現状を楽観視してはならないと思うのです。

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