万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アメリカへの対抗策としてのRCEPは日本国の自滅行為では?

2018-07-02 15:06:02 | 日本経済
7月1日、東京都内で東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の拡張会議が開かれ、年内での大筋合意を目指すとする共同声明が発表されました。かくも日程を急ぐ理由は、アメリカの保護主義への対抗とされておりますが、RCEPの成立は、日本経済にとりましては、自滅行為なのではないでしょうか。

 第1に、たとえ日本、中国、インド、東南諸国等を含む16カ国によってRCEPが成立したとしても、それ自体、アメリカの保護主義政策を変更させる効果は期待できません。アメリカが保護主義に転じたのは、NAFTA等の経験から、自由貿易協定への参加が自国や自国民に不利益を与えるとする判断からであり(産業の空洞化の加速…)、そもそもRCEPに加わる理由がないのです。経済格差を有する諸国による自由貿易圏の形成は、一部のグローバル企業は別としても、一般的に先進国が不利となる点を考慮すれば、広域自由貿易圏としてのRCEPが成立すれば、アメリカが参加していない以上、日本国こそ他の諸国から‘草刈り場’にされてしまう可能性があります。

 第2に、アメリカへの対抗の意味が、EUの欧州企業の如く、アメリカ企業に匹敵する規模の‘アジア企業’を育成することにあるとすれば、それは、既にグローバル企業として巨大化した中国企業のさらなる規模の拡大を意味しかねません。言い換えますと、RCEPを枠組みとして資本移動の自由化が進むことで、日本企業は、技術もろともにM&A等を介して中国企業に飲み込まれる可能性が高いのです。

 第2点に関連して第3として挙げられるのは、中国の企業政策のリスクです。中国共産党は、自国企業に対して共産党員の経営参加を法律で義務付けていますが、中国企業の日本市場への進出、並びに、日本企業の中国市場進出は、同時に、日本経済と日本企業が、中国共産党の政治的影響を受けることを意味します。政経一致体制である中国を含むRCEPは、中国からの経済的支配に留まらず、政治的支配を受けるリスクを含意しているのです。

 第4に指摘し得る点は、貿易決済通貨の問題です。TPP11では中国が参加していないため、貿易決済通貨は国際基軸通貨である米ドルが中心、あるいは、日本円が使用される可能性がありますが、RCEPともなりますと、各国とも、中国の人民元が決済通貨として使用するよう圧力を受けるかもしれません。乃ち、RCEPは、中国の野望である‘人民元通貨圏’の形成に手を貸してしまうかもしれないのです。

 そして第5点を挙げるとすれば、米中貿易戦争が激化する中で、日本国がRCEPに軸足を移し、対米の構図で通商政策を展開しますと、日米同盟にも亀裂が生じ、軍事的野心をもはや隠さない中国を利してしまう点です。RCEPの成立を急いだ結果、中国の軍事的脅威が高まるようでは、安全保障を含めて日本国に対する影響をトータルに評価すればマイナスとしか言いようがありません。

 報道では、従来消極的であった中国が、米中貿易戦争に直面したことで、ようやく歩み寄りを見せたかのように説明しておりますが、習近平政権下の中国の国家戦略の基本路線が‘中国の夢’の実現である以上、RCEPもその踏み台に過ぎないのでしょう。対米要塞としてのRCEPが出現した時、日本国は、気が付かぬうちに中国陣営に組み込まれてしまいかねません。RCEPが、政治経済の両面において日本国の自滅となるリスクが存在する以上、拙速は避けるべきではないかと思うのです。

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