万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

河野候補は’日本のマクロン’?-新しそうで古い人?

2021年09月13日 12時58分56秒 | 日本政治

 菅首相の後継が決定される自民党の総裁選挙は、米中対立の先鋭化、並びに、コロナ禍ということもあり、否が応でも内外の関心を集めています。目下、候補者乱立の様相を呈していますが、中でも、マスメディアが最有力と目しているのが河野太郎ワクチン担当相のようです。何故ならば、マスコミ、あるいは、その背後勢力が押す候補者は、世論調査の結果、必ずと言ってよいほど1位となるからです。国民一般の認識とは一致しないため、世論調査の結果は怪しい限りなのですが、民主主義国家にあって新首相誕生までの自然な流れを造るには、’国民からの人気’を演出する必要があるからなのでしょう。

 

 それでは、仮に自民党総裁選に勝利し、日本国の首相の椅子に座るとなりますと、河野候補は、どのような’リーダー’となるのでしょうか。河野候補は、担当した閣僚職がデジタル化やワクチン接種の推進といった先端的な政治分野であり、かつ、比較的年齢が若いことから、改革派の若手政治家のイメージがあります。基本的な思想傾向もリベラルであり、自身のアメリカ留学の経験から民主党政権との間にも人脈があります(クリントン政権で二期国務長官を務めたオルブライト女史を師とする…)。その一方で、表向きは反中姿勢をとりつつも、常々、水面下における中国や韓国との親しい関係が疑われており、この点は、アメリカ民主党とも共通しているのかもしれません。これまでの発言等からしましても、どちらかと申しますと、保守政党よりも野党側のリベラル政党に相応しい政治家とも言えましょう。

 

 こうした三世議員でもある河野候補の党内における立ち位置は、小泉家の政治家とも類似しているのですが、’改革派若手政治家’のイメージを以ってトップに躍り出るスタイルは、どこか、フランスのマクロン大統領を彷彿とさせます。しかしながら、今日に至るまでの同大統領の軌跡、並びに、政治手腕を見ますと、一抹の不安を覚えざるを得ないのです。

 

旧態依然とした仏政界を刷新する政治家、国民の声を聴く政治家というイメージで、国民の期待を担ってマクロン大統領は彗星の如くに登場してきました。’マクロン・フィーバー’にあって若者層からの支持も集めたのですが、実際に大統領に就任しますと、その斬新なイメージとは逆に、過去の政権にもまして閉鎖的で強権的な政治が目立つようになります。多様性の尊重を謳い、異なる意見であってもお互いに認めあおうと訴えながら、現実にはその逆であることは、リベラル派の常です。マクロン大統領も、政権初期にあっては国民に対してオープンな姿勢を見せていました(マクロン大統領も河野候補も、当初は’目安箱’のような制度を設けていた…)。しかしながら、同氏が強硬に進めた新自由主義政策への反発もあって、燃料税の引き上げに端を発した黄色いベスト運動が起きるとともに、今では、ワクチン接種の事実上の義務化を伴うワクチンパスポート制度の導入に反対するデモがフランス各地で発生しているのです。言い換えますと、反対意見も含めた多様な意見を尊重するはずの’リベラル派’であったマクロン大統領は、国民の声に対して’聞く耳’を全く持たなくなってしまったのです。

 

 河野候補もまた、’聞く耳’を持たないことにかけては、マクロン大統領の比ではありません。同候補によるSNSのブロックが以前から問題視されてきましたが、今般のワクチン担当相の職にあっても、医科学的な根拠やエビデンスを備えたワクチン・リスクへの指摘であっても、これらを真剣に受け止めようとも、検討しようともせず、全て’デマ’として切り捨ててしまいました。一事が万事であるならば、河野政権が誕生すれば、自らが掲げる政策目標を達成するためには、一切の異論を封じ、国民の犠牲を顧みることもなく、’国民の声’に耳を塞ぎながら猪突猛進することでしょう。これこそが、’突破力’であるとして…。

 

’国民の声’に対する閉鎖的で独善的な姿勢を見ても、マクロン大統領と河野候補との間にはリベラル特有の共通点があるのですが、その掲げるスローガンにあっても、共通点を見出すことができます。マクロン大統領が率いた政党の名称は’前進’でしたが、総裁選立候補に際して述べた河野候補の言葉にも、’前進’がちりばめられています。例えば、「もう一度日本を前へ進めたい」が同候補の出馬理由なそうですし、また、自身が目指すリーダー像についても、「私は、皆が少し手を伸ばして掴みたいものを掴む、…少しずつ手を伸ばして行けば、星にだって手が届くかもしれない。皆がやってみようと思ってくれるようなリーダーになりたいと思っています」と述べています。いささか表現は抽象的であり意味不明ですが、漸次的に目的に向かって進むという姿勢は、’前進’に他なりません(なお、ここで言う’星’は、五芒星、あるいは、六芒星ではという指摘も…)。

 

 目下、河野候補は、保守層からの幅広い支持を得るために、これまでのリベラルな主張を取り下げ、より’タカ派’的な方向を見せているようです。しかしながら、同候補とマクロン大統領との類似性に着目しますと、日本国の首相に就任した途端、豹変する事態もあり得ましょう。陰にあって両者を擁立している母体は、恐らく同一勢力であるのでしょうから。案外、’改革派の若手’とは、それが’傀儡’に過ぎないとしますと、用いる手段は先端的なテクノロジーであったとしても、’新しそうに見えて古い人’であるのるかもしれないと思うのです。

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