万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

米朝首脳会談は物別れ?-北朝鮮の真意は“核保有宣言”並びに“核の先制使用宣言”

2018-04-21 11:23:54 | 国際政治
北朝鮮、核実験場廃棄を決定=ミサイル発射も中止、対話へ―正恩氏、経済建設に集中
極秘訪朝したマイク・ポンペオCIA長官の談に依れば、予定されている米朝首脳会談の成否については楽観的な感触を得ていたようです。しかしながら、今月20日に開催された朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会にて公表された金正恩委員長の方針を見る限り、米朝首脳会談は、たとえ開かれたとしても、物別れに終わりそうな気配がします。

 北朝鮮が打ち出した主たる具体的な行動とは、(1)北部の核実験場の廃棄、並びに、(2)核・ミサイル実験の停止です。マスメディア等の報道は、米朝首脳会談を前にして北朝鮮がアメリカ、並びに、国際社会に対して大幅に譲歩をした印象を与えていますが、同方針に示された全体的な文脈からしますと、むしろ、北朝鮮の一方的な“勝利宣言”とも受け止められ得る内容です。

 第一に、上述した二つの措置とも、アメリカが求める“完全、検証可能かつ不可逆的な核廃棄(CVID)”が示す3つの要件を満たしていない点を挙げることができます。北部の核実験場については、その施設が北東部、豊渓里の万塔山にあるならば、崩落事故によって既に事実上の“廃棄”状態にある可能性があります。言い換えますと、他の場所に地下核実験場を建設している可能性もあり、北朝鮮の領域全体を査察しない限り、同施設に限定して“不可逆的”ではあっても、核実験場の“完全”、かつ、“検証可能”な廃棄とはならないのです。また、核・ミサイルについても、中距離、並びに、長距離ミサイルの両者を含みつつも、あくまでも中止に過ぎません。この措置に至っては、“完全”、“検証可能”、“不可逆的”の3要件のすべてが満たされていないのです。

 第二に、同大会において、北朝鮮は2013年に打ち出した“社会主義経済建設”と“国家核兵力建設の歴史的大業の完遂”を同時並行的に進める「並進」路線を改め、今後は、前者を積極的に推進してゆく姿勢に転じていますが、“並進”から“単進”に転換した理由を、既に核兵器の開発・保有を完了したからと説明しています。つまり、後者を放棄したのではなく、後者の目的を達成したから不要となったのであり、核放棄どころか、核保有を宣言していることとなるのです。

 そして、第三として、北朝鮮は、「わが国に対する核の威嚇がない限り、核兵器を絶対に使用しない」とも表明しています。この核使用に関する自制の弁も、核保有なくしてあり得ず、第二点を裏付けています。言い換えますと、アメリカの要求する“北朝鮮の非核化”に応じる意思はなく、むしろ、アメリカをはじめとした核保有国(核の脅威)が存在する以上、北朝鮮は、先制使用も含めて自国の核の使用をも辞さない、と述べているのです。こちらは言わば、“核の先制使用宣言”とも言えます。

 トランプ米大統領は、ツイッターにおいて「北朝鮮と世界にとって非常に良いニュースだ。大きな進展だ」と表明したとも報じられておりますが、以上の諸点から、北朝鮮の今般の方針の核心が、“核保有宣言”、並びに、“核の先制使用宣言”であるならば、米朝首脳会談が首尾よく合意に達するとも思えないのです。

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北以上に不可解な米の不合理な行動 (本田伸樹)
2018-04-21 23:55:00
倉西先生。
いつもご指導ありがとうございます。
今回の、米朝首脳会談に関わる、北朝鮮の発表についての問題点は、先生ご指摘の三点にあることは、もとよりだと思います。
しかし、私が最も不可解と思うのは、米の態度不表明の曖昧な言動です。
私は、米が北朝鮮との関係において、交渉によって北を全面降伏させるか、あるいは軍事行動によって北を破壊する以外、この局面では取りうる選択肢はない、という倉西先生の御意見に全面的に従うものなので、現状の米の態度には、非常に不合理なものを感じるのです。
今、米が示すべき態度は、北に対する全面的、かつ検証可能な核放棄に至る毅然とした意志表明なので、今のトランプ政権の微温的な感触は、更なる北東アジアの軍事的不安定をもたらすのではという不安を抱いています。
ことによると、一部で言われているように、米は北の米本土到達可能なICBM開発放棄のみを条件に、北の限定的な核保有を容認するのでは、という不安さえあります。
さらに、北に対して軍事行動を起こすのであれば、早ければ早いほどコストが低いという動かしがたい事実を前に、トランプ政権がそれに躊躇しているように見えるのは、実に米として不合理な行動と捉えられるのです。
結局、国際社会が極東に求めるのは、恒久的平和と、政情の安定、軍事的安定なので、それに至るプロセスが平和的な手段によってもたらされるなら、それに勝るものはないのですが、私は今の米の宥和的態度がかえってそれを破壊するのでは、と見ています。
今後とも、ご指導のほどよろしくお願いします。
本田伸樹さま (kuranishi masako)
2018-04-22 06:38:25
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 トランプ大統領は、相手方の発言にツウィートで歓迎の意を即答されることが多いのですが、詳しい状況が判明してまいりますと、軌道修正を図るケースも見受けられます。とは申しましても、米朝首脳会談につきましては、全く以って、予測がつきません。つい先日までの情報に拠りますと、”北朝鮮の非核化”が実現しそうな気配があったのですが、今般の北朝鮮側の方針を見ますと、雲行きが怪しくなってまいりました。日本国政府は、あらゆる事態に対応すべく、対応を急ぐべきではないかと考えております。

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