万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

最高裁判所が憲法の抜け道をつくる

2008年01月24日 17時43分02秒 | 日本政治
永住外国人の選挙権案、与党揺るがす火種 民主提出方針(朝日新聞) - goo ニュース

 平成7年2月28日に言い渡された最高裁判決ほど、奇妙な判決はありませんでした。何故ならば、主文では、外国人への参政権付与は違憲としながら、理由の後半部分で、立法措置を採れば違憲ではなくなる、という旨の一裁判官の見解を記載せたからです。

 この最高裁判所の見解には、どう考えてみましても、日本国の憲法秩序を揺るがしかねない危険性が潜んでいると思うのです。そもそも、判決の理由の前半部分では、憲法93条2項にいう「住民」とは、「日本国民」を意味すると解釈すべきであると述べています。ところが、後半に至って、立法措置を講ずれば、永住権(在日韓国・朝鮮人が大半・・・)を持つ外国人に限り、地方参政権を与えることができる、としたのです。前半と後半の主張では整合性が保たれていませんし、これでは、憲法違反の行為であっても、特別に立法さえすれば、合憲ということになります。いわば、最高裁判所が、憲法の抜け道を示唆したに等しいことになりましょう。最も民主的と賞賛されたワイマール憲法が、ナチス政権下で制定された「授権法」によってなし崩しとなった歴史的教訓は、今日でも、決して過去のものではないのです。

 平成7年の判決を持って、参政権付与は政治的判断に任されたとする意見もありますが、もし、政治の舞台にこの問題を上げるならば、憲法改正問題として提起しなければ筋が通りません。憲法秩序を守るべき最高裁判所が、これを壊す行為を行うとは、世も末と言うべきでしょうか。

この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« パレスチナ難民帰還権の難し... | トップ | テロ支援国家との交渉はハイ... »
最新の画像もっと見る

日本政治」カテゴリの最新記事