万国時事周覧

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’ワクチン・リスクデマ説’の根拠の不思議

2021年06月28日 13時58分39秒 | 日本政治

 先日、河野太郎ワクチン担当相は、遺伝子ワクチンに関するリスクについて7つの点にまとめ、これらの全てを’デマ’とする見解を公表しました。同’デマ断定’は、必ずしも医科学的な根拠のない思いつきではなく、参考文献が付されていたそうです。その一つに、アメリカの研究機関が2015年に実施したマウス実験に関する論文があります。しかしながら、ワクチンの安全性の主張のために、何故、同担当相がこの論文を参考文献に選んだのか不思議でなりません。何故ならば、この論文、安全性よりも危険性を証明しているように思えるからです。

 

 同実験は、脂質ナノ粒子のマウス体内での投与後の経過を、注射の手法や量を変えて測定したものです。実験の目的は、遺伝病などへの新たな治療法の開発であり、遺伝子ワクチンそのものではありません。このため、遺伝子の欠損を補う治療法としてのメリットは、ワクチンに応用するに際してはデメリットとなる可能性もあります。そして、同論文に掲載されている写真は、そのリスクを如実に語っているのです。

 

体内に注入された脂質ナノ粒子は、ルシファラーゼと称される蛍光物質が添加されているため、外部からその存在場所を観察することができます。実験では接種後の凡そ10日間の経過を追っており、体内での発光が確認されている期間と部位にあって、タンパク質が生成されていると推定しています。実験の結果は、時系列的に写真として並べられているのですが、同写真を見ますと、幾つかの点に気付かされます。

 

第1に、0.2日、つまり、僅か4.8時間後にルシファラーゼの発光(タンパク質の生成)がピークに達していることです。ヒトではどの程度の時間に相当するのかは分からないのですが、考えられているよりもタンパク質の生成の開始が早いことに驚かされます。このことは、今般の遺伝子ワクチンにありましても、体内にあって大量のスパイク蛋白質が短期間で生成されることを意味しております。

 

第2の点は、皮下注射と並んで筋肉注射が最も体内における発光期間が長い点です。同実験は、最大10日間の経過を記録していますが、両者とも、微弱になるとはいえ、10日を過ぎても発行し続けているマウスが確認できます。このことから、今般、採用されている筋肉注射によって投与された脂質ナノ粒子は、マウスにあって10日間を越えて間体内に留まるケースがあるのですから、ヒトにあっては、より長期に亘ってスパイク蛋白質を生成し続けることとなりましょう。

 

第3の点は、静脈注射の結果によって推測されるリスクです。静脈注射されたマウスの写真では、被験体である3匹のマウスとも、頭部が光っている写真があります(あるいは、脳静脈に投与した結果なのでしょうか…)。そして、この発光は5日間ほど継続しているのです(以後、光を確認できなくなったのか、観察は5日で止めている…)。頭部における発光は、脂質ナノ粒子が血液脳関門を通過して脳内に侵入し得ることを示しています。つまり、仮に、脂質ナノ粒子が血流に乗って脳に到達するような場合には、脳内にあってスパイク蛋白質が生成されてしまうリスクが高いのです(アルツハイマー型認知症や狂牛病の原因も、異常蛋白質の脳内の蓄積…)。

 

最後に第4点として挙げられるのは、ルシファラーゼの発光の消滅は、mRNAを包んでいる脂質ナノ粒子の分解・消滅を意味していても、細胞内に放出されたmRNAやこれにより生成されたタンパク質のその後の行方については実験の対象外である点です。同実験は遺伝子治療のために行われていますので、治療効果の永続性を期待すれば、むしろ、mRNAやタンパク質の短期消滅は望ましいことではないはずです(この種のテクノロジーは、ワクチンよりも治療に適しているのでは…)。この点を考慮しますと、遺伝子ワクチンによって生成されるスパイク蛋白質は他のタンパク質と同様に短期間で自然に代謝されるとも説明されているものの、長期滞留のリスクは否定できないように思えます(特に脳内の神経細胞や心筋細胞など…)。しかも、スパイク蛋白質そのものに害性があったり、同蛋白質が発現した細胞をT細胞が異物として認識して攻撃する可能性もありましょう。

 

 私は、専門家ではありませんので、同論文の内容を誤って理解しているかもしれません。しかしながら、掲載されている実験結果の写真やグラフは文章の解釈ではありませんので、あらゆる人々の判断材料となるはずです。ワクチン・リスクを’デマ’として切り捨てられない理由は、むしろ’デマ説’の根拠によって示されているように思えるのです。

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