万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

表彰式ユニフォームは失礼では?

2021年07月27日 10時59分47秒 | 国際政治

 開会を前にして発表されたオリンピック表彰式のユニフォームのデザインの評判は、惨憺たるものであったようです。それもそのはず、トップスを見ますと、男女ともくすんだやや濃い目の青色の麻か綿の荒織の生地で仕立てた盾襟の上着を羽織り、ボトムは、男性は同色の緩めのパンツ、女性はやや明るめの青色の長めのスカートというものです。’居酒屋ユニフォーム’なる異名を取るほど、何とも冴えないデザインなのです。

 

 日本国が開催国となったのは今大会が初めてではなく、過去に開催された3度のオリンピックを振り返りますと、表彰式のユニフォームは、日本の伝統衣装である振袖が慣例となっていました。日本国のみならず他の諸国で開催される場合でも、表彰式でアシスタントを務める人々はその国の民族衣装に身を包んでいますので、表彰式とは、開催国のお国柄が現れるオリンピックらしい光景とも言えましょう。この点からしますと、何故、今回の大会に限って着物ではなく全く別のユニフォームを新しくデザインしたのか不思議なのです(過去最大の費用が投じられているならば見事な振袖を準備し、世界に向けて古式ゆかしい洗練された日本の服飾文化の伝統を披露できたはず…)。そして、国民が同デザインに眉をしかめる理由は、幾つかありそうです。

 

 第1に、先述したように、オリンピックにおける表彰式の衣装はその国を代表する民族衣装とされてきましたので、世界に誇ってきた着物という日本の民族衣装が’居酒屋ユニフォーム’に変えられてしまったような残念感があります。テレビや動画を介して表彰式を視た海外の人々は、日本の民族衣装が’居酒屋ユニフォーム’であると思い込むかもしれません。誰が選んだのかは分かりませんが、日本人にとりましては落胆させられる出来事なのです。

 

 第2に、同衣装は、見る人に’サーバント’のイメージを与えてしまう点を挙げることができましょう。’居酒屋ユニフォーム’というネーミングは、まさに同衣装が内包している本質を言い当てています。居酒屋では、全員同じユニフォームを着た店員さん達が、腰を低くしてお客様に尽くしています。このため、表彰式は、表彰台に上った選手たちにメダルを授与するIOCの幹部に開催国日本のアシスタントが付き従っている構図に見えてしまうのです。この光景は、日本人にとりましては、決して心地よいものではありません。つまり、開催国である日本国に対して失礼なのです。

 

 そして、失礼なのは、日本国や日本人に対してのみではありません。第3に、オリンピックに参加するために来日した選手団の人々に対しても失礼なように思えます。何故ならば、’おもてなし’を旨とするならば、諸外国からのお客様に対しては、先ずもって招く側は正装してお迎えするのが礼儀であるからです。もしかしますと、きれいで慎ましやかな着物姿を期待していたのは、諸外国の選手であったかもしれず、’居酒屋ユニフォーム’にはがっかりさせられたかもしれないのです。どこの国かわからないような、奇妙な衣装を着た’サーバント’のようなアシスタントが並んでいるのですから。招かれる側も、招く側が軽装では、軽んじられているように思えてしまうものです。

 

 本大会のテーマは’多様性と調和’なそうですが、表彰式のユニフォームのみならず、エンブレムも青系一色であり、色彩の豊かさに欠けています。そして、それは、多様性をはき違えた末の画一化、すなわち、全てがミックスされてモノトーンとなってしまった近未来を暗示しているのかもしれません。表彰式の’居酒屋ユニフォーム’も日本人の近未来のメタファーであるならば、それは、日本の危機をも示しているように思えるのです。

 

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