万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

エズラ・ヴォーゲル氏の薦めへの疑問

2019-12-12 15:43:00 | 国際政治
 最近、日経ビジネスの電子版において『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の著者として知られるエズラ・ヴォーゲル氏とのインタヴュー記事が掲載されております。かつては世界経済をリードした日本経済に‘ナンバーワン’の栄光ある地位を与えましたが、中国の著しい台頭を前にして、今では、中国を‘ナンバーワン’と認定しているようです。GDPの規模といったデータに基づく客観的な分析からすれば‘ナンバーワン’の地位の交代も当然ではあるのですが、氏の論調で気に掛かるのは、その‘経済観’というよりは‘政治観’並びに‘歴史観’です。

 同インタヴュー記事を一読しますと、ヴォ―ゲル氏の発言は必ずしも筋が通っているとは言えない側面があります。喩えは、西側諸国の民主主義を高く評価する一方で、話題が香港の民主化運動に及びますと、あらゆる改革をトップの即断で実行し得る中国の一党独裁体制の効率性を評価し、口を濁しています。チャイナ・パワーのグローバルな拡大が、他の諸国の民主主義を脅かす危険性に対しては、全く以って警戒感が感じられないのです。言い換えますと、同氏には確固とした民主主義、並びに、普遍的な諸価値への信頼が欠けており、強きに靡く日和見主義的な姿勢が目立つのです。

 同氏の基本的な‘政治観’が日和見主義である点は、経済分野における‘ナンバーワン’のランク付けにも共通しているのですが、その‘歴史観’には、一層首を傾げてしまいます。何故ならば、中国や韓国といった近隣諸国との関係がギクシャクしている点に触れて、「日・中・韓は歴史に向き合え」と訴えているからです(この主張は同記事のタイトルでもある…)。タイトルでは、日本、中国、韓国の三国を並列して並べていますが、内容を読みますと、この薦めは、主として日本国に向けられています。日本国は、‘南京大虐殺’や‘慰安婦問題’に未だに向き合っていないと…。

 明言は避けてはいるものの、ヴォ―ゲル氏は、日本国に対し、第二次世界大戦中において日本軍が行ったと中国や韓国が主張する行為について‘謝罪’も‘賠償’も足りない、と言いたいのでしょう。そして、自らの見解は個人的なものではなく、欧米の知識人とも共有されているとも付け加えています。しかしながら、同氏の薦めに違和感、否、驚きを覚える日本国民も少なくないことでしょう。実際に起きた事実を誠実に追求して行けば、中国や韓国の主張は政治的なプロパガンダ性が強く、偽証、誇張、数字の水増し、フィクション等が入り混じっていることが分かります。特に慰安婦問題については、日本国内で実証主義に基づいた事実解明を進めようとする機運が高まった矢先に、日韓の両政府間で慰安婦合意が成立しています。(もっとも、日韓合意は韓国側が一方的に破棄しましたが…)。‘歴史に向け合え’という意味が歴史の事実を探求せよ、という意味であれば、日本国民の多くもヴォ―ゲル氏の意見に賛同したことでしょう。

 それでは、何故、ヴォ―ゲル氏は、かくも厳しく日本国に対してのみ戦時中の日本国を糾弾しようとしているのでしょうか。その理由は、おそらく、同氏がアシュケナージ系のユダヤ人である点と関係しているのかもしれません。第二次世界大戦期にあって、アシュケナージ系ユダヤ人は、ヒトラーを指導者とするナチス・ドイツから迫害を受けた歴史があります。同氏の立場からすれば、ナチス・ドイツと同盟した日本国は、いわば‘共犯者’であらねばならず、‘南京大虐殺’も‘慰安婦の強制連行’も‘事実’でなければならないのでしょう。欧米の知識人の多くはユダヤ系ですので、如何に日本国政府、並びに、日本国民が事実を直視するように国際社会に訴えても聞く耳を持とうとはしないのです。

 道理に合わない意見に遭遇したとき、先ずは、その主張者の思想的背景を探ることも重要な作業であるのかもしれません。エズラ・ヴォーゲル氏の意見についても、氏の個人的な背景を考慮しつつ、差し引いて考える必要があるように思えます。そして、その‘歴史観’のみならず、独裁を容認してしまう‘政治観’についても、何処かにユダヤ・バイアスがかかっているかもしれないと思うのです。

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