万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

六か国協議再開は中国の仕掛けた“罠”?

2018-04-07 15:52:59 | 国際政治
6カ国協議、慎重に判断=菅官房長官
 中国の北京にて習近平国家主席とのトップ会談を実現した北朝鮮の金正恩委員長は、その場で六か国協議への復帰の意向を示したと報じられております。しかしながら、この六か国協議再開提案、中国が仕掛けた罠なのではないでしょうか。

 日米中ロ韓北の六か国から成る六か国協議とは、1994年の米朝枠組み合意が破綻した後に、北朝鮮の核開発問題を解決するために中国主導で設けられた国際的な枠組です。2003年8月に第一回目の会議が開かれましたが、2007年3月の第6回会議を最後に休会状態となりました。同年4月には、ロケット発射実験を批判した安保理議長声明に反発した北朝鮮が、正式に同会議からの離脱を宣言しています。計6回にわたる交渉の経緯を観察しますと、同問題をめぐる中朝の基本戦略が見えてきます。

 北朝鮮の基本的な方針は、六か国協議に先立つ米中朝三か国による三者協議において既に示されています。同国の解決案とは、4段階からなる「一括妥結方式」であり、最終的な終着点として核放棄を認めつつも、それに至るまでの間に、重油(第一段階)や軽水炉(第4段階)といったエネルギー支援に留まらず、米朝間の不可侵条約締結(第2段階)、並びに、国交正常化(第3段階)を求めています。その後の展開を見ますと、北朝鮮による核放棄の承認は詐術的虚偽でしたので、今では、段階的放棄案とは、核・ミサイル開発完成までの時間稼ぎと見なされています。

 一方、北朝鮮による段階的放棄提案に対して、協議の初期におけるアメリカの基本方針は、“完全、検証可能かつ不可逆的な核廃棄(CVID)”、即ち、リビア方式であったと推測されます(2003年に米リビア合意成立)。しかしながら、2004年6月に開催された第3回協議辺りからトーンダウンし(CVIDという言葉は不使用…)、北朝鮮の核凍結を核放棄への第一段階と位置付け、段階的放棄案に接近します。

 そして、ホスト国である中国が、六か国協議を積極的に自国の戦略とリンケージさせる方針を示したのが、2005年7月に開かれた第四回協議です。同協議で発表された中国提案の共同声明では、1.北朝鮮の核放棄ではなく、朝鮮半島の南北による検証可能な非核化、2.米朝国交正常化、並びに、日朝国交正常化、3.対北エネルギー支援、4.朝鮮半島の恒久的平和体制の構築、5.上記事項の段階的実施、6.第6回六か国協議の開催時期が定められており、明らかに中国ペースに誘導されているのです。これらの合意事項は、まさに、今日の中国の戦略と凡そ一致しており、先日、注目を集めた習主席の朝鮮半島における“新たな安全保障の枠組み”の提案が、二番煎じであったことも分かります。

 以上に述べたように、六か国協議の基本的な流れとは、中国主導による朝鮮半島管理体制の構築であり、恐らく、この時から米朝国交正常化後の米韓同盟の解消をも視野に入れていたことでしょう。アメリカのアジアにおけるプレゼンスを低下させ、北朝鮮問題を中国を中心とした華夷秩序復活へのステップとして利用することこそが、中国の狡猾な戦略と考えられるのです(なお、北朝鮮問題に国際社会の関心が集まっている間、中国は、南シナ海では着々と軍事拠点化を進めている…)。

そして、中国が日本国に割り振った役割とは、日朝国交正常化を口実とした莫大なる対北資金援助の提供国であったと想定されるのです。実際に、上述した第四回六か国協議の共同声明には、「朝鮮民主主義人民共和国及び日本国は、平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置をとることを約束した」とあります。

 中朝両国による六か国協議再開の提案とは、結局は、再度、特に日米の二国が中国の戦略に誘導されることを意味するのではないでしょうか(ロシアは、六か国協議の再開を指示しており、韓国の文政権も親中・親北路線…)。同提案が“罠”である以上、日米ともに、中国が仕掛けた巧妙な罠から逃れ、無法国家が相応の報いを受けるような解決策を以って解決を図るべきではないかと思うのです。

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